原発通信 202号2012/05/01発行
ゴールデンウィークに入り、原発関係の記事が極端に少なくなっています。大型連休だからか、下に報告する原子力安全・保安院の「反省」など、この時期にネットにでもあげておけば、そんなに目につかないかということかと勘繰りたくもある記事です。なんせ、自分たちはその専門知識も能力もなく、入った情報をどう処理していいかもわからなかったという驚く内容なのです。そして、新しくできるという原子力規制局はがんばってくださいという無責任この上ないものなのです。このような連中が原子力行政を担っていたのかと思うとぞっとしてしまいます。しかし、これが事実だということです。 保安院:「原子力の専門能力も広報も不十分」ネットで反省 同報告書「第五章 アンケート・インタビュー等で得られた指摘事項の整理」(p80以降)「第六章 今回の事故時の広聴・広報を踏まえた課題について」(p86以降)には、例えば、 1.事故対応に関する課題 【課題2】情報分析評価の問題 ・今回の事故は大規模な複合災害であり、かつ長期間にわたるものであったことから、一次情報を保安院として独自に分析・評価する専門性を有する人員が不足し…… 【課題4】広報戦略が不明確 ・誰のために、何のために広聴・広報を行うのかという認識が不足(個人・組織とも)していた。 【課題14】関係機関との連携不足 ・今回の事故は、大規模な原子力災害となり、保安院だけでは対応しきれず…… などとあります。 「一次情報を保安院として独自に分析・評価する専門性を有する人員が不足」などといっていますが、それをするのが彼らの仕事だと思うのですが、かつ、「誰のために、何のために広聴・広報を行うのかという認識が不足(個人・組織とも)」などと書かれると、安全・保安院は何をやるところなのかと考えているこちらがおかしいのではないかと錯覚してしまいます。しかし、頭を下げているばかりではありません。「大規模な複合災害であり、かつ長期間にわたる」「大規模な原子力災害となり、保安院だけでは対応しきれず」などと書き、「大規模」だったから、「想定外」であったと逃げ道をちゃんとつくっています。 しかし、小さな記事です。 下記が、その報告書です。 ▼東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に係る広聴・広報活動の課題と今後の取組について' ▶核燃料処理:全量直接処分が最安 総事業費試算やり直し こういうところでも、もはや彼らの好き勝手が許されなくなってきたということなのでしょう。 【一転して最安となった。国の従来方針の「全量再処理」は逆に最も高くなり、政策転換に結びつく可能性がある】と。 【前回試算は、30年までにかかる事業費に限定して比較した上、全量直接処分の費用に六ケ所再処理工場(青森県)の未償却費や廃止費用など約5兆円を上乗せしたため、他の方法より2兆円程度高くなっていた】 ▶脱原発:64自治体「首長会議」が「原発ゼロ」決議 全国の64市区町村長が「脱原発をめざす首長会議」を結成、28日に東京都品川区の城南信用金庫本店で設立総会。世話人には三上氏、桜井勝延・福島県南相馬市長、村上達也・茨城県東海村長の3人が選出。 東京では世田谷区、武蔵野市、狛江市、神奈川県では小田原市、真鶴町、埼玉県では蕨市、越生町、長瀞町、千葉県では富里市、野田市、酒々井町、一宮町、長生村が参加。下記記事に参加自治体首長一覧あり。 ▶再稼働問う住民投票求める、静岡 浜岡原発 【静岡県の市民団体「原発県民投票静岡」は27日、住民投票条例制定を求める請求書と条例案を県に提出 】 ▶原発再稼働容認を示唆──橋下大阪市長 住民に節電責任押し付け 【「住民が(厳しい節電を)我慢できるといえば、再稼働なしでいけるだろう。無理だったら再稼働しかない。府県民の判断だ」などと述べ、電力ピーク時を乗り切る責任を住民側に押し付け、乗り切れなければ再稼働もありうるとの考えを示しました】 ▶【関電の節電契約、低水準】夏のピーク抑制に余地 大飯再稼働に疑問も 9社中7位 関電は、需給調整契約の割合がなぜほかの電力会社より低いのかその要因は分析できていないといいます。Whyがわからずして、どうしようというのでしょうか。説明責任ということがまったく分かっていないということです。 【諸富徹(もろとみ・とおる)・京都大教授(環境経済学)の話 電力不足で原発再稼働が必要だとするなら、関西電力はまず節電や需給調整契約を含む需要抑制や、供給力を増やす取り組みが十分か、なぜ他社と同じ水準にできないかを説明する責任がある】と。 ▶浜岡原発:防波壁の実物大模型を展示 「どうだ! これだけのもんだぞ!」ということなのでしょうが、つくっているそばから、その「想定を超える」津波が来るとのデータが公表されたりしています。 ▶東電:経営透明化など5項目、総会で提案 東京都方針 【提案は社外取締役の選任と、定款の変更。社外取締役は長年都庁OBの指定席になっていたが、企業再生などの専門家を推薦する。定款には「安くて安定的な電力を供給し、顧客サービス第一を使命とする」ことを経営理念に盛り込むとともに、(1)電気料金の算定方法などの情報開示による経営透明化(2)設備投資の競争原理導入(3)民間事業者を活用した火力発電設備の更新推進──の追加を求める】 ▶<東電値上げ>消費者庁が審査…家庭向け10%、妥当性検証 【これまで診療報酬改定時やたばこの小売価格などが閣僚会議にかけられたことはあるが、形式的な了承にとどまっており、消費者庁による実質的な検証作業が行われるのは今回が初めてだ】そうです。 ▶官々愕々 霞が関の高笑いが聞こえる 「自民党は民主党よりも電力寄りで経産官僚に洗脳されている。民主党ほど愚かでないので、目立たないよう身を潜め、民主党が再稼働に踏み切ってくれるのを待っている」。 「30年前に戻ったかのような政策の裏には財務省、経産省、国交省などの官僚達の「的確な指導」がある。自民党は元祖官僚依存だが、民主党議員の多くも最近は官僚への忠誠を誓って自民よりも露骨な族議員になり下がっている」とは古賀茂明さんの指摘。 ▶津波:「600~700年周期で発生」奥尻島に痕跡 【600~700年おきに同規模の津波が起きた痕跡を、平川一臣・北海道大名誉教授(自然地理学)らのチームが見つけた】。北海道電力泊原発はその震源域の東、積丹半島の付け根にあります。 ▶9県51品目で超過=食品放射性セシウム新基準―適用から1カ月・厚労省 【新基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えたことが判明したのは、岩手、宮城、山形、福島、茨城、栃木、群馬、千葉、神奈川の9県の計51品目333件。魚や原木シイタケなどが多い】とのことです。 第13回 ドイツからの脱原発情報──〈エコ団地〉カッセル市の取り組み(その1) (承前) 4. 次に、自然環境、エコロジーの実際的な取り組みを紹介します。いろいろな考え、そういう意味では理想がどのように実現されてきたのか。まずは、その歴史的な過程を紹介します。 カッセルという街に、〈エコ団地〉があります。街の人口は約20万人。1980年代中期から 後半にかけて〈エコ団地〉がつくられ、その後、全ドイツに波及して行ったといわれています。日本からの視察団も、ここ20年来途切れることなく、毎年、定期的に訪問されています。その通訳を頼まれ、エコ団地を設計した教授、建築家に伴って案内しているうちに、「あなた、一人でやってください」と言われ、私は独り立ちしました。 1980年頃、カッセルで新しい都市計画が始まります。この当時はまだ東西冷戦の真っ最中ですから、国境の西側に接しているカッセルでの戦後復興が進みません。いつ戦争が勃発するかわからない状況ですから、投資が進まないことは当然といえば当然です。そこで若い人たちの故郷離れが進みます。この人口流失をどう食い止めるのか。そこで計画されたのが新しい団地建設です。 若い家族にも財政的に可能な持ち家政策を!がスローガンです。「ヤング・ファミリー」と名づけられたプロジェクトですが、さて、そのコンセプトとなると市は具体的には何も持っていません。市は計画の枠組みを提案しましたが、何を、どうつくるかに関しては、市民の参加を待つ意外にありませんでした。 この市の計画に応えたのが、建築家教授と建築家が中心となった市民グループです。彼らがワーキング・グループを立ち上げ、コンセプトを練り上げます。1982年のことです。その後2年間かけて出された案が、〈エコ・ハウス〉です。市と市民の間ではこの間、何回も議論が行われます。面白い裏話があります。市民が提案したエコ・ ハウスはとても斬新的なものになりますから、建築、防災、下・上水、素材等々、市と州にある条令、規則に照らして市側がどう判断していいか迷ったそうです。その言い方がふるっています。「条令や規則では当・否の判断ができないので、再検討をお願いします」と突き返してきたそうです。逆に言えば、それほどエコ・ハウスの考え方は、それまでの観念の意表をついたことになります。 最後には、エコ・ハウス建設に合意が成立しゴー・サインが出されます。