原発通信 195号2012/04/19発行
法的にはね、とっくにオシャカになったものを追認しただけ。だから…危機煽り報道の典型です! ▶福島第一原発1~4号機、19日付で廃止に 「電気事業法に基づき、19日付で法的に廃止される」――現実にはオシャカです。 「国内に54基ある原発は20日午前0時をもって50基に減少する」――当たり前です。 次です、ひどい言い方は。 「発電能力は事故前に比べて約16%減少する」――「減少する」? もう1年以上も「減少しています」。しかも、今現在、電気はついています。「事故前」と比較して何の意味があるかです。さも、減少して大変になったかのようにいう言い方が要注意です。 TBSでは、 「東電は1号機から4号機を廃止することでおよそ281万キロワットの発電能力を失いますが」と、さも20日からその分がなくなるかのような言い方ですが、もうとっくにないです。日テレもTBSも危機煽り報道の典型です。 “欲望”で暴走する自分の頭を“制御”するのが先でしょう。 ▶<大飯原発>福井県安全委員長「制御を確認」 福井県原子力安全専門委員会委員長の中川英之・福井大名誉教授、「深刻な事故が起こった場合、制御できることを、全体として確認できた」と自身の見解を披露したとのことです。「非常用発電装置やタービン動補助給水ポンプが正常に稼働し、会議室が指揮所としての機能を発揮することなどを確認できた」と。「委員会が求めてきた安全性をほぼ満たしている」とした。「海水ポンプを使った冷却のルートは確立されている」と。 何が出ても、この人の役目は、「確認された」「確立されている」「これで十分」ということです。ちなみに、「中川英之福井大名誉教授」で検索すると、中川の迷発言集と、関電の答えなどがヒットします。あきれる内容ですが。このような人物が国立大学の名誉教授とは恐れ入りました。 ▶大飯原発の安全性に一定評価 福井県原子力専門委が視察 「深刻な事故が起こった場合でも安全側に制御できると確認できた」と言ったそうです。しっかり覚えておきましょう。 「想定を超える災害に対応できていない」と国会事故調委員長 ▶<大飯原発>再稼働判断基準、委員長が否定的 国会事故調 国会事故調査委員会の黒川清委員長(元日本学術会議会長)、政府の判断基準について、【「暫定的な原因究明に基づいている。必要な対策が先送りされ、想定を超える災害に対応できていないことも明らか。住民の健康を守れるのか」と再稼働に否定的な考えを示した】 会長人事も「暫定」、何でも「暫定」です。 ▶<東電会長>苦肉の暫定人事 経営者の拒否相次ぎ…下河辺氏 「民間の大物企業経営者に相次いで就任を断られたためだ」そうです。本当に、人には汗をかけだの、努力だのと説教するくせに、自分は安全なところで吠えるだけ。 この人、「民主党内で東電改革をリードする仙谷由人政調会長代行や枝野幸男経済産業相とも考え方が近い」そうです。今は誰がなっても、原発再稼働へまっしぐらです。 それでも8割はもらえる。依願退職者は例年の3倍 ▶年金削減で組合と合意へ=人員、給与カット維持で―東電 賠償金捻出のため現役社員の年金を削減するについて、組合と合意する見通しとか。「現役社員の年金の利回りを現在の2%から1.5%に引き下げたうえ、終身年金を3割削減する方針を発表。グループで7400人のリストラや、一般社員の年収2割削減も提示」。「しかし、原発事故の処理や賠償で労働環境が悪化する中、東電の昨年度の依願退職者は例年ヘの3倍超の約460人に増加」と。 沈みゆく船からわれ先ということですか。それでも、終身年金今の「7割もらえる」とみるか、年収も今の「8割も出る」かと見るかです。 学生さんも「原子力離れ」 ▶原子力専攻入学者16%減 共同通信の調べによると、東京大(東大は入学者数を回答しなかったため合格者数を集計対象に)など7大学の合計で昨年より16%減少、最大71%減った大学もあったといいます。