原発通信 208号2012/05/11発行
「チェルノブイリのこの現状が26年後の福島ではないと誰が言い切れようか」 昨日の10日、原発稼働の是非を問う都民投票実現請求署名簿34万筆分を東京都庁へ運び入れました。その賛同人でもある作家の浅田次郎さんが、毎日新聞5月10日付夕刊に「灰色のマトリョーシカ」と題した日本ペンクラブのチェルノブイリ視察報告を書いています。 * 訪れたチェルノブイリは雨、コンクリートの上だけを歩くようにと注意を受け、巨大は石棺の前に立ちます。事故から26年、現在は老朽化し放射能が漏れだしているというので新たな石棺づくりが進行している。浅田さんは、その工事現場を見て言います。「きっと何十年後には、三つ目の石棺が必要になるのだろう」と。まるでそれは、マトリョーシカ(入れ子人形)のようにと。 かつて独ソ戦の激戦地であったウクライナ。戦争は終わったが「原発事故には終熄も決着もない」「すでに遺伝子の中に刻印されてしまった病と戦い続けなければならないのである」といいます。「チェルノブイリのこの現状が二十六年後の福島ではないと誰が言い切れようか」と。 滞在中に訪ねた多くの研究者は「福島で放出された放射線量はチェルノブイリの10分の1に過ぎない」「日本の医療技術は高水準」「海藻からヨードをとる習慣がある」などと言うといいます。しかし、浅田さんは、「もしや日本人を落胆させまいとする心配りなのでは」と言います。そして、「十分の一の放射線量」がすなわち「十分の一の被害」ではあるまいと。そして「山林の放射線量は平地ほど時間的な減衰をしない」とも。 浅田さんは自らに問いかけます。「父母が私たちに授けていってくれた平和と安息を、はたして私たちは子供らに与えられるのだろうか」と。 そして言います。「日本は今、国際社会における信用を問われているのである。もしここでその信頼を裏切る結果になれば、私たちは父祖の努力をすべてご破算にして、国家として食べてゆくすべを失ってしまう」のだと。 そして最後に、「科学の進歩とともに、われわれは退行したのではないか、と。もし原子力開発にふさわしい叡智が備わっているのなら、今のこのときに再稼働の議論など、まじめに戦わされるはずもないからである」と。 * 同行したペンクラブ環境委員会の長を務める中村敦夫さんは、チェルノブイリを視察し、言います。「除染実験はことごとく失敗した。放射性物質は山から平地へ、そして川へなどどんどん移動するだけで、なくならない。『除染』という概念が成り立たないことが分かった」。子どもたちの健康問題に「福島でも起きるのだろうか。先回りして考えないといけない」とも。 また、同クラブ会員の神保哲生さんは「26年前の話なのに、今の福島と同じことを言っている」と、解決への道のりの遠さに嘆息して言います。 ▼日本ペンクラブ声明「大飯原発再稼動に強く反対する」 http://www.japanpen.or.jp/statement/post_295.html 原発是非の住民投票 都に署名提出 「10日は市民グループのメンバーが、段ボール箱に入った署名を東京都庁に運び込み、都の担当者に署名が集まったことを示す文書を手渡」。 「住民投票の実施について、共産党や地域政党の生活者ネットワーク・みらいが賛成の意向を示しているほかは、態度を決めて」いないとのこと。 はじめから「ゼロ」などと思っていないでしょう。「原発ありき」をどう理屈付けるかなのですから ▶電力需給検証委 「原発ゼロ」前提覆す 【「原発ゼロ」で今夏を乗り切れるかどうかを見極めるのが議論の前提条件だったが、事務局が委員の求めに応じて原発の供給力を見込んだ試算を提出、政府の再稼働方針を「後押し」する形となった。】 ▶電力需給検証委:原発再稼働なければ全国で0.3%不足 だからなんなんでしょう。電気がちょっと足らないからということで、今後つづく未来を棒にすることではありません。 「需給ではプラスの東北と四国でも節電は避けられない見通し」、いいではないですか。生活のあり方を見直すいい機会だと受け取ればいいのです。 炉心が損傷しなければいい? 他もいかれてしまったということがわかっているのにもかかわらず ▶柏崎刈羽原発:所長「再稼働見通しつかず」 横村所長によると、事業計画は、柏崎刈羽原発1、5、6、7号機の13年中の稼働を仮定している。所長は「(来年6月に完成予定の)防潮堤なしでも炉心損傷を防ぐ対策を取っている」と言っているそうですが、今回の事故で分かったことは「炉心損傷」しなければいいということではないと思うのですが。意識的に炉心に話をもっていこうということでしょう。 「いいじゃないの今がよければ」という、「勘違い人間です」 ▶東電次期社長 “原発再稼働なしはもったいない” 柏崎再稼働を明記 事業計画政府認定 電気料値上げも 【東電の広瀬直己(なおみ)次期社長は8日の記者会見で「(原発再稼働なしは)もったいない」と発言】したそうです。この新社長、「もったいない」の意味が分かっていないようです。先のことは考えることをやめてしまった人間なのでしょう。今がよければいいのです。こういう人種は。 ▶東電の事業計画 多くの困難が NHKも、東電の事業計画は絵に描いた餅と。 その前に「需給調節契約」を結んでいる大口需要者をどうする? ▶“標準家庭の負担増 1か月480円” 【夏場については、午後1時から4時までの間の料金を高くする一方、夜間の料金は安く設定する新たな料金プランを設ける】とのこと。夜間の件は、オール電化だ、オール電化だといってやってきたので、いまさらということでの話でしょう。 