原発通信 239号2012/06/20発行
本通信、発信し始めて今日で1年がたちました 昨夜は、台風4号が本州を縦断していきました。東京は夜半から、突風と雨がものすごかったです。今朝、台風一過の青空。道路は木々の枝や葉でいっぱいでした。皆さんのところは大丈夫でしたでしょうか。台風の進路を見ると福島第一、第二原発があるあたりを通過していったようです。何事もなければいいのですが。 昨年、3月11日に起きた東日本大震災。それによって引き起こされた東京電力福島第一原発事故。第一原発の1号機から4号機までの全冷却電源がアウトになり、冷却できないでいるというニュースが飛び込み、翌日の1号機爆発…そのときのことと、その後のことは忘れることはできません。 次々に明らかになる「真実」。そして、原子力ムラの連中のウソにウソを塗り重ねたでたらめな言いぐさ。マスコミが伝えていることは信用できないことが次々を明らかに。しかし、いくつかのニュース、情報をつなぎ合わせたりしていくと一つの絵ができ上がることがあります。そんななかで、何が起こっているのか情報を整理して、確認していこうと始まった本通信です。事故が起きてから1年と4カ月。何とかそれ以上悪化しないところまではきましたが、今後、どうなるのかまったくわかりません。 と、書いていたら、再稼働作業中の大飯原発で「警報」。関電、「公表するレベルではないので、昨夜は発表しなかった」と言うのですから、開いた口がふさがりません。これで信用しろだの信頼しろだの、「事故は防止できる」だのと言ったところで信用すること自体無理でしょう。 福島第一原発でその後変わったことといったら、爆発した1号機にテントが張られたことと、4号機燃料プールにシートがかけられたということ。当時の30Km離れた地点からのNHKテレビの映像には映っていなかった「汚染水貯蔵タンク」が、その後、山を削り林立しているということ。そして、福島の多くの人たちが住んでいるところを追われ続けているということです。 国会事故調からも政府事故調からも報告書も出ないなか、野田首相の「大丈夫」と言う「決意」のみで再稼働を強行することになった大飯原発3、4号機です。 私自身、本通信を出していくなかでいろいろ学ぶことができ、多くを知ることができました。原子力ムラというのがいかに巨大な利権組織=シンジケートをつくり、事実を隠ぺいしながら増殖していたのかということを。学生時代に起きていた原発建設反対闘争やヒヤリング阻止闘争のこと。何か不気味さを感じつつも…。その十数年後に起きたチェルノブイリ事故。正直、まだその時はソ連のことだから…。そして2011年3月11日を迎えてしまったのです。うかつだったとは済まされない状況を生んでしまったのです。 その反省も含めて、脱原発、原発・核のない社会をめざしたたたかいのひとつのツールになっていけたらと思います。出せるところまで出して情報の共有化を図れたならばと思います。 監視をつけたところで何の役にも立たないって、言ってたとおりだろう! そう、何が出てきても「ノープロブレム」。これが保安院のモットーとしているところですから。本当に「問題だ」というときは、おしまい…のときですか…。原発とはそういうものなのでしょう。それは、3.11直後、全交流電源喪失に陥っても、「圧力容器=原子炉は大丈夫、爆発するようなことはありません」と繰り返していた原子力ムラの「専門家」たちのことを思い出せば十分でしょう。それまでは、何が起きても、報告されても「ノープロブレム」です。今日はその2本。 ▶大飯原発で警報 公表半日後で謝罪 【関西電力大飯原子力発電所の3号機で、19日夜、発電機のタンクの水位が下がったことを示す警報が作動】 【関西電力がトラブルを発表したのは半日後で、国の原子力安全・保安院は発表の遅れを謝罪】 【国も検査官が中央制御室に常駐し、事故やトラブルが起きた際、迅速に対応するための「特別な監視体制」をとって】いるというのが、再稼働するにあたっての目玉だったはずですが、何の役にも立っていないということが証明された形です。 