原発通信 270号2012/08/01発行
マスコミ人──反省するヒト、「前から知っていた」かのように装うヒト、さまざま。 この春から毎週くりかえされている首相官邸前での原発再稼働反対抗議行動です。6月22日の首相官邸前道路を占拠するまでに膨らんだ抗議行動。それによってようよう新聞各紙、テレビが報道するようになってきました。これにようやく目が覚めたのか、何人かの国会議員官邸前の歩道に来て挨拶をしていたが、大きく変わったのは確かに鳩山由紀夫氏の登場からです。そして、7.29国会前には、なんと亀井静香などまで登場するまでになりました。 それまで抗議行動を報じなかったことに対して、マスコミ人らが少しずつ発言するようになってきています。毎日新聞7月28日付週刊テレビ評で金平茂紀氏が自戒を込めてこう言っています。 【僕自身も取材で何度か現場に足を運んだが、自戒を込めて言うのだが、当初マスメディアはこの動きに対して実に鈍感な反応しか見せていなかった。僕の記憶では、テレビでは「報道ステーション」が6月22日に放送した「ツイッターで広がるうねり」というミニ特集が、官邸前の動きを最初に詳報したのではなかったか】【新聞を含めて明らかに既存のメディアは後れを取っていた】【国会記者会館のソファで昼寝していた記者がいたとしたら記者失格だ。もちろんメディアによっては、大衆行動が大嫌いなところもある。数万人の人が官邸前で声を上げても「所詮はああいう人たちのデモでしょ」と訳知りに言う記者もいるだろう】 【坂本龍一を「今時のおしゃれな文化人」などとやゆしたり、日本赤軍や三島由紀夫を引き合いに出して「今のデモはまさにべ平連式だ」などと的外れな攻撃をしているザマをみると、ウォールストリート占拠行動や「アラブの春」を体を張って報じていた海外の仲間たちに説明もできない。恥ずかしくて】 と結んでいます。「いたとしたら」「いるだろう」と“控えめに”言っていますが、たぶん事実で、読売新聞と産経新聞のことでしょう。 また、毎日新聞の三浦耕平記者は7月28日付「つながる」というコラムで「マスコミ批判に反省」という一文を書いています。彼は3.11前まで東電の担当で、当時は原発を推進すべきとの立場だったが、3.11後、「限られた価値観のなかで形成された原発安全神話に依拠した昔の自分を振り切るためにも、ツイッターで広がるデモにはこれからも足を運び続けたい」と、いみじくも東電で「感電」してしまったと告白し自己批判しています。さらには決意まで示しています。 もちろん、後に引用する「発信箱:42年後に=滝野隆浩(社会部)」のようなどことなく頓珍漢な人もいますが。 これも毎日新聞7月30日付夕刊「近時片々」です。【新しいかたちのデモが表す深層の変化が、表層の争いに日々暮らす「政界」には見えない】と、自分のことは棚に上げてです。日々の表層の争い=政界しか目にはいらなかった自分たち=マスコミの捉えかえしの姿勢がまったくありません。そんなことをも今回、多くの人々が「気づいて」しまったのだということなど、さらにわからないでしょうね。 ▶原発の呪縛・日本よ! 社会学者・大澤真幸さん 大澤さんがここで言いたいこと、「無意識」と向き合おうは、本文を読んでいただくとして、その「前段」を。 【福島第1原発事故を知った時の直感を聞くと、「自分も含め日本の学者たちの反応は鈍かった」と率直に語る。昨年3月12日に思想家、柄谷行人さんが主催する現代思想の定例会のエピソードを紹介してくれた。「予定通りの発表、飲み会の中で、なぜか原発は話題になりませんでした。ネットのニュースで1号機の爆発を知っていたんですが、誰も原発について深く話さなかった。自分自身、こんなに大きなことになると気づかなかった」】 【大澤さんは自分を含めた学者の鈍さにばつの悪さが残った。底にあったのは共犯者意識だ】 と、言います。似たような経験は私もあります。「レベル7」という史上最悪の事態が進行しているというのに、なぜか「原発(事故)の話」を忌避するような場の空気。あれはなんだろうと。なぜか話題にしてはならないような重苦しい(?)、タブーとでもいうのか、そう、口に出して言うことが憚れるような空気が漂っているのです。なぜ…。それが確かに、6.22以降、吹っ切れたように話題にすることができるようになっています。なぜ…。 ▶脱原発:金曜デモ呼びかけ関係者と菅前首相らが意見交換 【菅直人前首相ら脱原発を目指す国会議員は31日、首相官邸前で毎週金曜日に行われている原発再稼働への抗議行動を呼びかけた市民ネットワーク「首都圏反原発連合」の関係者らと国会内で意見交換した。