原発通信 198号2012/04/24発行
原発・停電恫喝と生活習慣病 2010年の夏並みの猛暑だと電力不足をきたすと「停電恫喝」がまたぞろ。というより何かにつけ「足らない、足らなくなる」と言うのが電力会社。 一方、3.11以降、各家庭でこれまでの生活を見直そうという流れができ、「節電」が国民運動になりました。いかにこれまで、無節操にエネルギーを使っていたかと認識し、無駄をなくそうという流れができつつあります。もっとも、家庭で消費される電力というのは多くなく、ほとんどが業務用=産業消費ですが、エネルギーは無限ではない。限りがあるのだということを認識したことはいいことだと思います。 企業とて同様です。原発で儲けてきた東芝、日立でさえ、原発事故が起きたらLEDだ、節電、省エネだと新製品を市場に投入するようになります。 ところが、電力会社の論法は、健康診断で生活習慣病と指摘されたのに「何が生活習慣病だ、構うものか」といって生活習慣を改めない人と、発想が似ていなくもありません。エネルギー浪費を見直す流れができているし、努力もされているにもかかわらず、自分たち(電力会社と原子力マフィア)に都合のいいデータを持ち出し、根拠なく自信たっぷりに「電力が足らない」という。まさに「東大話法規則5──どんなにいい加減でつじつまの合わないことでも自信満々で話す」の典型です。 エネルギーは有限だということに目覚めたわれわれが、その気づきを今後の生活にどう生かし、続けていくことができるのかが問われています。脱原発への道筋をどうつくっていくかを考えることのほうが、賢いことなのです。その道しかないのです。 いい加減な数字だと認識すべきです。節電効果を無視する関電 ▶「夏の電力不足」各社報告 「丼勘定」専門家が批判 東電は、原発が稼働しなくても4・5%の余剰を想定。 中部電力も5・2%の余剰電力があるとした。 「委員からは、過去に電力使用のピークが各社で同じように続くことがほとんどないことから「丼勘定の議論はやめるべきだ」と、批判する意見が出た」とのこと。 【「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也氏は、「節電の手段は数多くあるのに政府も関電も検討していない」と批判。 関電の報告に対し、他社からの電力融通や夜間の電力を活用した揚水発電などの見込みが少ないと指摘し、すべて活用すれば原発なしでも夏の電力を賄えると主張した。他委員も「東京電力などに比べ省エネ効果が少ないのはなぜか」と、関電の報告を疑問視】 反論や飯田さんの意見を掲載しない読売新聞 ▶今夏の電力、関電など3社不足…東電は余裕あり 原発の再稼働はなく、2010年並みの猛暑を前提とした場合、「昨夏、電力使用制限令が発動された東京電力管内は比較的、余裕がある見込み」といいます。一方で「関西電力を筆頭に九州、北海道の3電力管内で供給不足の恐れがある」といっていますが、読売新聞は反論する委員や飯田さんの意見掲載していません。 やればできるということ ▶電力不足懸念で生産量維持の動き 4月23日 6時56分 NHKTV2012年(平成24年)4月24日[火曜日] こういうのを「企業努力」というのです。やればできるのです。企業の間では工場に自家発電機を設置するなどして生産量を維持しようという動き。武田薬品工業、住友電気工業、大和ハウス工業など。 ▶ロイター企業調査:原発停止、事業に不利でも安全確認優先が大勢 【大飯原子力発電所の再稼働が問題となる中、コスト上昇につながるとはいえ、原発の早期再稼働よりも安全を重視する企業の姿勢が明らかとなった】といいます。 再稼働は安全確認の上で実施すべきであり、早期再稼働にはこだわらないとしている企業が72%、再稼働は必要ないとの回答も12%にのぼった。 浜岡原発がなくとも余裕、他社に回す分まである ▶中部電力:今夏の供給予備率8.1% 中部電力、【平年並みの暑さの場合、供給力を2775万キロワット(火力の緊急時対応10万キロワットを除く)と見込む一方、需要は最大となる3日間の平均で2567万キロワットとなり、供給余力を示す予備率は8.1%と、通常の安定供給の目安の8%程度を確保】 「遮蔽板の設置を」という指摘を無視していた責任は重大 ▶福島第1原発:井戸で地下水くみ上げ 汚染水低減へ 毎日新聞 2012年04月23日 20時53分(最終更新 04月23日 21時18分) 事故後、小出さんが盛んに指摘していたことです。地下水の流入を止めなければ汚染され地下水が海に流出することになると。事故から1年以上たっているのです。時間はあったにもかかわらず、対策を取らなかった東電の責任は大きいです。「ごく微量の放射性物質トリチウムが検出」といっていますが、トリチウムだけとは考えられません。まして「微量」などとは。 【福島第1原発の建屋の地下に地下水が流れ込んで放射性物質による汚染水が増えるのを防ぐため、14本の井戸を掘って地下水をくみ上げ、直接海に流す方針を決めた。