その時、まず州の、それから市の条令と規則が改正されたといいます。住民の積極的な参加だけではなく、行政の柔軟さも認めなければなりません。 この時代ですが、1980年が「緑の党」の結成ですから、まだまだエコロジーという考え方は市民の間に浸透していません。やはり、建築家、教授、研究者、先進的な学生、芸術家など、教育水準が高く、経済的にも裕福な中産階級の人たちによって取り組まれていったといえるでしょう。 他方での要因ですが、1982年にカッセルで第7回ドクメンタが開催されています。5年に一度開かれる世界で一番大きな〈現代芸術国際展〉です。この芸術祭の起こりは、戦後ドイツの再建と非ナチ化政策の過程で、ナチ時代に禁止された、あるいはイデオロギー的な理由でその評価を歪められた現代芸術、たとえばピカソとかクリムト等の貴重な作品を再度、日の目を見させてドイツ・ヨーロッパの戦後の民主主義化に貢献するのが目的です。1955年に第1回ドクメンタが開かれています。 この第7回大会に、ドイツ現代芸術の大御所といわれているヨーゼフ・ボイスが「7000本のカシワの木」と名づけた作品を出品します。モチーフは、「行政に代わって、市民自からの手による町の緑化を!」。ドイツ語では、語呂遊びになっています。「Verwaldung(緑化の造語) statt Verwaltung(行政管理)」。 この時代に、彼はすでに、官僚や行政の閉塞性を気づいていたことになります。この呼びかけが市民の積極的なエコロジー運動、自然環境保護運動への取り組みに一撃を与えたと、私は判断しています。 エコロジーというのはそう考えると、市民の自主的な参加と自己決定、民主主義化、芸術活動、そして新しい考え方、思想、技術が合流した総合的な運動と、捉えることもできるでしょう。 次回は、実際の〈エコ・ハウス〉の技術、構造に触れて見ます。(つづく) ▼寄せられた情報 原発都民投票のお知らせです 1)民主都議いのつめ氏を迎えて勉強会を開きます 現在、都議会議員へのロビー活動を行っており、先日 いのつめ都議(新宿・民主)と面談しました。その中で下記の勉強会を開催することが決まりました。ご都合つきましたらぜひご参加ください。 「都政と区政と私達の暮らし」 2)新しいPR動画できました 先日の雨の日のデモ映像を使っています。 寒い中、ほんとうにありがとうございました。 3)事務局からの連絡 4月23日に各地域の選挙管理委員会の審査を終えました。 有効署名数 323,076 (有権者の1/50=214,206) http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/04/20m4o200.htm 無効率は6.49%で、予想より低い数字でした。 皆さまのご苦労、努力の結果です。 4月24日~4月30日まで縦覧期間となります。 無効署名の確認などできますので、各地の選挙管理委員会まで足を運んでいただければと思います。 すでに、縦覧に行った方からの報告では、地域によって対応が違っています。 <例> ・身分証明書が必要 ⇔ 申請書に住所氏名生年月日を書くだけ ・署名簿の書き写し自由 ⇔ 申請書に宣誓文として個人情報の持ち出しはしないと明記されている ・本人の署名だけ見ることができる/受任者は集めた署名のみみることができる ⇔ 請求代表に限らず署名簿すべて見ることができる お住まいの選管に行って対応を確かめてはいかがでしょう。 (請求代表者は、東京全域で縦覧ができます) この縦覧期間に異議申し立てがなければ、署名簿が返却されて5月10日に本請求となります。 ■サポーター募集 ◎5月10日 14時 本請求 東京都庁第二庁舎1階玄関 全署名簿5万冊を提出するので、ダンボール100箱以上になります。 運び込みお手伝いいただける方はご連絡ください。 tokyotomin.vote@gmail.com 件名;本請求サポーター 赤坂事務所で5月7日~9日に事前準備もありますので、こちらもお願いします。 ★お手伝いだけでなく、たくさんのギャラリーで、マスコミにアピールしましょう。 ◎5月10日 16時 記者会見 都庁記者会見室 請求代表者による記者会見です。 宮台真司さん他 一般の方も入れると思いますが、キャパがあまりないようです。 ◎5月10日 18時半~21時 公開討論会 会場:三茶しゃれなあど(世田谷区太子堂2-16-7/03-3411-6636 ) 全都議124人の方々に公開質問を出しており、この会への出欠もお聞きしています。 200人会場ですのでふるってご参加ください。参加費無料 (ここまで) | ||