文部科学省は「将来性が不安視されているのではないか」と。 福井工業大は昨年の34人から10人へ71%減、福井大は42人から25人と40%減。 「大阪大や近畿大などにも「環境・エネルギー工学専攻」などの名称で原子力関連学科や専攻があるが、文科省によると同様の傾向と」 しかし、姑息な名称ですね、「環境」と付ければいいという根性が。 福島県庁にSPEEDIのデータは届いていた! ▶メルトダウンの恐怖の中、後回しになった住民避難 「『(放射性物質は)出て、すーっと消えた』という想定」 「事故も数時間で収束することになっていましたから。雨が降ることも想定していません」「つまり地面に落ちない、沈着しないことになっていた」 「自然災害との複合災害として起きるとは考えていなかったのです」 「『言われてみれば、その通りでした』としか言いようがない」 ――SPEEDIのデータは他のルートでファクス以外では国から来なかったのですか、と問うと、 「原子力安全技術センター(注:SPEEDIを維持管理している組織)が気を利かせて、災害対策本部原子力班にメールで送ってきてくれていました」 要は、データはそれなりに来ていたが、水素爆発で、メルトダウンしたら大変だとそればかりに気をとられ、見ていなかったという話なのです。 やはり、4号機です。ボロボロの建屋にかろうじて支えられている冷却プール ▶福島第一原発4号機・使用済み核燃料プールの危機的状況を米上院議員が指摘、「国際的支援を仰げ」と駐米大使に書簡を送付 【ワイデン議員が特に問題視しているのが、1300体を上回る使用済み核燃料が存在する4号機の核燃料プール。ホームページで同議員は、再び大きな地震が起きた場合に重大事態になる可能性があるとしている】。 【同原発の危機的状況を回避するために日本が国際的な支援を要請すべきだとする書簡を藤崎一郎・駐米大使に送付したことを】明らかにしました。 ▶福島第1原発は非常に危険 米議員が燃料棒について警鐘 ウォールストリートジャーナル日本版2012年 4月 19日 (木) 2012年 4月 18日 11:25 JST 韓国の原発、また事故隠し。どこも同じです。 毎日新聞4月17日付夕刊。共同電として、韓国南西部の霊光原発2号機で、3月28日に政府の点検チームが、外部電源が失われた際、原子炉を冷却する水冷式ディーゼル発電機2台のうち1台が冷却水の圧力が低すぎると警報が出て、停止し6時間使えない状況だったとのこと。これを隠ぺいしていたといいます。韓国紙・ハンギョレ新聞(電子版)などが15日に伝えたということです。これは、2月に起きた古里原発1号機が全電源喪失事故が起きたことで、他の原発の点検中に起きた。 吉武輝子さん亡くなる 「戦争への道を許さない女たちの連絡会」世話人、福島第一原発事故後は、「脱原発をめざす女たちの会」を立ち上げた吉武輝子さんが17日、肺炎で死去されたとのこと。80歳でした。ご冥福をお祈りいたします。 社民党の阿部とも子さんらが「原発ゼロの会」を3月27日に発足。 阿部とも子さんの「ともことかえる通信43号」が先日、送られてきました。それによると、発起人メンバーは民主(近藤昭一)、自民(河野太郎)、公明(加藤修一)、みんなの党(山内康一)、阿部さんの5人とのことです。 「目下の政策は3つ、①全原発の廃炉――原発依存ゼロ、②核燃料サイクル事業からの撤退――再処理ゼロ、③再生可能エネルギーの大胆な促進、加えて、事故の検証、安全の新基準や規制大成のないままなし崩し的になされる原発再稼働には、異論を出していきたい。とりわけ原発に依存せざるをえなかった立地自治体への今後の支援策も提案したいと考えている」とのことです。 この通信に中沢新一さんとの対談が掲載されていました。後半の中身をちょっと。 阿部さん:再生可能エネルギーに急に変えるのは問題。これまでの原発推進体制への批判のみに執着する人もいます。 