原発通信 285号2012/08/30発行
「潜水艦のようにつくってあるから大丈夫」……もうアニメの世界です。 国会は、野田内閣に対しての問責決議だなんだと賑やかなことです。自民党は何を血迷っているのか、民主、自民、公明の3党合意による消費増税法成立を批判している問責決議案に賛成するというのですから、【自民党の賛成方針に従わず、棄権した丸山和也参院議員は毎日新聞の取材に対し、自らの正当性を訴えた。「谷垣総裁が命懸けで進めた3党合意を批判する問責に賛成するのは自己矛盾だ。これは自民党に対する問責に等しい」】などと、内部から出るのも当然です。 そんなバカバカしい茶番劇を演じている間に、自分らの都合のいいようにつくり変えてしまえとばかり、カネ儲けに目がない原子力マフィアの連中は、近藤駿介を頭にした原子力委員会だけで「原子力政策大綱」の改定を画策しているとのことです。 ところで自然はそんな人間の欲のツッパリあいなどとは当然無縁に自然の法則に則って動いています。今朝はまた宮城沖で地震、震度5強を観測しています。そして、懸念されている「南海トラフ巨大地震」について、中央防災会議の作業部会と内閣府の検討会が、関東から九州の太平洋側が最大34メートルの津波と震度7の激しい揺れに襲われ、最悪のケースでは死者32万3000人、倒壊・焼失建物は238万6000棟に、1015平方キロが浸水すると発表しました。当然、浜岡原発には、現在建設中の防波壁を越える津波が来るといいます。水深も9メートルにもなるところが出るとか。しかし、潜水艦のようにつくってあるから大丈夫と。もうアニメの世界のようなことを言い出す始末です。 浜岡原発 毎日新聞ニュースより 一方、今日付の新聞に掲載されている週刊文春の広告、ひどいものです。 ちなみに週刊新潮は、原発記事の見出しはナシ。どうでもいい芸能ネタばかり。というより、この週刊誌の存在そのものがどうでもいいか。 ▶原子力政策大綱:原子力委だけでの策定を検討 【原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の改定を巡り、内閣府原子力委員会(近藤駿介委員長含め5人)が、審議途中で中断している有識者会議「新大綱策定会議」を再開させず、原子力委員だけで新大綱を取りまとめる方向で検討していることが分かった。委員の任期が満了する12月までに十分な審議時間が取れないことを主な理由にあげている】 近藤駿介ら原子力マフィアの連中は、カエルの顔に何とかではないですが、まったく世の中の動きに対して無自覚、無視というか、意に介しません。「最低」の連中です。まさに「マフィア」です。政界のゴタゴタに乗じてやってしまえということなのでしょう。断じて許してはなりません。 ▶被ばく年1ミリシーベルト以下に=ノーベル平和賞団体が勧告-東京 【1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止を求める医師や学者らの国際団体「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)が29日、東京都内で記者会見を開き、子どもや妊婦の被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に抑えることなどを日本政府に勧告した】 【さらに、「原子力ムラの腐敗した影響力が広がっている」と指摘。放射線の健康影響について、正確な情報の公開が妨げられているとの懸念を表明した】 まったく当然の指摘です。「年間1ミリシーベルト」というと、1日当たり2.739μ、時間当たりに直すと、0.114μ/h です。文科省が発表している数値(新聞等に掲載されている「大気中の環境放射線量」)と照らし合わせてください。 ちなみに毎日新聞掲載データ(27日付) 8月23日 福島0.97(このところようやく1μシーベルトを切りました) 茨城0.083、栃木0.081、群馬0.074と北関東は相変わらず「高い」です。 ▶中間貯蔵施設整備に重点=13年度予算要求案―環境省 【環境省は30日の民主党環境部門会議で、東京電力福島第1原発事故による放射能汚染への対応などを盛り込んだ、2013年度予算概算要求の重点施策案を示した。