原発通信 204号2012/05/07発行
吹きわたる五月の風は「希望」を感じさせます 42年ぶりに稼働原発のないときを迎えて 5月5日、前日までの悪天候がウソのように五月晴れの日でした。東京は、雨上がりの青空と、吹きわたる風は心地よく、50基ある原発すべてが今日停止します。「希望」を感じさせてくれる朝でした。原発通信も200号を越えました。原子力マフィア、原子力ムラの住人やそれに群がる「お調子者」をこの間批判ばかりしてきました。こう批判ばかり続けていると、「批判ばかりではね…、希望を語らないと」などという意見がよく出てきます。 しかし、私は思うのです。「希望を見る」から批判をするのだと。現在に「絶望する」のならば、批判など無意味だし、しません。しかし、批判なくして希望を語ることは詐欺だと私は考えています。原発問題に関していえば、「いつの日か原発のない社会が来る」ことを思うからこそ、現状をしっかり見、批判していくのだと思っています。 そして、思うことがもうひとつあります。脱原発にするにしても原子力工学等についての知識、スキルをもった人というのは今後も絶対必要だということです。先日の本通信で、学生も原子力離れを起こしているとお知らせしました。ある意味当然です。しかし、そういってまったく研究する人がいなくなってしまったら、脱原発、その後始末としての解体・廃炉、核燃料の処分という大問題をどうするのかという、これまた大問題が出てくるのです。 そこで、ゴミ問題がリサイクル社会の到来で脚光を浴びたように、脱原発、脱核社会へ向けての研究がある意味花形とまではいかなくとも日陰者にはならないような“しくみ”が求められると思うのです。そうした“脱原発・脱核社会は人類の夢”と語れる人が出てこないものかと思っています。 全原発が止まった2012年5月5日 本通信193号で、『問題は「原子力行政の信頼回復」ではない』と題して毎日新聞の倉重篤郎論説委員長(「毎日新聞は再稼働を否定するものではありません」―倉重論説委員長)のことを書きました。 5月6日付1面に彼が「ゼロから考える好機」と題した一文があります。冒頭、「この日が来ることを予想していた人は少ないだろう」などということから書き記しています。しかし、予想していなかったのは倉重さん、あなたですよと思うのです。あの玄海町町長でさえ「わかっていた」と言って「政府の無策」を批判しているのですから。 問題はそんなところではなく、毎日新聞の論説委員長という肩書を持っているお人が、さも政治のお目付け役としてのマスコミだといわんばかりに「今思えば、その過程で低コストと成長を優先するあまりに安全が軽視された。産官学の原子力ムラが推進複合体となり、メディアもチェックの責務を負いきれなかった」などと書いていることです。「メディアもチェックの責務を負いきれなかった」などというのを読むと、エッと絶句してしまいます。原発とメディアについて書かれた本を読んだことがある方はお解りでしょう。当初からの旗振りだった読売新聞はともかく、朝日新聞、毎日新聞も広告費欲しさにやってきたことを。まずそのことについての「自己検証」が必要だと思うのは私だけでしょうか。 「脱原発元年のスタート台にしよう」ということに関しては、異論はありませんが(この一文、毎日新聞のサイトで検索できないのですが)。 ▶原発稼働ゼロ:国内50基止まる 泊原発3号機運転停止で 相次いで「定期点検」のため停止されていった原発で、最後まで稼働していた北電・泊3号機、【同日午後5時に出力低下の作業を開始し、順調に作業を終えた。約2カ月半の予定で定期検査に】入るため5日午後11時3分についに停止したとのことです。稼働原発なしの状態は42年ぶりとのことです。 http://mainichi.jp/select/news/20120506k0000m040095000c.html http://mainichi.jp/select/news/20120506k0000m040097000c.html ▶特集:国内原発全50基、きょう停止 過小評価体質、変わらず 原子力ムラ「ゼロ」招く この記事に日本の原発50基(福島第1の1~4は号機は除く)の詳細が表になって掲載されていますが、ネット版にはないのですが、おもしろいことに「建設費」、東電管内と東北電力管内全原発分(17基分)が「非公表」となっているのです。