原発通信 200号2012/04/26発行
200号を迎えました 本通信、昨年の6月から出し始めて本号で200号です。 3.11東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故=メルトダウン、爆発によって広島型原爆168個分もの放射性物質が東日本を中心に世界中にまき散らされました。私たちは、次世代に払いきれないほどのつけを回すことになってしまいました。1年以上たった現在も、危機は去っていません。大量の放射性物質をまき散らした東京電力は、自分たちがまき散らしたものを「無主物」だと言ってはばかりません。政府事故調の調査結果も出ないうちから、大飯原発再稼働へ向け野田政権はまっしぐらに突き進んでいます。 そうした危険な動きがある一方、敦賀原発では建屋の真下を活断層が走っているという調査結果が出てきて、「廃炉か」と。そのほか4つの原発が基準地震動の引き上げが決まり、柏崎刈谷原発も怪しくなってきました。原子力マフィアはこれまで自分たちが好き勝手に行なってきたことが、今回の事故で立ち上がった市民の“力”で、無視できなくなり、そうもできなくなってきているのではないかと思います。脱・反原発の声をとだえることなく、挙げ続けていくことの重要性がますます強くなってきていると思います。来月5日には北電の泊原発3号機が停止し、日本国内にある原発50基、すべてが停止するという画期的な時を迎えます。 本通信がどれだけ役に立っているかわかりませんが、“記憶していくひとつのツール”になればと思っています。脱原発社会をめざしてともに頑張りましょう! ▶柏崎刈羽原発も想定超え=断層連動考慮で東電-専門家聴取会・保安院 東京電力、長岡平野西縁断層帯から十日町断層帯西部までが連動した場合、これまでの想定より基準地震動=SSが一部で上回ったと発表しました。 ▶柏崎刈羽原発:想定揺れ引き上げへ…保安院 毎日新聞 2012年04月25日 22時51分(最終更新 04月26日 01時16分) 東電の発表を受け、「原子力安全・保安院は25日、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で、想定する最大の揺れ(基準地震動)を引き上げさせる方針を決めた」。 なお、引き上げ方針が決まっているのは、北海道電力泊原発(北海道)▽日本原子力発電敦賀原発(福井県)▽日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)▽中国電力島根原発(島根県)。 ▶記者の目:関西電力大飯原発の再稼働問題=関東晋慈 保安院は規制官庁としての位置づけですが、「当初からその独立性が疑問視され」、IAEAからは、「組織としての独立性の確保が最大の課題」と指摘されっていたといいます。ある「幹部は『自分も含め幹部の多くがエネ庁出身。規制するつもりで来ていなかった』と漏らした」といいます。 記者は、【「妥当」であることは「原発は安全」と同義ではない。あくまで電力会社が自主的に設けた基準を満たしているだけ】だと。今、保安院に必要なのは、原発の安全性ではなく「危険性」について説明することだと。 ▶高浜原発1号機、劣化か 圧力容器もろくなっている恐れ 【「関西電力高浜原発1号機(福井県)で、高いほど劣化が進んだことを示す原子炉圧力容器の「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」(2009年時点)が95度となり、国内では九州電力玄海1号機の98度(同)に次いで高いことが、関電が20日に大阪府市に提出した資料で示された】 ▶「高浜原発1号機圧力容器の脆弱性・農林水産省放射能検査に関しての通達」小出裕章氏 福井県高浜原発1号機の”もろい”原子炉格納容器 小出さん:高浜の場合には95度になるともう割れてしまうと言っている訳ですから、つまりもう、普通の状態だとガラスになっているという事なんですね。 水野:圧力容器がですよ、もしも割れるというような事があったらですね、何が起こるんですか?(メルトダウン?) 