原発通信 275号2012/08/08発行
![]() 東電・松本本部長代理、み~んな「見直す予定はない」のでしょうね 先日「公開」された事故発生当時のテレビ会議を録画した映像公開で、公開の仕方等をめぐって余りの東電の「身勝手な」やり方に異論が噴出しています。そのことに対して、【東電の松本純一原子力・立地本部長代理は同日の記者会見で「今のところ公開の方式を見直す予定はない。テレビ会議の映像が公共財かは判断しかねる」と述べた】そうです。あれだけ「レベル7」という史上最大の原発事故を引き起こしておきながら、「公共財」も何もないだろうに。 公開されたものだけを見ても、早期にメルトダウンを認識しておきながら、燃料が露出するまではまだ時間があるだの、圧力容器は損傷していないだのと嘘八百を並べ立てていたことについても「見直す予定なない」のでしょうね。しかし、この御仁、タフというか、面の皮が厚いというか、厚顔無恥というか、見上げたもんです。もうかれこれ1年半、シラッとした顔で会見できるのですから。まあ、新潟中越沖地震の時からだそうですから、筋金入りもいいところなのでしょう。 ■デタラメな、あまりにデタラメな……「存在に耐えられない軽さ」 原子力ムラ=マフィアの連中を居座らせる気でいる野田政権。原子力規制委員会設置法によれば、そもそも原子力の精錬、加工、貯蔵、再処理に係る個人や法人の従業者は委員になれないとのことです(東京新聞下記)。今回の人事がまかり通るのなら、と東京新聞は福島社民党首の言を引いて書いています。【社民党の福島瑞穂党首によれば、政府は「委員就任前に辞任していれば問題ない、との理屈で人事を強行するつもり」なのだそうだ。それなら福島事故を起こした東京電力の前会長だって委員長になれてしまう。デタラメが過ぎる】と。 野田首相は、事あるごとに「重く受け止める」といいますが、これほど軽い言葉はないでしょう。インフレです。たんに「受け止める」といっているだけであり、ではどうするということは言っていません。受け止める=聞くだけなら猿にだってできる(?)のです。 原子力ムラの人間は、いかに言おうとも、みんなデタラメで、ウソつきで、自分の保身しか考えていない連中だということを、日本の多くの人々は知ってしまったのです。 ▶東電の会議映像、公開制限を批判──枝野経産相 【枝野幸男経済産業相は7日の閣議後の記者会見で、東京電力福島第1原発事故発生直後から社内のテレビ会議を録画した映像を、東電が「社内資料」を理由に全面公開していないことについて「社内資料だから公共物にならないという論理はおかしい。社内文書でも公共物であることはあり得る」と批判】 ▶実際に150時間見ている野村元委員が公開映像を解説 前々号で、「ワタナベ先生はだれ?」と書いてしまいましたが、私の聞き間違いで、班目センセイでした。 ●野村元国会事故調委員の話(抜粋) やはり東京電力は、自分たちが見せたい部分を選んで、今回は編集したというふうに感じられるわけです。 やはり、はっきり言ってですね、こういったような事態が起こるってことを、十分想定していなかったということが表れていると思うんですね。 今回は、実は「ベントを優先させる」というふうに現場は決めていたわけなんです。ところが、ここからずいぶん離れた官邸の方におられた班目委員長が、別な考え方を示していたわけですね。 「SR弁というところを開いて、そして、そこに注水する」ということを、ま、強く言っていたわけです。 ところが、現場の方は、「それをやると急激に燃料棒がむき出しになってしまう危険性がある」ということを、実は東電の本店に対して警告を発しているんですね。ですから、この「班目委員長の指示は従えない」というふうに言っているわけなんです。 ところが、東電本店はそのことに対して、官邸にしっかりとその事情を伝えることなくですね、逆に、「官邸の指示に従え」というふうに指示を出してしまっているわけですね。 本来やるべき指揮命令系統が逆流してしまっているという状態を表しているわけなんです。やはりこれは、官邸の方が、ちょっと余計な指示を出しているという面もあるんですけれども、わたしどもの事故調査委員会の報告書では、むしろ、この東電の本店が、しっかりとした対応をしていなかったというふうに結論づけているわけなんですよね。 班目委員長の指示に従ってくださいというふうに命じてしまったというところに、本店のだらしなさっていうのが表れているんじゃないかなというふうに思っています。 http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-2199.html ▶東電テレビ会議映像 「建屋にヘリで穴を開ける」などのやりとりも ▶東電テレビ会議映像 原子炉冷却のための決死隊提案など明らかに ▶株主=国民を無視した東電テレビ会議映像「不完全公開」のあくどさ 【視聴のために提供した本店1階会議室には、監視カメラまで設置する念の入れようである。