(毎日2012.5.5原発表) 「電源喪失を起こさない」が安全対策か 再稼働問題で、安全対策が語られています。多くが原子炉や核燃料プールの冷却水ポンプを作動させる電源問題と津波です。福島第一原発の事故が冷却水を注入するポンプ電源が津波でいかれてしまったので、その電源確保だということなのでしょう。大飯原発にしても非常用電源を確保しただの、高台に設置しただのと言っています。南相馬市立総合病院長の金澤幸夫さんも「電源喪失を起こさない安全対策を条件に、もっとクールに考えないと」(毎日新聞5月6日付)と言っています。しかし、電源はあってもその冷却水を循環させるパイプラインをはじめそれらの構造物やシステムが安全とは言えないのです。ラインが寸断されたらオシマイなのです。ましてや建屋の下を活断層が走っているなどということが次々に明らかになっているのです。 今度は、志賀原発に活断層です ▶石川・志賀原発近くに活断層? 渡辺満久東洋大教授(変動地形学)と鈴木康弘名古屋大教授(同)の調査で原発の耐震安全性を検討する際に考慮する必要のある13万~12万年前以降に動いた活断層の可能性が高い活断層が志賀原発の近くにあることがわかったといいます。これまでも活断層があるということはたびたび指摘されてきましたが、それを「大丈夫、大丈夫」と押し切り、建設してきたわけです。ここへ来てそうもいかなくなったということなのでしょう。 ▶<ファイル>福井・大飯原発再稼働に厳しい意見──滋賀県原子力防災専門委員会 【石橋克彦・神戸大名誉教授(地震学)が現状での再稼働に最も強く疑問を投げかけ、「福島の教訓は、起こる可能性があることはすぐにも起こるということ。応急手当てではなく、耐震設計をやり直さないと、判断基準は全く意味をなさない」】と。まったくその通りです。 根拠を示さない・出さない関西電力 ▶<夏の電力>関電の不足、15%まで圧縮 政府検証委 【関西電力の今夏の供給能力が最大需要より15%足りないとの新たな試算を提示した】といいますが、昨日のTBSTV「サンデーモーニング」で関電と大阪府・市とのやり取りの場面が放映されていました。飯田哲也氏、古賀茂明氏などと関電のやり取りです。足らないという根拠のデータを出せと詰め寄っても、出さない。大飯原発再稼働した場合はなどと再稼働ありきの“議論”でした。それを見るだけでも「根拠」などいい加減だということがバレバレでした。 それにしても、最近、飯田さん、余裕が感じされるようにTVでは見受けられるのですが。先週4月29日のNHKTV日曜討論「ニッポンの電力 どうする原発再稼働」でもそう感じました。それに引き換え、あの澤昭裕(現在、経団連「21世紀政策研究所」研究主幹)、福島事故の後は、“人を食ったような”語りでしたが、このときは目が“泳いで”いました。 その時を報じた毎日新聞大阪版です。 ▶大阪府市エネルギー戦略会議:「関電、脅しているだけだ」 副社長らに委員激怒 『通販生活』最新号、『「原発輸出」は是か非か』に、澤昭裕が発言していたので少し取り上げてみます。 澤昭裕 現在、経団連「21世紀政策研究所」研究主幹 1957年生まれ。一橋大経済学部卒。通産省入省、資源エネルギー庁資源燃料部政策課長を経て、2004年から2008年まで東大先端科学技術研究センター教授、2007年より現職。 この男、TVなどで飯田哲也さんなどを鼻でせせら笑う態度をとるから、「原子力の専門家」かと思っていたら、何だ、経済畑出身です。資源エネルギー庁資源燃料部政策課長をやっていたというのを見て、なるほどと。ずいぶんいい思いをし、甘い汁を吸い、今は飼い主の大懐に入っているという御仁=番犬です。 『通販生活』最新号で、「福島原発事故から得られた教訓や事故対応の経験は、非常に貴重なものです」などといい、それを生かせば原子力利用の安全性を高めることになるなどと、のんきなことを言っています。