中沢さん:日本の運動の閉鎖性がよくあらわれている。原因は、戦後の左翼勢力がつくってきたやり方やイデオロギーにある。この国をつくってきたのはお百姓さんや漁師さんたち。それを無視して上から左翼思想を植え付けようとしても何も変わらない。イデオロギーを超えた結びつきを大切にした運動が求められている。 阿部さん:3.11の追悼供養でお経を唱えている一方、若い人たちが太鼓をたたいたり、歌ったりして、ちょっとちぐはぐ。脱原発デモは浮いている? 中沢さん:浮いています。若者にはエネルギーや表現手段はあるが、周りを巻き込むほどの度量はない。年寄りは、怒りたいけどしがらみがあってうまく外に言葉を発することができない。僕はこの両者をつなげたい。そのためにはインターネットの活用。「グリーンシール」構想=脱原発・反TPPの政策に賛同する候補者に捕獲問わずお墨付きを与える=がある。 と、まあ、こんな中身です。 そこで阿部さん、「再生可能エネルギーに急に変えるのは問題」ということで、河野太郎の「手順を踏んで最低限必要な原発を動かすべきだ」(本通信193号)とシンクロするんですね。「全原発の廃炉――原発依存ゼロ」になるまで、何事も起こらないということを「信仰」できればですが。 第11回 ドイツから脱原発情報 1. ドイツでの反原発運動のきっかけになったのは、チェルノブイリ事故です。その時、フランスは、ドイツでの動きを「何をそんなにヒステリーになっているのか」と冷ややかに見守っていたそうです。そんな話を友人から聞きます。今年の冬、寒波のためにフランスはドイツから電力を調達してもらうことになりましたが、それは原発ではなく再生可能な代替エネルギーからのものです。この話をしてくれたのは、ソーラ・システムで世界の先端を行く会社に勤めている知人です。 2012年4月6日、午後、フランスのノルマンディーにあるPenly原子炉2号が火を吹き、夕方には2,300Lの放射能汚染された水が冷却システムから外部に流れ出る事故が起こりました。原子炉の4つある冷却ポンプのうちの1つから沸騰した油が流れ出し、それが火災の原因になったといわれています。電力会社EDFは、「流れ出た水は貯水池に集められ、原子炉は自動的に停止した。冷却システムに問題はなく、誰も怪我をしていなく、外部自然界への影響はない」と発表しています。しかし、グリンピースは、主要な部分である冷却循環システムに傷が入るということは、そもそも重要な事故であると、電力会社の「突発的な予期しなかった事故」扱いを批判しています。 原子力安全監視局ASNも、EDFの何気ない対応を批判し、実際には消火中に一人が怪我をし、木曜日の夕方にはパリに危機管理スタッフが召集されたと伝えています。 フランスの大統領選挙が迫ってきています。サルコジには、脱原発はテーマになりません。フランスの電力エネルギーには原発が必要と言う立場に変わりありません。58基の原発で75%のエネルギーをまかなっているのがフランスです。それに対して社会主義者の対立候補(Hollande)は、選挙に勝った暁には、まずエルザスのFessenheimにある最も古い原子炉を廃炉にし、エネルギーの原発依存率を2025年までに、現在の75%から50%まで減らしていくことを公約しています。(FR紙2012年4月 7-9日付より) そう考えるとドイツは、特別ということになりますが、その背景を少し自分なりに探ってみたいと思いま す。 2. フクシマ原発事故から1年後の2-3月には、ドイツのマスコミで特集が組まれていました。その全部をフォローすることはできませんが、ドイツがどういう基調でこの1年を捉えているのかというのに興味を持っていました。一つ言えることは、日本では何も変わっていないと言うことです。安全性もまだ保障されていません。被害者への援助と補償は具体的に何も聞かれません。東電・御用学者は生き残りに必死で嘘の上塗り。