原発通信 268号2012/07/30発行
![]() 猛暑をものともせず20万の市民が国会を包囲 ![]() ![]() ![]() ![]() 東京は連日30度を超える猛暑日が続いています。そんななか、日比谷公園には、原発再稼働反対、反・脱原発、未来を守ろうと次から次とさまざまな趣向を凝らした旗やプラカードをもって人々が集まりました。私たちも仲間たち20名ほどといっしょに参加しました。デモ出発は後半のほうでしたが、私たちが日比谷公園に戻ってきてもまだ、最後の人たちはデモに出発できないでいるという状況。日比谷公園の交差点脇にいつものごとく「在特会」の連中が、デモ隊に向かって品のない言葉を投げかけ、偽善者だの左翼殺人集団だのと日の丸を掲げて騒いでいました。一方で、反・脱原発派にも日の丸を掲げて参加している人たちもおり、今回の集会デモにも当然参加しています。 その後、国会包囲行動へ向かい、国会正門前交差点角に仲間とともに陣取りました。周辺は続々と詰めかける人々で身動きもできない状況に。そんな状況のなか、自然発生的に「再稼働反対! 道路を開けろ!」のコールです。社民党の阿部とも子氏、自民党の河野太郎氏、国民の生活が第一の森ゆう子氏、共産党の志位和夫氏、新党日本の田中康夫氏、亀井静香氏らが次々に国会側から「通行止め」になっている歩道を渡ってやってきました。森氏らには「最後まで、マヌーバー(党略)などではなくキチンと脱原発を」と声をかけました。 当たりも薄暗くなってきた中、警察の規制をはねつけ、正面道路いっぱいに人々があふれ出て、あっという間に一帯は再稼働反対をコールする人々で埋め尽くされていまいました。それに恐怖した警察は制服、私服警官がものすごい勢いで私たちに向かって突進してきました。しばらくすると、これまでは登場しなかった機動隊もヘッドランプ付きのヘルメット、乱闘服姿で登場です。そして、国会正門前に機動隊のバスを並べ、何を血迷ったか、そのうちの1台が私たち抗議する市民がいる方へ頭を向けて突っ込んでくるではありませんか。バスの頭と私たちの間は2メートルも空いていません。当然、抗議のコールが巻き起こり、あまりの怒りの声にすぐさま退散していきました。 6月末の首相官邸前の行動とともに、一帯が市民によって埋め尽くされるという光景は近年なかったことです。それだけ、野田首相の再稼働(再起動)宣言は市民の怒りに火をつけたということなのです。再稼働撤回、すべての原発を廃炉にするまでがんばりましょう! ▶山口県知事選 保守王国に動揺 【原発再稼働に反発する声が全国に広がる中、「脱原発」を掲げた飯田氏に無党派層の支持が集まり、既成政党批判が「保守王国」を揺るがした。不戦敗に終わった民主党内の衆院解散・総選挙に対する恐怖感も強まっている】 告示3週間前に出馬表明した飯田氏でしたが、あの山口で健闘したといえます。 ▶脱原発デモ:政党は距離感つかめず 【毎週金曜日夕方に、東京・永田町の首相官邸前で行われる原発再稼働への抗議行動に対し、各政党に危機感が高まりつつある。自発的に集まる人々がほとんどで、政党側には意思疎通のパイプがない。矛先が既成政党全体に向かうきざしもあり、「なめたらえらいことになる」(自民党幹部)という声も】 【電力総連出身の民主党参院議員は「原発を止めれば料金も上がる。好き嫌いで語る人に説明しても理解されない」と突き放す】 【細野豪志原発事故担当相は「デモとどう向き合うかは難しい。私にも答えがない」と戸惑いを語る】 【新藤宗幸・東京都市研究所常務理事(千葉大名誉教授、行政学)の話 既存の政治家は経済団体、業界団体、労働組合のような組織の中で政治を考えており、新しいデモを起こしている民意の変化を理解できないのだろう。紹介議員を通じて陳情する従来のシステムとはまったく異なる】 そう、「なめたらえらいことになる」ということを思い知らせましょう。 本記事で発言が紹介されている民主党議員──原発問題は、原発が「好き嫌い」の問題としか認識できないようでは、もう議員である価値はありません。即刻辞めてもらいましょう。電力総連に対しての抗議行動も取り組めれたらと思うのですが。 ▶関西電力:福島事故報告を安全対策に反映 社長、知事に意向/福井 【関西電力の八木誠社長が27日、県庁で西川一誠知事と会談し、福島第1原発事故について政府、国会、民間、東京電力の各事故調がまとめた報告を安全対策に反映させ、8月中に具体策を報告する意向を示した】 なるほど。しかし、事故原因がきちんと検証されていない、つまり、「実物」に近づいて目で確かめることができない状況で、何を反映させるというのでしょうか。しっぽをいかにしたら掴まれないかということを学習したということか。 ▶東海第2原発:再稼働問題 中止の請願、住民から意見聴取へ──東海村原特委/茨城 【東海村議会原子力問題調査特別委員会(豊島寛一委員長)が27日開かれた。