今回の事故から得られた教訓、対応とは、ただ水をぶち込むしかないだけのプラント、爆発しないといっていたものが大爆発、放射性物質が飛び散らないように紙おむつにも使われているポリマーを撒くこと。そして、石橋克彦さんが言われるように、「福島の教訓は、起こる可能性があることはすぐにも起こるということ」。そんなもんでしょう。 櫻井よしこも発言しているので、後日報告します。 再稼働の是非については「政治判断がありうる」と留保? ▶橋下市長:「原発ゼロ無策は国家危機」 昨日、都民投票の情報を発信している中野・杉並の方から田中優さんからのメルマガ125号を「戦うための知識として共有していただきたく」ということで送られてきました。それによると橋本大阪市長、「2月に経産省や民主党幹部と隠密裏に意見交換した後のことだ。とっくに橋下は心変わりをしている」とのことです。 「拡散希望」とありましたので、いかにメルマガのアドレス貼っておきます。 ▶<緊急拡散希望!>田中優より「偽装停電の夏」をくいとめよう 【ピーク時の「夏場・平日・日中」は、家庭の三分の二は不在で、ピークの電気消費に対する家庭消費の割合は1割にすぎないのだ。だからそもそも家庭の問題ではない。節電すべきなのは事業者なのだ。】 【大阪市の橋下市長、人々のライフスタイルの問題にすり替えている。 一方、毎日新聞5月6日付「原発ゼロ 下」と題した記事「大飯以降見通せず」との記事に橋下市長への反発で民主党内に「伊方を動かせれば、大飯は橋下市長のせいで再稼働できなかったということにしてもいい」という意見さえあるということが書かれていました。 橋下大阪市長を知る ▶ストーリー:橋下氏、野心の源流(その1) 破れた革ジャン5万円 先月、毎日新聞の1面に大きく掲載された記事です。早稲田での経験したこと、司法試験に合格、晴れて弁護士に。自分の事務所をもつなど、興味深い内容です。彼とは何者かを知るうえで一つのヒントになるでしょう。 ▶家庭向け電気料金の値上げ、10・3%申請へ 物言わぬ消費者からという考えなのでしょう。 原油だけじゃない、ウランだって輸入でしょう ▶再稼働へ向け「最大限の努力」電事連会長 5日、電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)、「立地地域をはじめ広く社会の皆さまからの信頼回復に努め、できる限り早く原子力を再稼働できるよう最大限の努力を続ける」とのコメントを発表したそうです。続けて、原油や天然ガスなど火力発電の燃料は海外からの輸入に依存していることをあげ、「原発はこれからも大変重要な電源」と強調した(毎日新聞5月6日付)とのことですが、ウランだって輸入品でしょうがと。 ライフライン、なぜ、1本にするのか理解できません。 ▶関西電力:オール電化住宅なお促進 阪神大震災で、「ライフライン」という言葉が一般に使われるようになり、非常時にライフラインの確保の問題が盛んに言われているのにもかかわらず、なぜ、電力会社の「口車」に乗って、オール電化などというシステムを導入するのかわかりません。複数のラインをもつというのは危機管理のうえでの基本中の基本のはずです。だからこそ、非常時を想定しての通信・情報の確保を目的に「インターネット」というものが米軍によって開発され、現在、民間にその技術が開放されて現在のネット社会が出来上がっているということを見てもわかろうと思うのですが。 電気がだめなら、ガスは、プロパンはと。数年前、私の兄が「オール電化にしたんだ」と言ってきたとき、何を考えているのかと怪訝に思いました。「電気が止まったときどうするんだろう」と、私など単純に思ったのです。電気はいつも、間違いなくあると思う考えが理解できなかったからです。3.11の前です。 【関電広報室は「オール電化を通じて、低炭素社会の実現と、ピーク需要の抑制に向けた取り組みを推進しており、継続していきたい」と、今後も推進する構えだ。山藤泰・関西学院大客員教授は「電力需給が逼迫しているのにオール電化を売るのは矛盾。