福島県の双葉、大熊、楢葉3町に受け入れを要請している、汚染土壌を保管する中間貯蔵施設の整備については、13年度中の実施設計や用地取得のための経費を計上する】 ▶規制委員会人事案問題「原子力事業者」の定義について核心をつくやりとり 設置法7条7項3号や政府ルールについて下記のやりとりをしました。 原子力規制委員会設置法では原子力事業者の委員長や委員への就任を禁じています。7/3付政府ガイドラインでは過去3年間、原子力事業者に所属していた者の委員長・委員就任を禁じています。これを踏まえたやりとりです。 当方:日本原子力研究開発機構(JAEA)は、原子力事業者なのか?政府見解を教えてほしい。 先方:細野大臣が答弁したのがすべてだ。 当方:細野大臣の答弁はよくわからなかった。再度おしえてほしい。どっちなのか? 先方:設置法7条7項3号には「原子力事業者」とは書いていない。(注1) 当方:設置法7条7条3号の、「原子力に係る製錬・加工・・・・」という文言に、日本原子力研究開発機構は、該当するのか、しないのか。 先方:該当する。 当方:それでは、7/3付の政府ルール(注2)がいう過去3年間の原子力事業者は就任が禁じられるという「原子力事業者」には該当するか? 先方:該当しない。ここで言っているのは、電力事業者の影響を排除するという趣旨である。 当方:それでは、設置法7条7項の原子力事業者と、政府ルールの原子力事業者はちがうのか? 先方:違う。そもそも設置法7条7項には、原子力事業者とは書いていない。 当方:そんな説明は通らない。 ▶政府 パブコメ分析を三菱総研に丸投げ、「原発ゼロ」を過小評価 【原発割合をめぐり国民の意見を聞くと称して今夏政府が行った「意見聴取会」「パブリックコメント」「討論型世論調査」の分析を、政府が三菱総研に丸投げしていたことが分かった。 超党派の国会議員で作る「原発ゼロの会」が28日、国会内で開いた「国民的議論に関する検証会合」で明らかになった ところが調査結果資料には有識者からの指摘として次のような指摘がなされている(有識者とは誰なのかも判然としない)── 【意見聴取会】・・・時間があり、関心が高い方がこられるということで、国民の意見の縮図とは異なる。 【パブリックコメント】・・・強い意見を持った人ほど、コメントを出すモチベーションをもっていると思われるので、分布が、ある一方に偏る可能性が高い。 【討論型世論調査】・・・明らかに時間とエネルギーのある関心の高い方が討論に参加するため、国民の縮図は歪むということがある一方、議論の理屈がよく展開される。】 そして、【驚いたことに27日、NHKのクローズアップ現代に出演した野田首相は、上記(「時間があり、関心が高い方がこられるということで、国民の意見の縮図とは異なる」)をそのままコメントしたのである。噴飯ものとしか言いようがない】 *27日、NHKのクローズアップ現代 野田総理に直撃 “決める政治”を問う ▶気象庁が会見“余震に注意を” 30日朝、宮城県で震度5強がありました。その件について気象庁です。 【「今回の地震は、去年3月の巨大地震の余震とみられる。巨大地震の余震は少なくなっているが、まだ続いている。マグニチュード6以上の地震が沿岸や内陸で発生すると最大震度5弱の地震が起きるおそれがある」と】 潜水艦のような構造につくってあるから大丈夫?! ▶南海トラフ地震被害想定:浜岡原発は21m→19mに修正 【3月の津波の推定で最大21メートルだった中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は、海岸の地形を精査した結果、2メートル低い19メートルとなった。だが建設中の防波壁(高さ18メートル)を上回る可能性がある状況は変わらない。中部電は高台への発電機の設置など津波対策工事を来年12月に終える予定で、「原子炉建屋を潜水艦のような構造にしている。壁を越える津波でも浸水を防ぎ、新たな電源設備などで原子炉を冷却することは可能だ」と説明する】 ▶南海トラフ巨大地震、被害想定 原発はどうなる? 【新たな想定によると、震源域の真上にある同原発には最大で高さ19メートルの津波が襲来。詳細な地形データを反映させることで、3月の暫定的な津波高より2メートル低下したが、敷地の大半は浸水。水深は3、4号機周辺で最大6メートル、5号機周辺では同9メートルに達する。 5号機の原子炉建屋で水密扉が耐えられるのは水深7メートルまでといい、稼働中に建屋内が浸水すると深刻な事態を招きかねない。 これに対し中部電は「現状では冷却機能は十分」とした上で、新想定に基づく安全性を年内に評価。