菅氏は30日に野田佳彦首相と電話で話したことを明らかにし「野田首相は『会って話を聞くことはやぶさかではない』と言ってくれた」と述べた】 しかし、問題は次です。 【また、菅氏によると、首相に今春、「国民の憤りの対象になっている」と伝えると、首相は「え、そんなことになっているの」と驚いたという】 野田首相、「え、そんなことになっているの」と驚いたのは、この春といいます。しかし、再稼働を決めたのは6月8日です。そんなになっているのを“知っていて”「私の責任で再起動」させたのです。 ▶発信箱:42年後に=滝野隆浩(社会部) 【手づくりのプラカードには環境、教育など原発以外のテーマも目立った。みんな自分の問題なのだ。もちろん根っこには、見えない放射線によって自分も子も孫までもヤバいという皮膚感覚がある。遠くの「平和」を案じて怒りを爆発させるのではなく、運動は続けなくてはという意思も。だから怒りは、暴走はしない。 「福島のあとに沈黙をしていることは野蛮だ」。坂本さんは最後に、表明した。まず英語で言ったのは、ネットで世界に流れることを意識してのことか。参加者もそれぞれ、何万何十万のメッセージを発信していっただろう。それは広く長くゆっくりと、共有されていく】 優等生的「レポート」、それ以上でもそれ以下でもありません。そう、で、あなたは? と問うのは無理か。しかし、「環境、教育など原発以外のテーマも目立った」とは、何を考えているのでしょうか。原発問題の根源的問いを全く理解していないということです。まして、「環境」は原発以外のテーマだと思う神経がどうかしています。 ▶原発反対デモを積極的に報じぬ新聞 ドラマチックさないから 週刊ポスト2012年8月10日号2012.07.30 16:00 【こうした抗議行動やデモをどう扱うかは、実は新聞の立ち位置が如実に表れる。現場の記者よりもデスクや部長、あるいはもっと上の幹部の意向が反映されるからだ。現場の記者が問題意識を持って記事を書こうと思っても、実際に紙面に載るかどうかは普通の記事以上に幹部の判断がモノを言う】 【何度繰り返されても同じだから、見たままを描写するスケッチ報道にとどまるなら、ニュース価値は小さくなる。そこから一歩踏み込んで書こうと思えば、必然的に社会的背景や主張の中身、参加者の気持ちなどに深く切り込んでいかなければならない】 【鳩山登場はいつもと同じ抗議行動に目新しさと政治性を付け加えた】 【朝日新聞は7月21日付から社会面で「街頭へ」というワッペンを貼り付けて抗議行動の連載記事を始めた。朝日は本気で反原発に舵を切ったのだろうか。少なくとも現場の記者は「やる気になった」と思いたい】 と、まあ、新聞は、目新しさを追う習性があるから、目新しさがないとだめだと。 原子力規制委員会よりも、原子力ムラ規制・監視・解体委員会の設置を! ▶規制委候補4人に原子力マネー 経歴調査資料で判明 【委員長候補の田中俊一・前原子力委員会委員長代理は2011年度に原稿料や講演料として、原子力の啓発活動などを行う日本原子力文化振興財団から20万円、放射線関連商社、日本原子力産業協会から受け取っていた】 【委員候補の更田豊志・日本原子力研究開発機構副部門長、中村佳代子・日本アイソトープ協会主査、島崎邦彦・地震予知連絡会会長の3人も振興財団から講演料を得ていた】 これで公平な中立的な判断ができると…。そう思う方が変です。「一宿一飯の恩義」という言葉があります。「ごっつぁんです」といって懐に入れるだけの人であれば、それでおしまい。以後、「お付き合い」はないのです。まあ、やる方が「お恵み」という気持ちからであればですが、そんなところ、今の時代ないでしょう。何せ「費用対効果」を限りなく追求することを是とする世の中なのですから。 ▶原子力規制委:人事案「再考を」…超党派の国会議員の会 【超党派の国会議員で構成する「原発ゼロの会」は31日、国会内で記者会見し、政府が国会に提案した原子力規制委員会の同意人事案について「『利用と規制の分離』『原子力ムラとの決別』をうたった規制委設置法の趣旨を大きく逸脱している」として、再検討を求める声明を発表した。……「ゼロの会」は民主、自民、公明など8党の議員10人が世話人を務める。声明は、規制委員長候補の田中俊一・高度情報科学技術研究機構顧問について「電力事業者との『秘密会議』が常態化していたと指摘される原子力委員会の委員長代理だった」と指摘。原子力委員会のあり方についての総括▽委員長候補と秘密会議の関与▽委員候補を含め、過去の発言に対する見解など人選に関する政府の考え方──の3点について、説明責任を果たすよう求めた】 ▶<原子力規制委>委員長候補の田中氏が所信 衆院議運聴取 【衆院議院運営委員会は1日午前、政府が国会に提示した原子力規制委員会の同意人事案で初代委員長候補の田中俊一・高度情報科学技術研究機構顧問(67)から所信を聴取した。