小出:原子炉圧力容器の中には原子炉を冷やすための水が満たされているわけですが、その圧力容器が割れてしまえば、水がもう満たせなくなりますので、炉心がむき出しになって溶けてしまうという事になります。 ▶原発再稼働:立地6市町「説明を」…国の政策に関心 毎日新聞のアンケート結果だそうです。 ▶浜岡原発:21m津波追加対策…保安院「安定冷却確認」 毎日新聞 2012年04月25日 23時07分(最終更新 04月25日 23時27分) 思うのですが、これとて、津波だけの対策で、そもそも浜岡の立地しているところが問われているのです。冷却電源が確保されているといいますが、電源は確保されたとしても、その冷却水を流すパイプラインが破断するかもしれないのです。そして、「その想定以上」のことが起きたら…。いずれにしてもだめなのです。 ▶神戸市:関西電力へ「脱原発依存」など京都市と共同提案へ 毎日新聞 2012年04月24日 14時32分(最終更新 04月24日 14時35分) 「可及的速やかな全原発の廃止」を求める大阪市案には同調せずということが、まずありきのようです。 ▶関西電力:株主提案で「脱原発依存」 知事、神戸案に理解示す/兵庫 上記の神戸市長に「理解を示した」のが兵庫県井戸知事。「原発の依存度を下げていくというのは基本方向として正しい」と。井戸知事、「今ただちに脱原発をしたとき、今後のわれわれの生活や産業の振興が進められるのか」と、大阪市案に疑問を投げかけたといいますが、まだまだ、「経済成長至上主義」その呪縛から解き放されていないようです。 ▶再生エネ:原案価格決定 太陽光42円、風力23~57円 毎日新聞 2012年04月25日 11時49分(最終更新 04月25日 18時17分) 買い取り期間は15~20年とした。発電事業者の要望に近い価格水準とすることで、再生エネの普及を目指し、「発電所の建設費や運転維持費に利益率6~8%を上乗せする形を基本に価格や買い取り期間を算定した」といいます。 ▶議会に根深く、関電利権 この国と原発:第5部 立ちすくむ自治体/3 異例「再稼働を」可決 昨年の9月に高浜原発が立地する福井県高浜町議会は、「原発再稼働」を求める意見書が事故後全国で初めて可決され、「原発推進」を積極的に訴えているところです。その町議会副議長が経営する鉄工所、関電からの直接受注も多く、業績は同業者の中で突出しているといいます。 「河野太郎ごまめの歯ぎしり」から ▶「廃炉費用が明確でないなかでのマクロ経済分析にどれだけの意味があるのか」──エネルギー基本計画見直しのデタラメ 【原発依存度20%以上のシナリオは原発の現状維持あるいは増設なくしては達成できない。しかも福島第一の賠償や廃炉費用が明確でないなかでのマクロ経済分析にどれだけの意味があるのか】 ▶「原子力発電ビジネス リターンは自分に、リスクは国民に」──原賠法を改正せよ 【原賠法の特徴である賠償責任を原子力事業者に集中させ、その他の者を一切免責とするということのはじまりは、昭和三十一年にアメリカから引き渡される濃縮ウランについて、その引き渡し後は一切の責任からアメリカ政府を免責しなければ濃縮ウランの引き渡しはしないというアメリカからの要求だった。 この原賠法は改正されるべきである。なぜならば、福島第一原発の事故でわかるように、ひとたび事故が起これば、電力会社は賠償と廃炉費用を負担することができない。 リターンは自分に、リスクは国民に、これが電力会社の向こうで原子力発電ビジネスに関わっている企業のビジネスモデルになっている。】 ▶中塚内閣府副大臣が福島第一4号機を視察
2012.4.23 中塚内閣府副大臣視察風景、4号機原子炉建屋5階における原子炉ウェルの確認 http://www.youtube.com/watch?v=jeBZL8eXO3c ▶大飯再稼働へ暴走 野田政権 これが癒着の構図──カネ 票 ヒト 原発業界から民主に次々 相関図が掲載されています。 ▶原発周辺“除染せず”含め検討へ 【政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故で、10年後も空間の放射線量が下がらない、原発周辺の地域では、巨額の費用がかかる除染よりも、長期間帰還できない住民への支援を充実させるべきだとして、除染を実施しないことも含め、対応を検討】 ▼どうでもいいですが 浜矩子、ヨタ雑誌『Will』(6月号)に「小沢一郎に『人間度チェック』を」などと題した一文を寄せているようです。