原発通信 193号2012/04/17発行
やはり、先のことより、目先のカネ 原発マネーからどう脱却できるのかの道筋をつけないと 先週末から、あわただしいです。大飯原発再稼働問題で大揺れというところに、北朝鮮がロケットだかミサイルだかを打ち上げると。ロケットだろうがミサイルだろうが本(もと)は同じ。そう、原発と同じです。原発も原爆も本は同じですから。ところで、鳴り物入りの「早期警戒システム」だ、迎撃ミサイルだ、打ち落とすだと大騒ぎした割には、「早期」捕捉もできず、とんだ失態です。このことに自民党、政府を追及するといいます。 しかしちょっと待って考えてほしいのです。「早期警戒システム」もPAC 3等々も民主党が政権取ってからわずか1年と半年で整備したものなのでしょうか。いいえ、自民党政権下で「整備」が進められたものです。自分たち(自民党政権)がこさえたものが、実は、うまく働かなかったということなのです。ふつうなら、「しまった!」と思うのでしょうが、そこは、政治の世界。「人のせい」にできるのです。しかも、エラそうに批判だけならまだしも、追及するといいます。これも原発問題と同じです。蛇足ですが、民主党を擁護しているわけではありません。論理がおかしいといっているのです。 そのどさくさに、大飯原発再稼働です。また、浜岡原発が立地する御前崎市では市長選が行われ、御前崎市民1万2,018人は、現職の石原茂雄市長を三度選びました。ほとんどの御前崎市民は「原発はこの町に必要。ないと経済的に大変厳しくなる」(毎日新聞4月16日付)として、石原茂雄を選択したのです。そう、いつ起こるかわからない地震なんていうものを気にするより、まずは生活=お金よということを選択したのです。一概にこれを責めることはできないのですが、でも、福島第一原発の事故後です。御前崎市一行政区だけの問題で済むのであれば、どうぞご勝手にといえるのですが、でも、ことはそれだけですみません。原発マネーからどう脱却できるのかを考えていかないことには、いつまでたっても同じでしょう。本通信最後に大熊町の実情を書いた東京新聞の記事を紹介しておきます。 しかし、日替わり定食じゃありませんが、言っては訂正。「言葉が軽い民主党」とは政権を取ってから枕詞のようにいわれていますが、それを正直と見るか、考えていないとみるか、経験が浅いとみるか…、どうなんでしょうか。 原発再稼働5人組の頭=仙谷は何を勘違いしているのか 「再稼働関係四閣僚会議」にいつも端でにらみを利かせていた仙谷です。この人、思い込みが激しいというか、先の海上保安庁巡視船への中国漁船体当たり事件はじめ、思ったことをすぐに口にするようです。そのへんのおっさんと違うのですから、ちょっと様子見、考えてから(弁護士さんなので考えることは得意と思うのですが)言えばいいものをと思っていたのですが、今回はいけません。下にその記事を貼っておきますが、経済優先、人の命などどうでもいいのです。こういう時に、エリートとして育ってきた「素」が出てくるというのでしょうか。東大閥のなかでしかものが見えなくなっているのでしょう。 「原子力ムラに対する国民の反発が根強くあるが、論理的にはあまり解決のつく話ではない。結局は専門家に任せるしかない」と、どうしてそういうようになるのかまったく分かりませんが、要は、「東大出身者に任せろ」といっているのです。保坂世田谷区長も困惑しているのではないでしょうか。麹町中学校内申書裁判で世話になっていることもありますから。保坂さんも「原発の専門家」ではありませんから、余計なこと言うなということでしょう。 原発マフィアのエージェントになりさがった仙谷 ▶仙谷政調会長代行:原発停止で「日本は集団自殺」と発言 毎日新聞 2012年04月16日 20時16分(最終更新 04月16日 20時24分) 【「(すべての原発を)直ちに止めた場合に日本の経済と生活がどうなるのかを考えておかなければ、日本がある意味では集団自殺するようなものになってしまうのではないか」「原子力ムラに対する国民の反発が根強くあるが、論理的にはあまり解決のつく話ではない。