そのために情報の偽造と管理。政府は如何に反対派の追撃をかわし原発問題を元の鞘に収めるのかに裏で取り引き。こういうところが伝わってきて、そのうちに怒りで爆発しそうになってしまいます。日本で脱原発に取り組んでおられる皆さんの忍耐と苦労がほんとによくわかります。 それに対して、なぜ、ドイツ人は「ヒステリー」なほど、口うるさいのか。70年代に取り組まれたフランクフルト空港拡張反対運動は、記憶に残っていると思います。まわりの木々を伐採して、都会のオアシスであった自然が破壊されていきます。同時にそれは、騒音による生活破壊を意味していました。飛行機の窓から着陸直前にフランクフルト周辺の広大な林野と公園を眺めると、空港敷地はコンクリートの塊になっています。この空港反対闘争は三里塚農民から学んだと言います。闘争は今も続けられています。夜間着陸(使用)禁止の一審判決が、つい先日おりました。空港の夜間使用反対者は、月曜デモを組織して、毎週、笛を吹き鳴らし、旗を振り、シュプレヒコールをあげ、空港内をデモしていました。そのぶん、私もチェック・インに遅れましたが。 それに続いてチェルノブイリ事故が起き、それによってエネルギー問題がテーマになってきたように思われます。時を同じくして、酸性雨による自然破壊がヨーロッパ全体で問題になってきました。話は横道にそれますが、大学の入学試験では、これについて小論文を書かせられたものです。政治レベルだけではなく、教育、社会のいたるところで議論されてきました。その結集軸になったのが80年の「緑の党」結成だと言えるでしょう。 エネルギーに関しては、ドイツの冬は長く寒いために暖房費に多額のコストがかかります。そして、車と並んでCO2排出の原因にもなります。マキ、石炭から転換して暖房はガス使用に移っていきますが、石油と共に輸入に頼るしかありません。しかし世界の状況は、産油国の政治不安定の中にあります。それに加えて地下資源埋蔵量の限界も議論されます。 例えばカタールの例ですが、こんな話を聞きました。公式発表としては、これから先150年は大丈夫といわれる反面、アメリカ・CIAの秘密資料では、30-50年が限度ではないかとも見積もられ、正確なことはわかりません。ここが産油国の石油価格をめぐるキャスティング・ボードになっているように思われます。これが最もよくあらわれたのは、70年代80年代の二度にわたるエネルギー・石油危機ではなかったでしょうか。 カタールに滞在していた時、日射時間が長く、風が強いので、そこでたまたま会ったドイツの経済関係の女性秘書に、「ソーラと風力電気を作れば理想的ではないか」と話しかけたら、「素人が何をほざいているのか」と言わんばかりに呆れた顔をされたことがあります。90年代の半ばのことです。今ではしかし、積極的な技術・資本援助が進んでいると言われます。 90年代の新自由主義の台頭とともに、食糧・生活資材に関しては、最早コントロールが効かない大量生産と消費の時代を迎え、人体とともに生活環境に有 害をもたらしてきました。例えばアレルギーなどの症状が、顕著に認められるようになってきました。発ガン率もその一つではないかと私は考えています。 日増しに人間と自然の循環機能が断ち切られ、押しつぶされ、破壊されてきているのがわかります。それに応じて、精神状態も不安定になってきます。犯罪の多様化も認められます。社会は分断されて人間が孤立させられてきたように思われてなりません。 大企業―多国籍資本が人間の自然環境と資源を根こそぎ掘り返した結果が、 フクシマの原発事故と考えて間違いはないように思うのですが。 以上、私が考える簡単な描写ですが、テーマは出揃っています。自然保護、 生活(生命)の保障、エネルギー、健康管理、食生活というようなところでしょう。 では、どういう解決のあり方が可能か。ここでドイツ的なものが見られるように思われます。(つづく) | ||