日本原子力発電東海第2原子力発電所の再稼働問題を巡る請願の審査について、住民から意見を聞く場を8月下旬をメドに設けるとともに、村ホームページなどで幅広く意見を求める方針を決めた】 文科省の反省と自己弁護 ▶SPEEDI:文科省が非公表の誤りを認める 【緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の拡散予測を当初公表せず、住民避難に活用されなかった点について、データの信頼性に疑問があったが、住民に提供する意味は「否定することまではできない」として、初めて非を認めた。また学校の校庭利用の目安となる放射線量の数値を「年間20ミリシーベルト」として混乱が生じたことについては「保護者の不安に真摯(しんし)に応える姿が十分でなかった」と反省】 ▶文科省、震災対応検証 縦割り放置、自己弁護 【情報公開の意思決定には未解明な点が残され、調査の限界も露呈した。校庭の除染や給食を巡る当時の混乱についても「誤解が生じたため」とし、詳しい検証には踏み込まなかった。記者会見した城井(きい)崇政務官は「自己検証の限界があった」と】 しかし、自己弁護は忘れません。 【「活用の判断は、(経済産業省原子力安全・保安院が事務局の)原子力災害対策本部の役割。文科省が積極的に活用するよう助言しなかったのは、それぞれ責任のある部局が対応を行うことから理解できる」と】 ▶福島第1原発事故 SPEEDI非公表、反省 「校庭線量混乱も」──文科省検証報告書 検証報告書の骨子 ・SPEEDI情報を住民に提供する意味を否定することまではできない。関係機関に活用を助言すべきだった ▶社説:原発危険度 順位付けして公表せよ 【原発依存度を下げる方針を掲げている以上、政府はまず、リスクの高い原発から廃炉にしていく決断を示す必要がある。そのためには、単に「40年廃炉」を指標とするだけでは不十分だ。複数の指標で原発のリスクを判定し、全原発の相対的な危険度を公表してもらいたい】 ▶エネルギー戦略:策定を秋以降に延期検討 【政府が、「脱原発依存」に向けた新たなエネルギーと環境戦略の策定を当初予定した8月から秋以降に延期する検討に入ったことが27日、分かった】 ▶国直轄除染:「住めるようになるのか…」住民は期待と不安 【東京電力福島第1原発事故で放射性物質で高濃度汚染された「特別地域」を対象にした国直轄の初の本格除染が27日、同原発から20キロ圏内にある福島県田村市都路(みやこじ)地区で始まった。今年度中の事業完了を目指すが、前例のない大規模な除染の現場は手探り状態だ】 ▶東京電力:震災直後のテレビ会議を8月上旬に公開 【東京電力は27日、東日本大震災直後の社内テレビ会議の映像を8月6日から5日間、報道陣に公開すると発表した。公開映像は昨年3月11日午後6時半ごろ~同16日午前0時の計約150時間分】 ただし、 【公開に当たり、一般社員などが映る一部映像については画像や音声を消すなどの処理をする。さらに映像の閲覧期間と場所を限定するなど、公開の範囲を限定するという】 ▶近聞遠見:「菅首相でよかった」の声=岩見隆夫 【枝野、大塚、細野とも、菅首相を補佐する立場上の発言とみられないこともないが、事故調とのこれだけの評価の違いは見過ごしにできない。政権の内部と外部の認識ギャップとも言える】 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶玄海原発:劣化の1号機 「33年まで健全」と保安院 【九州電力玄海原発1号機(佐賀県、定期検査で停止中)の原子炉圧力容器が予想を上回り劣化していた問題で、経済産業省原子力安全・保安院は27日、現時点の劣化は異常なレベルではなく「2033年までは十分健全」との見解】 保安院、何を根拠に「十分健全」と言っているのか。そもそも彼らに「十分」だの「安全だ」のという資格そのものがかけているというのに。 ▶玄海原発:結論ありき 住民批判 【予想以上の老朽化が問題となっていた九州電力玄海原発1号機(佐賀県玄海町)について、経済産業省原子力安全・保安院は27日、「十分健全」と結論付けた。だが、専門家によるこの日の意見聴取会では、納得せず最後まで異論を唱えた委員がいたにもかかわらず、保安院は「基本的にこれで終了」】 【国や九州電力は問題の試験片の解析結果を出したが、解析の基となるデータを出すことを拒み、一部しか示さなかった。大学などの中立的な研究機関で試験片を解析すべきだという私の提案も退けられた】とは、東京大名誉教授(金属材料学)、井野博満さん。 【聴取会では玄海1号機以外の原発のデータも公表するよう国に求めたが、出てこなかった。国と電力会社が結論ありきで推し進めようとしているように感じた。国にはあらゆるデータを公開して透明性を確保することが求められる】 ▶<もんじゅ>警報が誤って作動 漏えい検出器 【30日午前3時40分ごろ、福井県敦賀市の日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」で、2次系ナトリウムの漏えいを示す警報が鳴った。約15分後に運転員が現場を確認し、同4時半ごろ、漏えいがないことを最終確認した。