来年12月の完了を目指して津波対策を実施中で、このうち高さ18メートルの防潮堤は年内に完成の予定。同社は津波対策の完了後に再稼働の是非を判断】 この記事を読んで、どれだけの人が納得すると思うのでしょうか。こういうことの胡散臭さを知ってしまったがゆえに再稼働反対・脱原発が大きなうねりになって起きているのです。 現在、せっせと造っている防波壁を超える津波が来ても、浸水しても大丈夫というのですから…。 つまり、中部電力がいうには「原子炉建屋を潜水艦のような構造」にしているから大丈夫と。しかし、産経新聞によると「5号機の原子炉建屋で水密扉が耐えられるのは水深7メートル」までで、「予測される水深は5号機周辺では同9メートルに達する」といい、深刻な事態を招きかねないと産経新聞ですら書いているのです。 しかし、答えは、決まって「大丈夫」。
▶<南海トラフ巨大地震>最悪で死者32万人…国が被害想定 【東海から九州沖を震源域とする「南海トラフ巨大地震」について、中央防災会議の作業部会と内閣府の検討会が29日、死傷者や浸水域など被害想定を発表した。関東から九州の太平洋側が最大34メートルの津波と震度7の激しい揺れに見舞われ、最悪のケースでは死者32万3000人、倒壊・焼失建物が238万6000棟に上り、1015平方キロが浸水する。内閣府は「発生確率は極めて低く、対策を取れば被害を減らせる」として冷静に受け止めるよう強調している】 ▶南海トラフ巨大地震の津波の動きその1 http://video.mainichi.co.jp/viewvideo.jspx?Movie=48227968/48227968peevee491543.flv ▶福島第一 安全装置に問題 早期排気考えず 専門家認める 【東京電力福島第一原発事故で、ベント(排気)配管の安全装置がベントの妨げとなり、炉心溶融の大きな原因をつくっていた問題で、装置の仕様を検討する際、事故早期の段階でベントすることを想定していなかったことが分かった】 【エネルギー総合工学研究所の内藤正則部長は「ベントが必要になった時にプラントがどんな状態になっているかなど過酷事故に対する検討が不十分だった。放射性物質を出さないことにこだわりすぎていた」と】 ▶保安院:もんじゅ・美浜、断層再調査を指示 【保安院は29日、日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)と関西電力美浜原発(同)について、原子炉建屋などの直下を通る断層(破砕帯)が活断層かどうか、現地で再調査するよう指示した。計画を9月5日までに提出させる】 ▶伊方原発:八幡浜市の安全確保覚書案、立ち入り調査の要請条項も盛る /愛媛 【八幡浜市は28日、四国電力伊方原発周辺の安全確保に関する覚書の案を、市議会の原子力発電安全防災対策特別委員会に報告した。また、大洲市も同日、同様の覚書の案を市議会の全員協議会に報告。西予市は29日に、市議会全員協議会に示す予定】 【原発から15キロ以内に市の全域が入る八幡浜市の覚書案では、原子炉など主要施設の設置や変更の場合は、市が説明を求めることができるとしている。また、原発で異常が発生した場合、県に対し立ち入り調査を要請することができる条項も盛り込んでいる】 ▶石川・志賀原発:再稼働反対を訴え県議ら、北陸電に申し入れ書/富山 【再稼働反対を伝えようと、県平和運動センター(富山市)のメンバーや県議ら9人が28日、同社本店(同)を訪れ、申し入れ書を手渡した】 ▶福島第1原発事故 県が3049万円賠償請求 焼却灰保管庫建設費で/長野 【県は、県所有の下水処理施設の汚泥焼却灰などから放射性物質が検出され、保管庫の建設費用などの損害が生じたとして、東電に3049万2119円の損害賠償を請求した。東電側は全額を支払う意向で、支払いは9月中旬ごろの見込み】 ところで、ゴルフ場が「除染」費用等を請求した際、東電は「無主物」だと言っていましたが、ならば、下水に含まれているものは「無主物」ではないと…。 ▶記者の目:関心薄れる大飯原発再稼働=山衛守 剛 この記事を書いた山衛守さん、きっと心優しい方なのだと思います。貧しさゆえに原発の甘い誘惑にからめ取られてしまった原発立地の住民にきちんと心寄せることができるのですから。 「現地を歩き、自身の脱原発の思いが浅はかだったと反省した」と謙虚です。「脱原発の道を選んでも、使用済み核燃料の保管や処理の問題などは残る」。