保安院、「新たに設けた特別な監視体制の中で十分連携が取れていないところもあると」 理由が振るっています。 【関西電力は「法令や社内の規定では、公表するレベルではないので、昨夜は発表しなかった」と】。いつもこれです。「言うほどのことではなかった」。彼らが言うほどのことが起きたときは、ジ・エンド…ですか。御免こうむりたいものです。 ところで、WEB版のNHKニュースを見ていると、台風の後ということもあり、まああることあること。毎度のことですが、台風というとどっさりの「ニュース」です。新米記者にとっては、格好の「取材訓練」としていいのでしょう。まさにOJTとでもいうのでしょうか。しかし、こと原発問題となると…。 それにつけても、どうして台風というと、わざわざ、合羽を着て風雨の中でしゃべるのでしょうか。 ▶伊方原発:3活断層連動で想定超えの揺れも 四電試算 【四国電力は19日、伊方原発(愛媛県)周辺の三つの活断層が連動して動いた場合の揺れを試算した結果を、経済産業省原子力安全・保安院の専門家会合で報告した。一部の周期で、想定する最大の揺れ(基準地震動)を超えたが安全上問題ないと主張。保安院も了承し、同原発周辺の活断層の連動について「これで問題はクリアした」とした】 ▶伊方原発:3号機「耐震裕度2倍を確保」 四電が県に報告/愛媛 ▶都議会で原発投票条例案否決 速報 【20日、東京都議会の本会議で採決が行われ、条例案は否決】 ▶核燃サイクル:見直し案提出反対…原子力小委委員ら要望書 そもそも、委員会の存立基盤が問われる問題を起こしておきながら「事業者に原案を示すなど過程に問題はあったが、報告は小委員会のメンバー全員(7人)に有効と確認された」としてまとめてしまおうという神経が並みではありません。 【原発推進側だけで「勉強会」と称する秘密会議を開いていた問題で、内閣府原子力委員会の有識者会議「新大綱策定会議」のメンバー4人が19日、核燃サイクル見直しについて取りまとめた原子力委・小委員会の報告を政府の「エネルギー・環境会議」に提出しないよう求める要望書を園田康博・内閣府政務官に出した。細野豪志・原発事故担当相と近藤駿介・原子力委員長あてで「民主主義的手続きを無視しており正当性を持ち得ない」としており、今後のエネルギー政策決定に影響する可能性がある】 【要望書には小委メンバーの伴英幸・原子力資料情報室共同代表が名を連ねており、厳しい判断を迫られる】 ▶他社原発から受電ゼロなのに 東電購入費1000億円 これが「総括原価方式」たるゆえんなのです。分母(経費)が大きいほどもうかるのですから。こういうことも「ノープロブレム」で通ってきたのでしょう。というより、かかるもの、いや今回はかからないものまで計上してしまうというのはもう習い性なのでしょう。 【東北電力と日本原子力発電(原電)の原子力発電所から購入する電力量が今後三年間はゼロとなる見込みなのに、年間一千二億円の購入電力費用を家庭向け電気料金の値上げ原価に入れていることが分かった】 ▶再稼働条件 危うい政府約束 「必要性」どこに 【政府は関西電力大飯(おおい)原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を決めた際、原発の「安全性」と、電力が足りず稼働させる「必要性」の二つがそろわないと再稼働は認めない、と約束した。しかし、原子力規制委員会が発足した後は「必要性」はチェックせず、なし崩し的に再稼働を進めるかのような動きを見せ始めた】 【枝野氏は、新たな原子力規制委員会が発足した後も首相や関係三閣僚による必要性判断のステップを残すかどうかを問われ、「率直に言って、まだ検討していない。