入試か何かと勘違いしているらしい。……入室時には事前登録した名前も厳しくチェックされた。映像を見られたのは、机の上に置かれた65台の専用パソコンだけ。座席はあらかじめ決められていた。 しかも、映像ファイルは6分割されたもので小さくて見えづらく、音声も聞き取りにくい。ひっきりなしに「ピー音」が入るからチンプンカンプンだ。カメラやICレコーダーは持ち込み不可で、やりとりをノートやパソコンに記録するのも骨が折れた。 「とにかく隠したいという気持ちでいっぱいなのでしょう。クーラーの効きが悪い暑くて小さな部屋にギュウギュウ詰めされたのも、居心地を悪くして集中力を鈍らせ、長居させないためじゃないか」(ある民放記者)】 【「映像は昨年3月11~15日の150時間分。そのうち100時間分は事故を免れた福島第2原発で録画された音声ナシの映像だ。しかも、東電によると、映像・音声処理した場面は1700カ所あるというから、ふざけている」 【一部非公開は当たり前』との立場を崩していないが、それで許されるのは民間企業の場合です。今や1兆円もの公的資金を投入された国有会社。東電の株主は国民なのです。その国民が全面公開を求めているのに平然と突っぱねるなんて勘違いも甚だしい】 ▶原子力ムラ復活は論外だ 【政府が新たに発足させる原子力規制委員会の委員長候補になった田中俊一氏は前原子力委員会委員長代理で、元日本原子力研究開発機構の特別顧問である委員候補の更田豊志氏は同じ機構の副部門長、もう一人の中村佳代子氏は日本アイソトープ協会主査。二人とも現役バリバリの原子力ムラ住人である。 原子力規制委員会設置法によれば、そもそも原子力の精錬、加工、貯蔵、再処理に係る個人や法人の従業者は委員になれない。現役の両氏が不適格なのは明々白々ではないか】 ▶原発ゼロの会:超党派の国会議員75人が入会 【超党派の国会議員で作る「原発ゼロの会」は7日、初の総会を国会内で開いた。世話人の8等10人を含め、同日までに「原発ゼロを政治的公約とし、実現に全力を挙げる」との趣旨に賛同した衆院56人、参院19人の計75人が入会した。党派別の人数は、民主22▽自民2▽生活14▽公明1▽共産14▽社民7▽みんな4▽きづな5▽新党日本1▽無所属5】 ▶原発ゼロの象徴にクラゲ=大飯再稼働で「抗議」-超党派 【メンバーが選挙公約に掲げる原発依存度ゼロを示すマークにクラゲを採用すると発表した。クラゲは先月、関西電力大飯原発3号機(福井県おおい町)がフル稼働する直前に取水口近くの海に大量発生。世話人の阿部知子氏(社民)は「まるで自然界の抗議のように出力上昇を妨害した」】とのことからだそうです。 くれぐれもクラゲのようにつかみどころがないようなものにならないことを祈っています。原発依存度ゼロになるまで頑張ってください。願わくは、議席の方もゼロにならないことを…。 ▶野田首相:原発抗議デモメンバーとの面会延期 自民党には解散を確約しろと詰め寄られ、「中小の野党」(石原自民党幹事長の言)からは不信任案・問責決議案が提出され、もともと関心のない原発どころではないということでしょう。しかし、石原幹事長、「野田首相が決断」だのと、分かったようなこと言っていますが、要は、自分たちにも打つ手はなく、「人任せ」ということを言っていることと同義です。 野田首相、1年ぽっきりでいい、その間に「決断する政治をするのだ(韻を踏んでいるのではありません)」と…。いや違うでしょう、状況を読み違えたということでしょう。状況認識から間違っていたのですから、結論は間違っているにきまっています。 ▶首相、原発ゼロ検討指示 世論を意識 形だけ? 【野田佳彦首相は六日午後、枝野幸男経済産業相や細野豪志環境相、古川元久国家戦略担当相を官邸に呼び、「将来原発ゼロにした場合の課題を整理し、どうすれば克服できるかを検討してほしい」と指示した。脱原発を求める世論の高まりを無視できなくなった表れだ。しかし、首相が脱原発に強い決意を示したことはなく、形だけの検証作業で終わったり、結論がまとまっても「やはりゼロにはできない」と釈明する際のアリバイに悪用される可能がある】 【だが、式典でのあいさつでは「脱原発依存の基本方針の下、中長期的に国民が安心できるエネルギー構成の確立を目指す」と述べたのみ。昨年の式典で、菅直人首相(当時)が「原発に依存しない社会を目指す」と宣言したのに比べれば、脱原発の意欲は明らかに低下した】 ▶ひろしま忌:「すべての原発 止まるまで…」 灯籠流し、平和願う──丸木美術館で/埼玉 【同館の小寺隆幸理事長は集いの中で、市民の募金協力で復活させた太陽光発電装置(13・5キロワット)が3日に発電を始め、館内の電力をまかなえることになったと報告。