それでも続けるのは『再稼働をあきらめた』と思われたくないからではないか」と指摘している。】 学ばない「学会」です。 ▶特集ワイド:原子力学会定例会ルポ ムラ、やっぱり閉じたまま その学会とやらで出たトンデモ発言の一部。 【「地震による損傷はなく、『想定外』の津波が問題だった」と言いたいようだが、はっきり「結論」を言わない】 【京都大の若手研究者が「2号機は思いのほか損傷がなかったとの発表を聞かせていただきました。今後もいろいろ言われるでしょう。東電の皆さまの苦労にお礼申し上げます」と東電に「助け舟」を出す一幕】 【「原爆が落ちた広島は今や長寿県。放射線測定を熱心にやり過ぎると、被ばく線量100ミリシーベルト以下でも問題だと言い出す人が出てくるので心配だ」】 【「危険性は低い。大げさに騒ぎすぎだ」と言いたげな数々の発言】 しかし、科学者の良心に忠実な人もいます。 【福井大名誉教授の山本富士夫さん(71)=福井市=に感想を聞いた。「学会というより過小評価の説明会だった。がっかりしたけど、こうなると思っていた。彼らは結局、ムラから一歩も出やしないんだ」とため息】 ▶リスクと向き合う:進む橋の老朽化 膨らむ財政不安 【(東京都道路整備保全公社の)高木室長は、自らの経験も踏まえ「インフラは造れば終わり。維持にお金をかけるという認識がなかった」と、点検が軽視されてきた背景を話す】 これ、何も道路行政の話だけではないと思います。原発も、立派なコンサートホールも、いわゆる「ハコもの」といわれているものすべてです。つくればいいのです。後は野となれ、山となれです。 NHKTVで『憲法記念日特集「震災と憲法」』を聞いて 5月3日憲法記念日ということでNHKTVでは『憲法記念日特集「震災と憲法」』と題した討論会を行っていました。それを見て感じたことを少し。出席者の江川紹子さんの発言を紹介します。 憲法に「緊急事態」を書き込む必要があるかとの件です。江川さん、有事と自然災害は違うということ。「なぜ上から決めてもらいたがっているのか」と問い、なぜ自分で決められないのかといい、それらは制度の問題ではなく運用=人の問題ではないかといいます。憲法改正というまず改正ありきという議論はおかしいと唱えていました。有事立法議論があったことを忘れてはなりません。 ▶ウォール街占拠運動:数千人がNY中心部デモ 【最近は鳴りを潜めていた「占拠」運動だが、メーデーに合わせて「春の復活」をアピールした】とのことです。それにつけても米国の運動については「写真付き」です。脱原発行動については、毎日新聞、5日の芝公園での集会記事は記事のみ、写真などありません。約5500人参加とあってもです。 仏大統領選:オランド氏が勝利 17年ぶり社会党大統領 とりあえず、差別主義者、市場主義者のサルコジが舞台から去りました。 【「移民を敵視したサルコジ氏は俺たちの誇りをズタズタにした。国民はオランドを勝たせたのではなく、サルコジを追い出した」と涙を流した】 ▼寄せられた情報 ▶「原発」都民投票総決起集会&げんぱつ?YES/NO パレード 6月3日(日)午後 新宿中央公園水の広場にて開くことが決まりました。詳細は後日お知らせいたします。 ▶本請求は、< 5月10日木曜日 > 於都庁第二庁舎正面玄関(1階)です。 都庁前を埋め尽くして、条例案可決を願う私たちの姿を示しましょう。 ここからが本番のスタートです!大勢の方のご参加をお待ちしています! 【日時】:5/10(木) 【場所】:都庁第二庁舎 正面玄関前 ※1階です。2階ではありません http://www.metro.tokyo.jp/ANNAI/TOCHO/annaizu.htm 【スケジュール】 12:30頃 赤坂事務所から署名簿が出発 13:00頃 署名簿到着(都庁地下駐車場) 署名簿の入った箱を、”箱運び隊”が正面玄関まで運びます。 13:15 受任者、サポーター集合・・・第二庁舎正面玄関(1階) ※パレードや音楽演奏、都庁周辺の皆さんへのアピール大歓迎! 14:00 本請求セレモニー ”箱運び隊”が署名簿を都庁内へ運び入れます(総勢200名予定) | ||