これからの検討です」と言葉を濁している】 こんなこと繰り返していると、歴史の教科書に「当事者能力のない無力な内閣であった」と刻印され、「決断できたのは、国民の反対を押し切って原子力ムラに押し切られてした原発再稼働だけの内閣」と。 ▶川内原発:増設、白紙撤回せず──薩摩川内市長/鹿児島 【薩摩川内市の岩切秀雄市長は18日の同市議会一般質問で、凍結状態にある川内原発3号機増設計画について、現時点で白紙撤回する考えのないことを改めて示した】 ▶川内原発:九電との安全協定、立地市並み求める──いちき串木野市長/鹿児島 【いちき串木野市の田畑誠一市長は14日、同市議会の一般質問で、川内原発(薩摩川内市)に関する九電との安全協定について「本市の位置は隣接市でなく準立地市」と、立地市並みの協定締結を求める考えを示した】 【同原発から最短で5・5キロ、市内のほとんどが20キロ圏内。 また、田畑市長は川内原発の再稼働について「地理的に見れば、本市住民の理解は当然必要」と国の責任による地元説明などが必要と】 当然ですが、大飯原発再稼働では、対岸の小浜市などの同意は不要とされました。さて…。 ▶科学技術白書:原発事故で国民の信頼低下 【白書は、原発事故で日本製ロボットがほとんど役に立たなかったことを例に、日本の技術開発が、実際の運用に備えていないと指摘。政府から国民への情報提供が不十分だった点については、英国や米国で導入されている科学者から政府への情報提供の仕組みを「日本でも整備することが重要」と強調した】 【国民へのアンケート調査では「研究の方向性は専門家が決めるのがよい」との質問に「そう思う」と答えた人が震災前の59%から19%へ激減】 この結果にしても、当然といえば当然の結果です。しかし、問題は、次の世代以降、原子力なんてやっていると評判悪いし、日陰者扱いされるとなってしまったら、それはそれで問題なのです。何せ、今後、10万年「御守」しなくてはならないのですから。しかも、専門知識が必要。前にも書きましたが、うまい仕組みをつくっていかなければなりません。 ▼トンデモナイ話 ▶特集ワイド:なんか違う?最近の石原都知事発言「東京は薄情」「ちまちました我欲」「やせた民族」「壊れた心」最後の叫び 【自らを選んだ都民や日本人そのものに矛先を向けた今回の「放言」は、かつて年配女性や外国人らを傷つけた見境なき暴言とは少し趣が違うようだ】と記者。なんでも都が招致する8年後の夏季五輪への支持低迷が直接の理由らしいです。 【「僕らは冷めるほど(あの戦争と)距離が取れてない。10代の時に価値観を全部否定され、ここまで来たんです。ああいう戦争は良くない。心の破壊ですよ」/それを踏まえれば、最近の石原節は「壊れた心」を抱えた世代の最後の叫びとも】とは、記者。 わが都知事閣下、御年80歳だそうです。そう、美濃部氏と都知事選を戦っていた時、慎太郎閣下、美濃部さんを老人だとか年寄りがと罵倒していましたが、その美濃部さんが亡くなられた年になりました。そもそも、そんなことを言って罵倒していた彼のことをどれだけの人が覚えているでしょうか。 ▶橋下市長:「政治活動に罰則」断念 違法の指摘受け 【橋下徹市長は19日、政府が罰則規定などを「地方公務員法に違反する」との見解を閣議決定したことを受け、条例案を大幅に修正する方針を決めた。罰則規定や技能職員への適用は断念】 往々にして、他人に厳しい人は自分に甘いのです。自分の言ったことさえ、責任の重さなどどこという感じで前言撤回できる神経をもっているのです。そういう類の人には、恥ずかしいとか、照れくさいとかというものからは、まったく無縁なのです。 しかし、よく「政治活動に関わる制約は基本的人権で一番尊重しないといけない表現の自由に関わること。閣議決定を踏み越えてまで条例化するのはやっちゃいけない。閣議決定に従う」と、同じ口から出てくるものです。 | ||