「すべての原発が止まるまで行動していきたい」と語った】 ▶社説:風力発電 潜在力もっと生かそう 石油ショックが起きた1970年代、それまで中東の石油に頼り、エネルギーの自給率は1.5%しかなかったデンマークは、これを機に再生可能エネルギーへとシフトし、風力発電等を積極的に取り入れ、2003年には自給率118%までにもなっているという話です。そして、2050年までには全発電量を再生可能エネルギーにするとまで言っています。それに比べ、昨日の本通信で報告しましたが、経産省は反省するどころか、1年もたったのでほとぼりも冷めたかと高をくくってウラン採掘に関する予算を再登場させ、代わりに再生エネルギー関係の予算を削るという暴挙に出ています。 ▶バイオマス:間伐材で大規模発電 岡山・真庭 【岡山県真庭市は、立木を間引く際にできる間伐材を燃料にした国内最大のバイオマス(生物由来の資源)発電所建設に乗り出す。官民共同で出資して発電会社を設立し、市内の一般世帯数を上回る2万戸を賄える電力(出力1万キロワット)を発電する】 トンチンカンな毎日新聞 二人の専門編集委員 何が専門なのか存じませんが、トンチンカンなことだけは確かです。毎日新聞のコラムをもって書いている人何人かいるのですが、まあいろいろなことを書いています。ノー天気にプロ野球のことばかり書いている人もいれば、八つ当たりする人、自分の知識をひけらかす人、潮田道夫ではないが、たしかに【「毎日新聞関係」は滅茶苦茶に、意見の幅が広いのが特徴です】。あまりのくだらなさに購読やめようかと思う時があります。抗議の電話をすれば、駄々っ子のような若い子が出て、駄々をこねるし、この会社の社員教育はどうなっているのか。教育(問題)の毎日新聞などといわれていたのはもうと~おい昔のことです。 ▶牧太郎の大きな声では言えないが…:「新聞はうそつき」の汚名 首相官邸前での抗議行動に、マスコミ批判のプラカードを多数見受けられることが気になるのでしょう。【確かに、今、新聞に「信頼」が問われている】と。そして、読売新聞と元巨人軍の球団代表の泥仕合、報道するに値するものかと問い、告発者と「取材源の秘匿」を俎上にあげます。 そして、【新聞はうそつき!とは思わない。反原発デモが「新聞はうそつき」と思うとすれば、我々が記者発表、リークをうのみにして報道しているからだろう】と「反省」を見せています。しかしです、ならば、そのことをこそ「大きな声で」こそ言わなければならないのです。読んでいて、「気分」はわかるのですが、で、何を言いたいのと。【「真実」を明かすためには取材協力者がいる。その取材源を最後まで秘匿する。覚悟がいる】ということをか。原子力マフィア内の「通報者」を守り、取材源を最後まで秘匿して、彼らのデタラメさを暴いてくれるのでしょうね、牧さん。期待していますよ。 ▶水説:原発ゼロが世論か=潮田道夫 【日本の選択としてそれがベストだと信じているならそれもよい。だが、「世論」が反原発に傾いているとみて、それにおもねっての「ゼロ」であるらしい。世論の尊重と迎合を混同している】 といっています。先日紹介した田勢と同様です。 どうも首相官邸前で「再稼働反対」と叫んでいる人たちが目障りのようです。あまつさえ、「すごい熱気」で、「世論の尊重と迎合を混同している」といいたいのでしょう。お金に換算してしか世の中をみれないようです。本号に掲載したドイツ通信をきちんと読んでいただきたいと思うのですが。 最後は開き直りです。【原発をゼロにできるならそれが一番よい。そのための判断の手がかりを政府資料に探し、国会中継も聞いてみる。だが、およそものの役に立つ数字や説明が、すぐ分かる形でそこにない。民意を聴取するための第一歩ができていない】と。 ならば、お主がそのための「手がかり」とやらを提示してみたらどうです。それこそマスコミとしての使命でもあるでしょうと思うのですが、自分の頭で考察することはないようです。 この人どういう人かと思ってネットで検索したら、彼のツイッター潮田道夫@mushiodaが出てきました。それによると、 【毎日新聞関係」は滅茶苦茶に、意見の幅が広いのが特徴です】 ですって。確かに。お主みたいな人も、斎藤某という“変な”八つ当たり的な人も飯を食わしてくれるところですから。原発と隕石の落下の確率とをいっしょに論じることができる頭脳をお持ちのようです。TPP賛成、開国派を自認している人でもあります。 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶敦賀原発内部資料、日本原電社員が飲食店で紛失 先月のことですが、酒飲んでなくしたそうです。