最大で1日当たり約400立方メートルとみられる地下水の流入を半分程度に減らせるという】。 【試験的に掘った井戸3本のうちの1本の地下水では、ごく微量の放射性物質トリチウムが検出されたため、経済産業省は「海に流す前に地元自治体や漁協に理解を得たい」としている】。 かろうじて事故を回避した炉です。プールに置いておくのも危ないから再稼働だと ▶東海第二原発 燃料装填し発電方針 村長は反発 東日本大震災の津波で、【電源や冷却用の海水ポンプを失いそうになったが、かさ上げした防潮壁のおかげでかろうじて事故を回避。冷温停止後、昨年六月に核燃料を取り出し】たのにもかかわらずです。信じられません。「原電は六月に原子炉(圧力容器)に核燃料を装填(そうてん)し、発電まで実施する方針」だと。もう信じられません。ある職員が「プールに置いておくのは必ずしも安全ではない」と説明したという言うことですが、どこに置いても危ないのです。 どんな数字が出ようと、「耐震性には余裕があり、テスト結果に影響はない」そうです ▶<4原子力施設>「想定超す揺れ」活断層連動で再計算 北海道電力泊原発(北海道)、日本原子力発電敦賀原発(福井県)、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)、中国電力島根原発(島根県の4原子力施設、想定する最大の揺れ(基準地震動)が従来値を超えることが分かったとのこと。 しかし、どんな数字が出ようと「耐震性には余裕があり、テスト結果に影響はない」です。と言っているうちに福島第一の事故が起きたのです。 ▶4原発 想定最大揺れ見直しへ NHKは、「揺れが引き上げられた場合、ストレステストの結果などに影響が出る可能性も」と。 敦賀原発、廃炉か ▶敦賀原発、建屋近くの断層活動か 2万~3万年前、保安院が調査 ある研究者が、敦賀原発(福井県)の原子炉建屋そばにある断層が2万~3万年前以降に動いた可能性があると指摘しています。「この断層が浦底断層とともに動く危険性が確認されれば、敦賀原発は廃炉になる可能性が高くなりそうだ」とのこと。経済産業省原子力安全・保安院が24日に現地調査するそうです。 橋下、この限りでは正しいです。かたや政府、「当面はないだろう」症候群? ▶<橋下市長>官房長官と会談 大飯原発8提案の検討申し入れ 橋下、大飯原発の再稼働について「政治家が安全宣言をしたのは絶対におかしい。国民は納得していない。(原発)事故が起きていない平時の再稼働手続きを、事故後もそのまま進めるのはおかしい」と政権の対応を批判。 それに対して藤村官房長官、「(8提案は)将来的には考えるべきことだ」としながらも「(大飯原発では)手続きを進めている」と述べ、【再稼働の手続きは見直さない考えを示した】そうです。 ▶橋下市長「国民はだまされるな」…大飯安全宣言 【橋下氏は終了後、報道陣に、「政権は安全と言うが、科学者は言っていない」「政権の安全宣言に国民はだまされるな」と、政府の対応をやり玉にあげた】。 いくら同県人だからと田原総一郎を呼ぶようなセンスはいかがなものでしょう ▶「嘉田政治塾」の講義に206人参加 嘉田滋賀県知事が塾長を務める「未来政治塾」が22日に開講したそうです。なんでも15~73歳までの206人が受講したとのことです。しかし、その講師に田原総一郎というのですから、何を考えているのでしょう。しかもこの時期に。田原総一郎、「原発ゴロ」ですよ。本通信でも何回か取り上げています(38、128、142、151号参照)。 ▼下記は2006年2月の福井新聞に掲載された“よいしょ広告”。 「未来政治塾」だそうですが、この原発ゴロの田原、「未来のエネルギーを創る『もんじゅ』」と謳いあげています。 「結局、市民は命より金を選択した」 ▶この国と原発:第5部 立ちすくむ自治体/1 机上の計画、避難「不可能」 前号の<原発30キロ圏>「避難対策めど」ゼロ 21道府県調査の続きの記事です。 東海原発周辺では、「県内にあるバスを総動員しても1回に24万人しか搬送できない。一斉に106万人を避難させることは不可能」と橋本県知事。泊原発では、村がハザードマップは目安にすぎない、マップに実効性がないことを認めたといいます。 ▶この国と原発:第5部 立ちすくむ自治体/2 再稼働否定し大敗 「正直な話、手応えはすごく良かった」と水野氏、しかし結果はダブルスコアで現職の石原氏。水野氏の選対幹部は声を落とし、「結局、市民は命より金を選択したということでしょ」と。 日本の原子力防災は「お飾り」。全員避難が保証できなければ廃炉と ▶この国と原発:第5部 立ちすくむ自治体 松野元・元原子力発電技術機構緊急時対策技術開発室長の話 「日本の原子炉立地審査指針の安全評価は、格納容器が壊れないことが前提」「原子力防災は『飾り』のような存在」「本来はチェルノブイリ事故後に根本から見直すべきだった。面倒なことを嫌った政府の怠慢」と。