田中氏は原発の再稼働について「新たな調査の結果、活断層による影響があるとの判断になれば、運転の停止を求めるべきだ」と述べ、再稼働した関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)を含め規制を厳格に適用していく考えを示した】 ということは、それまで、自分も含めてやってきたことはいい加減だったと。だから「反省」したと。でも、だれも信用などしていないということです。それに、まったく当たり前以上のことは言っていませんから。 ▶原子力規制委人事めぐり激論! 脱原発デモ主催者と超党派の議員の初会合を徹底リポート(1) 【会合は円卓の片側半分に「首都圏反原発連合」のメンバー12名、もう半分に菅直人前首相など脱原発派の国会議員13名が対面する形】 【辻元清美・衆院議員のように「専門家が必要というが、専門家がこれまで判断を下し事故を起こしてきた。原子力の専門家ではなく、社会的な総合判断ができる人物が必要ではないか」と同調する姿勢もあったが、参加した議員の多くは「民主党の中でも人選をめぐって激烈な議論が交わされている。明日(8月1日)に予定されている運営委員会に田中氏を招致し、脱原発への考え方を聞いたうえで判断する」(福山哲郎・参院議員)などとして明言を避けた】 ▶討論型世論調査:電力会社関係者を排除せず 無作為抽出で 【これまでの意見聴取会では、複数の電力会社の社員が参加して意見表明したことに批判が集中し、発言者からはずす措置をとったが、今回は無作為抽出で選ぶことなどから、問題ないと判断した】 【出席者には電力会社関係者が含まれる可能性があるが、世論調査は対象を無作為で選ぶため、組織ぐるみの参加はあり得ない】で、原子力マフィアの回し者たちが出てくるのは、何度も言っていますが、彼らしかいないからなのです。 ▶東京電力:震災直後のビデオ 1カ月間の公開期間を決定 【東京電力は31日、東日本大震災直後に撮影された社内ビデオ会議の映像について、公開期間を8月6日から約1か月間にすると発表した。東電は報道陣の閲覧期間を6日からの5日間に限定していたが、枝野幸男経済産業相の改善指示を受け再度検討した。閲覧用のパソコンの台数も40台から60台に増やす】 冗談ではありません。私たち一般市民から徴収しているカネ(90%も)で動かし、これだけのことをしでかしたのですから、全国民、いや世界中の人も含め何があったのかを「知る権利」というものがあります。 ▶録画・録音禁止が条件=事故後のテレビ会議映像公開―東電 【東京電力は31日の定例記者会見で、福島第1原発事故後に東電本社などで対応に当たった幹部らを映したテレビ会議映像について、報道関係者向けに公開する際には、録画・録音は禁止するなどとした条件を提示した。同意しない場合は、公開しないとしている。……東電は会見で、映像の録画・録音、撮影などの禁止のほか、役員らを除き、社員の個人名なども報道しないよう要求した。……一方、枝野幸男経済産業相の指示を受け、これまで5日間としてきた公開期間は8月6日から9月7日までの約1カ月間に延長。報道関係者の望む映像があれば、社員の顔にぼかしなどを入れた上、後日提供するとした。……報道規制に当たるとして、批判の声が上がったが、東電は会見を打ち切った】 こんなことするのは、まさにやましい点があるからです。 ▶原発:オフサイトセンター 5~30キロ圏内に設置へ 【経済産業省原子力安全・保安院は31日の専門家会合で、原発事故時の対策拠点施設「オフサイトセンター」について、原発から5~30キロ圏内に置くことを原則とする設置要件をまとめた。対象の全国16か所のうち、4か所は5キロ圏内にあるため、移転を迫られる】 つまり、原発は危なくてしょうがないから、もっと離れたところにオフサイトセンターをつくるということです。「死んだ人いない」と言った中部電力の人、カネがもったいない、放射能なんて大丈夫だからと反対しないのでしょうかね。 ▶東海第2原発:運転差し止めなど求め提訴 市民266人 【茨城県東海村の日本原子力発電東海第2原発(定期検査中)を巡り「東京電力福島第1原発と同様の重大事故の危険性がある」として31日、村民を含む10都県の266人が国と原電を相手に、運転差し止めなどを求めて水戸地裁に提訴】 ▶<東電国有化>2兆円規模の国民負担が生じる懸念も 【政府は31日、原子力損害賠償支援機構を通じて東京電力に1兆円の公的資金を投入し、50.11%の議決権を取得して実質国有化を完了した。