結局は専門家に任せるしかない」と指摘。脱原発路線にも「20年か30年の中で原発をクリーンエネルギーに置き換えるのはできない話ではないと思うが、国民が必死に(新技術開発への税金投入などの)リスクを取らなければ容易でない」と疑念】 説明は不要でしょう。もう、原発マフィアのエージェントです。しかし、言うに事欠いて「集団自殺するようなもの」とは。 ▶民主党:原発再稼働 推進「5人組」と慎重派との亀裂拡大 毎日新聞 2012年04月16日 21時24分(最終更新 04月16日 21時51分) 「5人組」に対する慎重派の反発が強まり、輿石東幹事長が沈静化に躍起になっているとのこと。その輿石にしたって、もうお年なのだからと思うのですが、権力を握ったら、よほどいいものなのでしょう。橋下とは構えると、元気です(下記に記事)。しかし、この記事では、どう亀裂なのかはっきりしません。党内にあるということだけですから(そりゃあるでしょうと。いや、ないと困りますが)。 検証開始はいいのですが、この人たち「専門家」? ▶再稼働「基準以上の対策必要」 福井、県原子力専門委で検証開始 【中川英之委員長(福井大名誉教授)は「どんなことが起こっても燃料を冷やし続けられる担保が必要」とし、場合によっては新基準に含まれていない対策も必要との認識を示した】 【委員は「四つのSGが全て壊れても冷やせるのか」と質問。保安院は、基準地震動(想定した最大の揺れの強さ)の1・8倍までは耐震性を保つことができ、一つでも損傷せず残れば冷却の継続は可能と答えた。】 ということですが、私、わからなくなってしまいました。この委員たちは「専門家」ではなかったのではないでしょうか。「わからないし、知らない」と告白し、すべては安全・保安院頼みなら、そもそもこの委員会そのものが不要と思うのですが。 中川委員長ですが、新たな安全基準案の骨子について、「私自身はこれで十分だと思う」と毎日新聞のインタビューに答えた(本通信186号既報)のですが、それとの整合性は? それこそ、「論理的に解決のつく話」とは思えないのですが…。 ▶「現段階での再稼働は問題」福井県安全委員会、厳しい意見続出 【委員からは「(福島原発事故で効力を発揮した)免震事務棟の完成までに地震や津波があった場合についてはどういう検討をしているのか」との質問や、「今後の過酷事故の対策が残っている段階で、電力不足を理由に見切り発車で再稼働するのは問題がある」との指摘も上がった】といいますが、こんな質問なら、なにも「原子力安全専門委員会」などと名乗らなくてもよさそうなものです。 問題は「原子力行政の信頼回復」ではない 「毎日新聞は再稼働を否定するものではありません」―倉重篤郎論説委員長 ▶「論説室から」 やはり「新しい革袋」 毎日新聞4月15日付「論説室から」の『やはり「新しい革袋」』をと題した倉重論説委員長の記事です(なぜか、WEB版にありません)。 再稼働をめぐる動きのなかで、新聞各紙の社説をひいています。賛成派の読売は「丁寧な説明で早期に再稼働を」(5日付)、産経新聞は「迷走を反省し再稼働急げ」(7日付)だそうです。産経新聞、原発という問題ではなく、民主党政権が迷走しているからだと。 次に自分のところです。「毎日新聞は再稼働を否定するものではない」と、この記事の執筆者、論説委員長の倉重篤郎は書くのです。そして「要は原子力行政への信頼回復だ」というのですが、「原子力行政への信頼回復」という問題ではないということがわかっていないようです。人々は、原子力の「平和利用」というそのものに危なさ・胡散臭さ・インチキさをはっきり見てとり始めているということが理解できていないようです。 