しかし、です、そう思う山衛守さん、脱原発を思うことが浅はかではなく、ご自身が浅はかだったと知るべきです。使用済み核燃料の問題があるからこそ、多くの人々がこれ以上稼働させてはならないと立ち上がっているのです。 浜上町議に「原発が廃炉になっても、ここにはリスクしか残らない。原発に反対するなら、使用済み核燃料を引き取るくらいの覚悟はあるのか」と“諭され”、浅はかだったと思うのは勝手です。脱原発をいうなら核廃棄物や使用済み核燃料を引き取る覚悟がないなら言うなとでも? まるでどこかのお笑いタレント知事が調子に乗って「私を総理総裁にするご覚悟があるか」と詰め寄ったのと似ています。 「この問いに今、どれだけの人が答えられるだろうか」と山衛守さんは自問します。いい問いです。その「解」がないものに手をつけてしまったことに原発=原子力の最大の問題があるということです。もう少しお考えのうえ、執筆していただきたいものです。 浅田次郎さんは言っています。「過去と現在と未来、これを正しく見つめないといけないと思います。そこには人間の情緒的なものの入る隙間はないと思います」(報道ステーション8月27日放送 本通信284号参照) 【おおい町で取材する前、東京電力福島第1原発事故で故郷を追われた人たちの取材をした。いずれも原発事故で人生が大きく変わっていた。被害のあまりの大きさ、将来に続く影響の大きさを考えると、脱原発以外の選択肢はないと思った。 現地を歩き、自身の脱原発の思いが浅はかだったと反省した。脱原発の道を選んでも、使用済み核燃料の保管や処理の問題などは残る。浜上町議は「原発が廃炉になっても、ここにはリスクしか残らない。原発に反対するなら、使用済み核燃料を引き取るくらいの覚悟はあるのか」と話す。この問いに今、どれだけの人が答えられるだろうか】 【だが、私は脱原発の考えを捨てようとは思わない。ただ、都市と地方の地域間格差を放置し、金と引き換えにリスクを地方に押しつける国のやり方を再考し、原発なしでの地方経済の在り方を考えなければならない】 ▶福島第1原発事故 森林の除染拡大 環境省、福島県の要望受け入れ 【森林の除染をめぐり、環境省は29日、「人が住んでいる場所から20メートル程度」と「キャンプ場やシイタケ栽培施設など人が立ち入る場所」に限定していた対象範囲を拡大する考えを明らかにした。原発事故による汚染が激しく面積の7割を森林が占める福島県からの要望に応えた】 【森林除染推進の要望書を環境省に提出している内堀雅雄・福島県副知事は「除染しても1週間、2週間、1か月たつと線量が戻る。山から来る放射性物質による影響だと思う」と主張している】 なら、なぜ除染を要望するのでしょうか? この「除染事業」については、折に触れて報告しているとおりのことがあるのでしょう。「半永久的事業」に? 「伝説の事業」に? 昨日の通信にありますが、チェルノブイリでは森林の除染はあきらめています。向こうは国土は広いですから、しかし我が国は、他に行くところがありません…。 ▶株主代表訴訟:東電テレビ会議の録画保管で合意 【福島第1原発事故の東京電力新旧役員の責任を問う株主代表訴訟で、株主側と東電は29日、事故直後からの社内テレビ会議の全録画記録をコピーしたDVDなどを東京地裁で保管することで合意した。同地裁(垣内正裁判長)であった進行協議で決まった】 【株主側の河合弘之弁護団長は記者会見で「録画記録は国有財産。東電に抹消される恐れがなくなるのは大きな成果」と評価した】 【地裁で保管される記録にはこうした処理はないという】 ▶サンデー時評:高野孟さんの「脱・脱原発」批判 【「とにかく選挙が近い。反原発の世論が高まっているのに、少しでも原発を残すような目標を示したら、とても選挙は戦えない。本当にゼロにするかどうかでなく、ゼロへの姿勢を見せればいい。二〇三〇年は党がどうなっているかわからないことだし」】とは、ある民主党議員の言葉だそうです。まあ、そんなもんでしょう。 高野猛氏の「インサイダー」に書いた一文を引用しています。 【野田さんが再稼働に前のめりになり、脱原発方針がヘロヘロになるのは、経産省はじめ原子力利権共同体がふりまくいくつかのイデオロギー的呪縛から逃れられないためだ、と高野さんはみる】として、4つの呪縛をあげていると言います。要は、野田首相は地震、原発に関してはまったく何も考えてもいないということなのでしょう。 | ||