東電の経営破綻を回避し、福島第1原発事故の賠償や、電力安定供給に支障がないようにすることが目的だ。政府はリストラなどで黒字転換させた後、1兆円の公的資本を回収する方針だが、再建が暗礁に乗り上げた場合、機構が立て替えている1兆円余りの賠償資金すら回収できず、2兆円規模の国民負担が生じる懸念もある】 「だから原発再稼働だ」と言ってくるでしょう。 ▶キャンプ場の作業優先を=森林除染で方針案―環境省 【環境省は31日、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された森林の除染方針案をまとめた。住宅地周辺以外の優先地域として、子どもが利用するキャンプ場やフィールドアスレチックなどを例示した。専門家らの意見を踏まえ、8月にも方針を決定する】 これらもマフィアの餌食になるでしょう。 ▶2012年知事選:飯田さん「原発」追い風も、出馬表明遅れ響く──記者座談会/山口 【飯田さんがもう1週間前に出馬表明していたら結果は変わっていたかもしれない】 【安倍晋三元首相の選挙区の下関市は、山本さんと飯田さんの得票割合が4対3。「下関で圧勝」という自民のもくろみは打ち砕かれたのでは。下関でさえ保守が盤石とは言えないように思う】 ▶長崎原爆の日:今年も「脱原発」踏み込まず 長崎市が平和宣言骨子発表 【東日本大震災についても言及するが昨年同様、「脱原発」には踏み込まず、エネルギー政策の転換を呼びかける】 ▶<広島原爆の日>エネ政策の確立要求 平和宣言の骨子発表 【広島市の松井一実市長(59)は1日、原爆の日(6日)の平和記念式典で読み上げる「平和宣言」の骨子を発表した。東京電力福島第1原発事故で国民的議論が進んでいることを評価し、市民の暮らしと安全を守るエネルギー政策の確立を政府に求める。「脱原発」の是非には今年も直接言及しない】 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶五所川原市:ねぷた山車から「原発マネー財団」看板撤去 【財団が寄付金を原資に助成する同県五所川原市の伝統行事「立佞武多(たちねぷた)」の山車から、財団の名を記した看板が撤去されたことが30日分かった。東京電力福島第1原発事故を受け「原発マネー」で祭りをすることに批判が多数寄せられ、イメージダウンを恐れた市が取り外した】 ここも、ホリエモンが言った世界です。「金で買えないものはない」と。 ▶電事連・日本原燃:11年度、13億7000万円寄付 祭りもアートも寄付頼み 25市町村132事業助成/青森 【財団法人「むつ小川原地域・産業振興財団」(青森市)が11年度、電気事業連合会と日本原燃から13億7000万円の寄付を受けたことが31日、明らかになった。前年度より5億円増え、毎年寄付を受け始めた94年度以降では過去最多となる。原子力施設立地で国から受け取る電源三法交付金も11年度、大幅に増えたことが毎日新聞のアンケートで発覚しており、交付金に加え寄付の増額も判明したことで、福島第1原発の事故後も「原子力マネー」に依存する体質が浮き彫りになった】 【助成を受けた主な事業は、通常枠で立佞武多(たちねぷた)開催費補助(五所川原市、2300万円)や田んぼアート展望所建設(田舎館村、2590万円)。拡充・充実枠では、情報処理機器整備(青森市、2,000万円)やひばり野公園サッカー場人工芝生化(五戸町、3,500万円)など。人材育成から火葬場の改修まで助成対象は広範にわたり、通常枠で412万~7650万円、拡充・充実枠で100万~3700万円が各市町村に配分された】 ▶暴力団が除染講習会に潜り込み資格取得 儲かる除染作業参入 【大飯原発が再稼働したものの、まだ多くの原発が停止したままだ。しかし、原子力ムラは一向に困らない。なぜなら、原発が停止しても、新たに「除染」利権が誕生したからだ。……昨年9月、内閣府は日本原子力研究開発機構に「避難区域等における除染実証業務」を約119億円で丸投げした。同機構は、高速増殖炉もんじゅや青森県六ヶ所村における核融合の研究開発にあたる組織で、「原子力ムラ」の中核と言っていい。発注は、「除染作業に知識と経験がある」という理由からだが、結局、機構もゼネコンを中核とするJVに丸投げ。「除染実証業務」の3地区を受注したのは原子炉建屋などの実績順に、鹿島(24基)、大林(11基)、大成(10基)の3社JVだった。……暴力団系手配業者が原発に作業員を送り込んでいるのは周知の事実だったが、被災して事業を投げ出した土建業者の組合員資格を買い取った暴力団系業者が、談合でやすやすと工事を受注。また、彼らは満員盛況の「除染講習会」に潜り込み、資格を取って除染作業に入り込んでいる】 | ||