こんなところを見ても、資格なしです。 ![]() 第19回 自然エネルギーとコミュニケーション 先日、地域のエネルギー転換にメディア側から関与している知人と話す機会がありました。ちょうど、通りがけに一人の男性が話しに加わって、細かなことが聞けました。この飛び入りの男性ですが、地域の自然エネルギー運動に最初から関わってきたメンバーで、日本の原発開発の経過と現状を話したら、「ドイツも同じようなものだよ」と、別に驚くことなく実にサラッと話すのです。電力会社が学校で原発推進のキャンペーンを張るのは日本に限らないと。ドイツでは、直接企業が学校に出向いてキャンペーンを行えないですから、ドサッと教材を先生方に渡していきます。それはコンパクトにでき上がった教材ですから使用するには便利で、先生方も別に悪気なく使えるようになっていたそうです。 他方で、それに対抗して新しい自然エネルギーを開発していくのは、一人の反乱から始まったといいます。電力会社の独占力が強いですから、いろんなところで壁にぶち当たっていきますが、志を同じくするメンバーを増やしていくことによって、地域からエネルギーの中央独占に反撃を開始し今日に至っています。「ここまで来るのに、30年以上かかったことになる」と。 しかし、ドイツ政府が脱原発を宣言しても、企業は独占権益を手放すわけはないですから、これからもまだまだ反発が予想されると、興奮するでもなく冷静に話してくれました。実際に政府決定以降、脱原発は遅々として進んでいません。「予想外に」(この言葉、ドイツでも!)経費が高くつくというのが理由ですが、彼の冷静さは、「俺達の流儀で事を進めていく」ことに自信を持っているからでしょう。こうした印象は、設備を見て回ってどこでも感じられたものです。 ポイントになるのは、「協同組合」の設立です。ドイツ語ではGenossenschaftの用語が使用されていますから、このように訳しても間違いはないでしょう。 全ドイツで現在、約700の協同組合が作られています。地域のエネルギー自給を目指す市民の組合といっていいでしょう。それに市の電力会社と市町村自治体の三者による共同事業が発足します。自治体の法定資本参加率は50%と決められ、他の半分がこうして住民の協同組合、地方銀行、あるいは地元企業の参加によって立ち上げられていきます。 ある町の例ですが、自治体50%、市の電力会社20%、協同組合30%となっています。この比率は、もちろん地域の条件によって異なってきますが、根本的な目的は、1.地域への密着性(地域アイデンティティ)と、2.投資金が、投資された地域に留まること、3.収益は地域と住民に還元されること、の三点を指摘できるでしょう。地域の経済復興と振興が、第一義に考慮されています。 この場合、市民参加と自己決定の原則が、すなわち、本当の民主主義が実現されないと運用は不可能になってきます。しかし、以上の構造をよくよく観察すれば、そればかりではないのが見て取れます。地域住民、そして自治体、企業三者間のコミュニケーションの重要性が見えてきます。ここで納得のいくまで議論がされていく軌跡が読み取れます。むしろそういうコミュニケーションの形成が、新しいエネルギー開発の推進力になっているように思われるのです。 ソーラーを設備しても、隣人からは変な目で見られたというのが、当初のありようだったそうです。それが広がっていくには、こうした人たちとの共同の取り組みが必要とされます。先の男性の言葉の強さも、このコミュニケーションに支えられたものであるように思えるのです。そういう意味でも、脱原発-新エネルギーへの転換は、決して単なる経済・技術問題ではないように思います。 技術面から考えれば、ソーラー、風力発電はテクノギー・イノヴェーションの一つですが、それに止まることなく、そこからの新しい社会的な地域(全国)コミュニケーションの可能性が考えられます。家庭と家庭、家庭と自治体を結ぶコミュニケーション手段の新しい開発も考えられる、というのはメディアの知人です。 日本に限らず資本主義国、そしてアラブの産油国、非産油国、旧共産主義諸国で経済の専制的な独占をガッチリ握っているのは、ガス、石油、そしてテレコムの企業です。そこに中央集権と汚職贈賄が発生しています。その一部は既に打倒されました。自然エネルギーは、こうした中央独占支配との闘争になりますが、それに変わりうる対抗的なコミュニケーションが形成されるかどうかが、未来社会のポイントになるように思われるのです。話を聞いていて、そんな印象を受けたものです。 「ここまで来るのに30年以上かかった」ドイツの経験を踏まえれば、日本での時間はまだまだ短縮されるのではないかと思います。 | ||