枝野さん、あなたの発言、国語の読解問題に出したら、答、みんなペケです。 ▶枝野経産相:「原発一瞬ゼロに」大飯再稼働間に合わず 毎日新聞 2012年04月15日 19時04分(最終更新 04月15日 21時46分) 「脱原発依存」のための再稼働との考えを強調とか。この人も弁護士出身ですので、あれやこれやいろいろと回りくどく言うのが習い性になっているのでしょうか。煙に巻くために。いろいろと言ってくれる人です。国語の問題に出たら、間違いなくバッテンをつけられてしまうものばかりですが…。 ▶官房長官:「一瞬」ゼロは不適切 経産相の原発発言で 毎日新聞 2012年04月16日 13時41分(最終更新 04月16日 13時51分) 「一瞬とはあまり適切な言葉ではない。その日にまた次が稼働すると受け止められかねないが、そういうことではない」と、藤村官房長官。いろいろ解釈してくれるものです。これらを国語の読解問題に出されたら、どれが回答になるのでしょうか。 ▶<枝野経産相>「一瞬ゼロ」発言を陳謝 【国内の原発稼働が「5月6日から一瞬ゼロになる」と発言したことについて、「『少なくともいったんはゼロになる』と言うべきだった」と陳謝】と。なんとでも言え!といいたくなります。 ▶大飯再稼働:河村市長が批判 政府に「ハザードマップを」 毎日新聞 2012年04月16日 14時21分(最終更新 04月16日 14時59分 名古屋の怪しげな男、久々の登場です。 【大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働要請について、名古屋市の河村たかし市長は16日の記者会見で「信じられんというか、相当常識からかけ離れていると思う」と批判】したといいますが、この人の本心はどこに…。 大飯原発:再稼働へ経産相来訪 家族単位で抗議の声も/福井 【会談が行われた県庁前では、市民グループ約300人が「枝野は帰れ」「再稼働反対」などと声を張り上げ、大飯原発3、4号機の再稼働を「妥当」と認めた政府判断を批判した。幼い子どもを連れて家族単位で参加する人も目立った】とのことです。 関西電力:夏の需給試算 揚水発電、猛暑なら減 主力の火力に上積みなし だいたい、こんな試算、信用できるかどうかです。 河野太郎さん、「手順の問題」ですか。 ▶大飯原発:再稼働問題 「手順踏んで動かすべき」 自民党・河野さん講演/福井 大飯原発3、4号機(おおい町)の再稼働問題について「民主党のやり方はめちゃくちゃ。脱原発のスケジュールを決めて、手順を踏んで最低限必要な原発を動かすべきだ」と批判した。 ▼橋下大阪市長発言集 ▶福井・大飯原発:再稼働問題 政府「妥当」(その1) 見切り発車に不安 橋下・大阪市長「バカにしてる」 「政治家が安全なんて確認できるわけがない。こんな再稼働を絶対許しちゃいけない。原子力安全委員会になんでコメントを出させないのか。国民をバカにしている」と激怒したそうですが、「原子力安全委員会にコメントを出させろ」? あんなインチキ集団に? こういう論法が橋下の危ない・注意すべきところなのです。 ▶橋下市長:「民主と連携しない」 大飯再稼働で批判 【関西電力大飯原発の再稼働を妥当と判断した民主党政権を「統治のあり方として最悪」と批判。「貯蔵施設を受け入れるか、それとも負担を回避するために新しい電力供給体制を目指していくのか。場合によっては住民投票が非常に大きな意味を持ち、必要になってくる」】 ▶橋下市長「電力消費地は配慮しないといけない」 【西川一誠知事の提案に触れ、「原子力が必要なら、(使用済み核燃料の保管という)負担もしっかり示さないといけない」と述べた。「大変有意義。