『Will』ですが、本通信54号で報告しましたように、東電からの広告をもらっているランキングでは、堂々2位です。そして、あの差別主義者・花田紀凱が出しているヨタ雑誌です。 浜矩子のこと、「好きではない」と本通信でも書きましたが、リベラルぶって適当なことを言っているお人です。この人のを読むと、本当に経済学なんてインチキ、後付けで理屈付けての話ということがよくわかるので、まあ、その意味では「面白い」のかもしれません。 第12回 ドイツからの脱原発情報──政治・社会に敏感なドイツの青少年 (承前) 3 私が興味をもつのは、14~18歳ぐらいの青少年の問題意識です。当時の自分と、どうしても比較してしまうのです。あの時、何を考えていたのかなあ、と。定期的にアンケート調査が取られ、ドイツの青少年の問題意識が伝わってきます。彼らが、一番関心があるものは自然環境、2番目が戦争と平和、3番目が経済―失業という順になります。 この順序は、ここ10数年来一貫しています。大人ではこれが逆転していきます。そしてこの部分が、何か起こればすぐに街頭に繰り出していき、大きな抗議行動を組むことになります。 たとえばイラク戦争のとき、私が学校に行ってクラスに入ってみたら、生徒は数人を残して誰もいませんでした。その日の午前に市内で大きな抗議デモが行われたと聞きました。大部分は参加していましたが、学校に残った生徒もいました。事前に、各クラスでイラク戦争に関した議論が行われ、デモに参加するかしないかは、生徒各自の判断に任されたようです。ドイツの各学校では、義務教科以外のテーマで―たとえば戦争、暴力、原発、外国人のインテグレーション等々、特別に時間を割いて定期的な議論が行われているのがわかります。この背景には生徒たちが、そうしたテーマに直面した時、黙っていないで、学校側と先生を突き上げるからでしょう。同時に学校側も先生もそれに応える体制ができているからです。 私にも鋭い質問が飛んできます。このとき、自分の意見として、何を、どう表現できるのかが青少年との信頼関係を築き上げるうえで大きな要素となります。こうして考えると、〈教育〉のもっている重要性があらためて認められます。 そこで自然環境に関して、教育の現状を担任の先生から話してもらったことがあります。3歳児から始まると言います。難しいことではありません。ゴミ処理から始まり、課外授業で自然と動物に直接ふれて、自然環境の循環性を学んでいきます。小さい子供は、インディアン遊びがことのほか好きらしい。なんとなくわかります。必要な教材は、先生が自分でつくりますが、その裁量権は先生の手に委ねられています。学年が上がるにしたがって、もちろん、内容的に深められていきますが、大学、社会までそのレールが一貫していることに、あらためて感嘆させられます。こうして社会的合意がつくられてきているのでしょう。その意味では民主主義の土台が築かれているのです。 先生―生徒の関係だけではありません。家庭での取り組みが同じく必要だと、先生は話してくれました。家に帰って何もしなければ、学校で学んだことが元も子もなくなってしまうからです。両親もそこで同じレールに乗らなければ意味がありません。〈教育のネットワーク〉が網の目のように張り巡らされているのが、青少年たちの政治意識の形成に大きな役割を果たしているといえないでしょうか。こんなところに、自分が受けてきた教育との違いを感じています。政治が教育を通して個人に日常化しているのです。政治といえば、どこか特別なように感じられるのですが、それは自分の(社会)責任であるとする認識が、ドイツでは育てられているのです。 しかし、大学生ともなれば、それなりの自己意識が育ってきますから、自然環境といっても〈エコ〉漬けの社会・教育に反発して、職業選択では別の方向性を選ぶ人たちも出てくるそうです。この柔軟さが、運動の豊富化と多様性につながっているように思われます。(つづく) | ||