機能しなかったというSPEEDIにしても「ERSSには全交流電源喪失から炉心溶融に至る過酷事故などを想定したデータがいくつも内蔵されている。にもかかわらず活用できなかったのは、関係者に心構えがなかったから」と。そして、米ニューヨーク州のショーラム原発を例に、「日本でも住民の全員避難が保証できない原発は、遠慮なく廃炉にすべきだ。原子力と付き合うには本来、そのくらいの覚悟が必要だろう」といいます。 枝野、「私はロベスピエールになりたくないのです」 ▶風知草:枝野幸男の弁明=山田孝男 ロベスピエールとはフランス革命で権力を掌握したのち「恐怖政治」を敷き、次々と政敵を粛清していったが、最後は自分も処刑されたジャコバン派の人です。枝野、そういう人にはなりたくないと言ったそうです。 枝野は、原発再稼働を一切認めない選択は無理な急進的改革だと考え、直進を急げば混乱を広げ、かえって理想(脱原発)から遠ざかると見る。そして、40年の廃炉規制に期待している。ロベスピエールを持ち出したのは、自分は現実主義者度ということを言いたかったからのようです。むかし読んだ、『平等に憑かれた人々 ― バブーフとその仲間たち』(岩波新書)を思い出しました。 最後に、山田氏、【脱原発を願い、再稼働を疑う人を「過激派」と呼ばないでほしい。現実主義の堕落に敏感でいてほしい。穏健派の指導者に注文しておく】といって締めくくっています。 仙谷、要は「東大にいた俺しか、渡りをつけられるのはいないだろう」といっているのです ▶原発「むりやり」再稼働 オフレコ・メモを公開する 枝野「おおむね安全」大臣と、仙谷の陰謀 枝野、仙谷らはなぜ再稼働へ突っ走っているのかということについて、いろいろオフレコメモを取ったというところから書いている記事です。 黒幕といわれている仙谷について、【仙谷氏はなぜか、政府の関係閣僚会議にオブザーバーとして出席している。あれは議論の流れが再稼働から逸れないように、監視しているんでしょう。特に発言が二転三転する枝野氏に目を光らせている。人権派の弁護士だった仙谷氏が原発再稼働に動いているのは、現政権内で、財界とまともに話がつけられるのはオレしかいない、という自負があるから。政権をウラで支えているのはオレだということでしょう】とは、ある民主党議員の話。「財界とまともに話がつけられるのはオレ」と、人脈(東大閥)のある俺だということでしょう。早稲田も、東北大もダメ、俺でしょうと。 ところで、福井県の「原子力安全専門委員会」委員長の中川英之(福井大学名誉教授)、工学部長時代、福井大に原子力を専攻する学科を作った中心人物だそうです。 なぜ、根拠のない楽観が生まれるのか ▶3・11後のサイエンス:東電は運が悪かったのか=青野由利 【政府は「東京電力は運が悪かった」と思っているのではないだろうか】と、記者は書きます。続けて、【しかし、あえて言うなら、東電は「運が良かった」のだ】と。そう、一つは、4号機の話です。【水素爆発の影響で隣接する別のプールから水が流れ込んだ。この偶然に救われなければ、裸同然の1535本の燃料が大量溶融しかねなかった】ことは、何回も本通信でも書いている通りです。次に、原子炉への注水に使った消防庁の消防車をあげています。「07年の新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発の変圧器が燃えたため、福島にも配備されていた」こと。そして、中越沖地震を教訓につくられた免震重要棟。 なぜ、根拠のない楽観が生まれるのかと問い、認知心理学者で米カリフォルニア工科大教授の下條信輔さんに尋ねます。下條さん、【神経心理学でいうところの「3大回避」がヒントになるかもしれないという。人間には、「損失」「リスク」「不確実性」を避けようとする心理がある。これらを考えるだけでも苦痛を伴う。だから、できるだけ考えないようにする。これが3大回避だ】と。 もう一つ、海水注入で東電の武黒一郎フェロー(1969年東大工卒)が出した中止判断を、安全より「(場の)空気」を優先する行為だと断じる。この武黒フェロー、東電の原子力派の「黒幕」「原発売り込み隊長」といわれている人物です。すると、またしても、何のことはない空気を読むのがうまい「お調子者」ということになります。 武黒についてはいろいろとネット上にあります。例(新潟中越沖地震の際)として、 http://www.keiten.info/ad/20100126toden.htm ▶<柏崎刈羽原発>運転差し止め、新潟地裁に提訴 新潟など6県の132人が同社を相手に全7基の運転差し止めを求めて23日午後、新潟地裁に提訴。福島第1原発事故で福島から新潟に避難中の13人も参加し「事故は人災で、東電には原発運転の資質も能力もない」と訴える。 ▼寄せられた情報 32万筆 署名有効 「原発都民投票」条例制定請求へ 【有効署名数が条例請求の必要数(都内有権者の2%、二十一万四千二百六筆)を大きく上回る三十二万三千七十六筆だったと発表】 | ||