それよりも「需給調節契約」を結んでいる大口需要者をどうするかでしょう。 だからなんなの? 何の意味があるのでしょうか ▶“再稼働で関電管内の電力不足縮小” こういうニュースの意味がよくわかりません。そりゃそうだろうというだけの話です。長年原発を動かし、それをもとにやってきたわけだから。だからなんなの?という話です。さも“原発を動かせば電力不足は解消”というイメージづくりとしか思えません。 再稼働をスピーディーにですか? ▶下河辺氏“スピード感持って” そう、スピード感を持ってやるのは、福島第一原発事故現場を何としても悪化しないように抑え込むことと、賠償問題です。柏崎へ行って、再稼働をスピーディーにやることではないのですが、怪しいです。というより、再稼働をスピーディーにといっているのでしょう。 ▶業務用 契約変更で割安に 東電また説明せず 【一般的な「業務用電力」から、夜間料金が安い「業務用季節別時間帯別電力」に契約変更すれば割安になるケースがあるのに、東電側が一部の大口需要者に対して十分な説明をしていなかった】とのことです。【他のマンション管理組合が今後、「季節別時間帯別」への契約変更を求めた場合の対応については、「一般論としても答えられない」】だと。 ▶消費者委 東電の値上げ監視を 【内閣府の消費者委員会は10日、申請の内容を外部の有識者などにチェックさせるよう、経済産業省に要請するとともに、消費者庁に対しても申請の手続きを監視するよう求めました】 ▶東電 夏のボーナス支給見送り 「去年の夏と冬のボーナスについては、前の年よりも50%カットしたうえで支給していましたが」、公的資金の注入もあり、「ちょっとまずいだろ」という話です。「ほとぼり覚めたらね」とか何とかの話ついているのかも。でないにしても、そう思われるところに東電労組・電力総連のいかがわしさと、疑わしさ、インチキさ、労働者の名をかたる“ヒル”みたいな存在だということでしょう。 ▶菅直人リスクと政府案 河野太郎ブログ ごまめの歯ぎしり2012年05月10日 18:03 原子力の規制組織の法案についての国会内部の話=内輪話が出ています。 電事連、「冷温停止は、冷温停止状態と同じ意味」だそうです。 ▶事故炉、「冷温停止」と表現 電事連パンフレット 【電気事業連合会が3月に作成した原発のパンフレット「原子力2012(コンセンサス)」で、東日本大震災の影響を受けた原発のうち、東京電力福島第1原発1~3号機について、本来の意味とは異なる「冷温停止中」との記述】 【電事連は「冷温停止は、冷温停止状態と同じ意味」と説明】 こういうことを平気でやる連中です。なぜ信用されていないのかということがまったく理解できていないのでしょう。 ▼「原子力2012(コンセンサス)」PDF http://www.fepc.or.jp/library/pamphlet/pdf/consensus2012.pdf ちょっと読んでみたら、とんでもない内容です。 ▶班目安全委員長ら24委員に原発マネー1億円 三菱重工業など24企業・団体 【班目委員長が委員就任前の2009年度まで原子炉メーカー三菱重工業から400万円を受領】 これだから、やめられません。ほかの企業も当然あるでしょう。そうしないと企業間競争に負けてしまうでしょうから。班目サン、東芝出身です。 竜巻被害の倒木のことです ▶放射性物質懸念 倒木処分できず 【竜巻による倒木を町で受け入れ、焼却するか燃料として再利用したい考えですが、倒木の放射性物質の濃度を計測する必要があるため、実際に焼却ができるかどうか見通しが立たない状態】と。こんなところにも福島第一の影が落ちています。 ▶帰還、依然見通せず 避難区域再編から1カ月 避難区域の再編が行なわれたといっても、放射線の問題、インフラ等々山積しています。再稼働同様、「まずは帰還ありき」ということでいいのでしょうか。 ということは、できていなかったということです。 ▶中国、原発の安全性アピール=外国メディアに異例の公開 毎日新聞5月10日付にある共同電では、中国担当者が「安全面では国際的にトップレベルの達した」と強調とあります。これ、藻方を変えると、それまではできていなかった(現在、本当にできているのかどうかは怪しいですが)ということです。しかも稼働中もの15基、将来230基までつくると豪語している国です。新幹線事故もあったことですし、安心などできません。 毎日新聞5月10日付にある共同電が見当たらないので時事通信のものを。 ツバメたちは…。日本野鳥の会、調査を始める。 本通信でもチェルノブイリ事故後の春、尾の短いツバメが発見されたことをお伝えしたと思います。大熊町で見つかったツバメの巣からは140万ベクレルものセシウムが検出されたといいます。そんなこともあり、日本野鳥の会が調査を始めるとのことです。 ▶ツバメの巣から140万ベクレル 離れれば「影響なし」 【環境省は23日、東京電力福島第1原発から約3キロ離れた福島県大熊町にある建物の壁で採取したツバメの巣から、1キログラム当たり約140万ベクレルの放射性セシウム(セシウム134と137の合計)を検出したと発表】 ▶日本野鳥の会 消えゆくツバメをまもろうキャンペーン 【ツバメは人と自然の共存を考えるうえで重要な指標となる生き物です。ツバメが減少している背景には、農業の衰退によりエサ場となる水田や耕作地の減少、巣作りに適した日本家屋の減少などがあります。 http://www.wbsj.org/nature/research/tsubame/ | ||