電力消費地は今まで(原発立地自治体に)お世話になったことを認識し、配慮しないといけない」と評価】 関電、筆頭株主の言うことなど聞けないと「説教」 ▶橋下氏「計画停電」発言に財界「軽々に言うな」 橋下市長の【計画停電は避けられるとの見通しを示す一方で、「計画停電もあり得ると腹を決めれば、電力供給体制を変えられる」】との考えに、【松下正幸副会長(パナソニック副会長)が「昨年並みの節電でも困ると言っているのに、計画停電なんてとんでもない。軽々に計画停電と言うべきではない」と強く批判】ですって。 「株主資本主義」と近年言われていますが、関電、自社の筆頭株主のいうこと、聞けませんだと。それどころかいい加減なこと言うなとお説教です。見下されたものです。というより、所詮、こんなものご都合主義ということです。 輿石サン、何をいきり立っているのでしょう。ベクトルが違うようです。 ▶輿石幹事長:「受けて立つ」橋下市長との対決姿勢鮮明に 民主党の輿石東幹事長、橋下徹大阪市長について「(橋下氏率いる)大阪維新の会は、民主党政権では日本がダメになる、打倒すると明言した。きちっと受けて立つ」と述べ、対決姿勢を鮮明にしたとのことですが、「きちっと受けて立つ」ものが違うのではと思うのですが。 ああ、1日もしないうちに「前言撤回」ですか ▶橋下市長と「対決ではない」党内の不満に輿石氏 【輿石氏は16日の記者会見で「対決ではない。そんな発言をした覚えはない」と釈明に追われた。】 ▶「脱原発依存」へ共同提言=政府に要望―京都、滋賀知事 京都府の山田啓二知事と滋賀県の嘉田由紀子知事、【老朽化した原発の廃炉計画など「脱原発依存」へ向けた工程表の提示や、今夏の電力需給を検証するための第三者委員会の設置など7項目を求めた】といいます。 ▶京都・滋賀知事、共同提言へ 政府の原発政策で 上記と同じ会見の記事ですが、地元京都新聞の記事には、【「脱原発依存」へ向けた】などと言う文言はありません。 ▶浜岡原発:「停止中は安全」中電が津波影響評価を提出 毎日新聞 2012年04月16日 21時32分(最終更新 04月17日 02時02分) 【最短で6日後に燃料が露出する可能性があるとした。被災後に迅速な復旧作業ができるのか問われそうだ】 同じものの記事でも、印象がだいぶ違います。 「6日後に燃料が露出する可能性」:毎日新聞 「6日間あれば十分に安全を確保できる」:原子力安全・保安院 「最短でも約6日(5号機 原子炉の場合)の時間があることを確認」:中電プレスリリース ▶社説:浜岡原発 思い切って廃炉の決断を 【地震や津波の推計に応じたハード面の対策をいくら積み重ねても、安心を得ることがむずかしい。それが浜岡原発の実情ではないか。そうした立地の特殊性を考えると、思い切って浜岡原発の廃炉を決めた方がいい。今後は、出口戦略を練ることが得策ではないか。】 そのとおりです。 福島第一1~4号機、電気事業法では廃止、原子炉等規制法ではまだ「生きている」 だから、大熊町、東電から金取りなさいと総務省が指南 ▶大熊町、15億円超課税 事故後も原発マネー頼み 【福島県大熊町が本年度、原発に対し十五億円を超す固定資産税を課すことが分かった。1~4号機は電気事業法に基づいて廃止されることになり、事実上、原発の価値はゼロ。それでも事故対応のため追加された高額の設備が固定資産となり、課税総額は事故前を上回る見込みだ。町の財政は、今も原発マネー頼みとなっている】と。 【電気をつくれない原発の価値はないと算定していた。通常なら、この時点で、固定資産税はかからないはず。ところが、総務省は電気事業法の「廃止」とは別に、課税判断のもとになる原子炉等規制法上の廃止計画が東電から出ていないことなどを理由に「事業継続中」と判断。事故後の状態をもとに初めて課税する本年度も、東電に「資産」として申告するように求め、1~4号機の価値を評価することにした。】 つまり、電気事業法では「廃止」だけれど、原子炉等規制法からみれば、廃止計画が東電から出ていないので“生きている”。だから、課税できる。大熊町「救済措置」です。 | ||