誤警報だったという】 【もんじゅでは、これまでもナトリウム漏えい検出器の誤作動が相次いでいる】 ▶福島第1原発事故 作業員賃金「ピンハネ」 【東京電力福島第1原発事故の収束作業にあたった長崎県の男性(45)が、労働者派遣法などに違反する多重派遣や偽装請負の状態で働かされたとして、下請け上位の「日栄動力工業」(東京都港区)に是正を指導するよう東京労働局に申告した】 ▶佐賀・玄海原発:先月15日発生のぼや、溶接機が原因 【九州電力は27日、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)内の低レベル放射性廃棄物を処理する「雑固体溶融処理建屋」で先月15日に起きたケーブル火災は、作業員が足場に置いた溶接機が原因だったと発表】 こういうことだって起こるのです。 ▶【大津いじめ】反原発デモに滋賀県教組がいた!? 以前から、教員組合の福島第一原発事故後の対応に、その鈍感さについて何度か本通信にも書きました。大津のいじめ問題、その学校の教員が教員組合員かどうかは知りませんが、いずれこのようなことが出てくるだろうとは思いました。確かに、一理はあるのです。 【脱原発、反原発デモが毎日のように行われている昨今であるが、こちらは7月16日に代々木で行われた反原発デモの様子である。 この反原発デモでは「原発はいらなーい!」「再稼働をやめろ!」「脱原発を実現しよう!」「原発事故を忘れるなー!」といったシュプレヒコールが叫ばれていたが、「命が大事!」「子どもを守れ!」といったことも同時に叫ばれていた。 そう、この「子どもを守れ!」というセリフを「滋賀県教組」とかかれたノボリを持った人が大声で叫んでいたのである。 http://getnews.jp/archives/235415 ![]() 第18回 旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)の崩壊と反原発運動 今回は、DDR(ドイツ民主共和国)と自然環境保護運動、反原発運動について、少し書いてみます。なぜ、どこから旧社会主義体制が崩壊したのかを考えるヒントになるのではないかと思います。それはまた、秘密警察、軍隊、スパイ、監獄、拷問等々によって固められ、一見、確固不動・鉄壁に見えるどんな体制についても当てはまることでしょう。 「ベルリンの壁」が崩壊する直前、直後の旧東ドイツに入った人には、今でもその時の印象が残っているはずです。東ドイツの街に入ったかと思うと、褐炭の匂いが鼻につき、空を見上げれば、一面がスモッグでどんよりしています。また街角に行けばゴミと小便の匂いがし、街頭には人影が見られず、まるでゴースト・タウンのようでした。 これが、私が初めて経験する「社会主義」の現実でした。それを賛美した本が、また、たくさん書かれていました。諸外国では「社会主義神話」が語られていたことになります。 社会主義と環境問題──これを上記「神話学」的に解釈すると、社会主義には環境問題はないことになり、公害、自然破壊、人間の健康被害は資本主義の本質的な問題となるでしょう。スウェーデンに次いで旧東ドイツで環境政策が憲法に明記されたのは1968年ですから、西ドイツよりは先を行っていたことになります。戦後、経済成長する資本主義社会での公害問題を見ながら、それへのSED(ドイツ社会主義統一党)のキャンペーン的な対応であったように思われます。1970年には、「Landeskulturgesetz」がつくられ、「国の文化法案」とでも訳せるでしょうか、環境問題が文化政策の一環に組み込まれたことになります。これだけを見れば、公害を撒き散らし経済成長を煽って終焉を暗示している資本主義に対して、「社会主義」の文化的かつ思想的な優位性が伝わってきます。そして1971年に、「Ministerium für Umwelt und Wasserwirtschaft」が設立されます。「環境・水経済省」として行政機構に組み込まれます。 しかし、市民の口から語られていた現状は、わずかな自然保護地域の管理・擁護とか、蝶やカエルの一定種の生物観察が行われていただけで、DDRの経済からもたらされていた破壊的な影響については対象外になっていました(なんか、天皇の稲栽培とナマズでしたか、生物観察を思い浮かべて滑稽になってしまいますが)。 決定的な転換点を迎えたのは、1970年代中期の「石油危機」でした。これによってエコロジー問題は、エコノミー、外交、増大する社会問題の後景に追いやられたといわれています。石油からエネルギー資源供給の重点は、1979年以降、褐炭に移っていきます。しかしその採掘技術は、例のごとく、とっくに時代遅れになっていて、空気、水が汚染されることになります。その規模のほどは、ほんのわずかでも「社会主義社会」を体験した人には想像できるはずです。1982年、シュタージ(国家保安省)は環境問題に関するすべてのデーターを「極秘」扱いにして、市民の口を封じにかかります。一例をあげます。ジャーナリスト、出版者、監督たちが1983年来、森林の枯死状態を映像に撮り続けますが、それが公開されたのはやっと1990年になってからのことです。シュタージの手が入っているからです。この狭間で、旧東ドイツの環境問題は取り組まれていきます。 (つづく) | ||