原発通信 289号2012/09/05発行
何が問われているのか。そして「何をなすべきか」 求める者、求めない者 放射能汚染物質最終処分場です。「混乱をさけるため」と言っていますが、どうみたって抜き打ち、そして有無をも言わせないという雰囲気です。それに「お願い」に行ったという横光副大臣、あの態度はないでしょう。しかし、世の中には「捨てる神あれば拾う神あり」ではありませんが、ウエルカムとばかりに署名運動をして、「早期実現」を願っているところもあるのです。あの「大熊町」です。この町は、「原子力」「原発」に関して、とても理解がある町です。ほとんどの自治体・地域が持ってきてもらっては困るといっているものを、わが町にと言ってくれているのです。そこで思うのです、なぜ、政府は「ありがとう、では大熊町につくらせていただきます」といわないのでしょうか。放射性物質に汚染されたものを“広く”まき散らすための方策だとの見方も出ている今日この頃ですが、やはり本当はそんなところにあるのかと思う事案のひとつです。 「主権者」と「権力」 一方、「原子力規制委員会」人事です。原子力ムラ、マフィアの一員である田中などの就任に対して反対の声があがるなか、野田首相は国会の承認などを得ずして任命するようです。しかも、のちに田中らは不適切として任命されずとも、それまでに田中らが「決めた」ことは「有効」となってしまうそうです。そうした、とんでもないことがやみくもに進んでいるのです。“よく考える”ことは重要です。しかし、それを上回る勢いで物事が進行し、決められようとしているのです。その時、「主権者」である私たちは何ができるのでしょうか。いや、何をしなければならないのでしょうか。「権力」とは何かを考えてみる必要があるでしょう。 「私たちは地球から核兵器と原発を排除しなければなりません」を確信に! 昨日の本通信で、原爆・核の問題についても触れました。大阪で先月8月31日に、下記の講演会が催されたとのことです。そこでは、「社会的責任を果たす医師団」(ノーベル平和賞受賞)代表であるパターソン医師が「私たちは地球から核兵器と原発を排除しなければなりません」と語っています。 繰り返します。3.11後の私たちは反・脱原発、そして反核という旗を高々と掲げて前へ進まなければならないのです。そして、必ずや勝ち取らなければならないのです。 政府のパブリックコメントの焼き直しが求められているのではないのです。 原発問題は、エネルギー比率の問題では断じてないということです。まやかしの多いエネルギー問題にからめ取られ、確信を見失ってはならないということです。3.11後フクシマが私たちに問うたのは、命の問題であり、経済も何も、人がいて(命があって)こそという、もっともラディカルな問いかけだったのだということを再度確認したいと思います。 「私たちは地球から核兵器と原発を排除しなければなりません」──パターソン氏の言葉は確信となったのです。 何事も「旗印は鮮明に」です! アメリカ×ドイツからの非核医師来日記念 未来をつくるフォーラム~原発事故避難者と私たち ▶「なぜ矢板」地元に困惑と反発 「指定廃棄物」処分場候補地で 【農業用水の水源であり、米への影候補地となった同市西部の塩田地区。市によると、7月末現在で約160世帯450人が暮らす。候補地の南東には農業用水として使われる塩田ダムがある。 塩田行政区長の小野崎俊行さん(63)は「地元には一切話がなかった。国のやり方は乱暴。下流にも影響が及ぶだろう」と憤りを隠さない。4日にも役員を集め、反対の陳情書提出に向けた話し合いを始めるという。 たかはら森林組合参事の小川修市さん(58)は「どこかにつくらないと処理できないのも分かるが…」と複雑な胸中を明かしつつ、「国が言う『安全』は信じられない。ダムは農業用水の水源であり、米への影響が心配」と懸念する】 一方、早くつくってくれと望む人たちもいます。(本通信既報246、281、285号) <中間貯蔵施設>大熊町の市民団体 早期建設求め要望書提出 ▶原子力規制委人事採決せず:「決められぬ政治」の典型 【政府が新たな安全規制の柱に据えた原子力規制委員会は、委員長と委員の計5人が国会の同意を得ないまま任命され、発足する見通しとなった。国民の代表から了承を得ない委員たちが「なし崩し」の形で、当面の安全規制を担う異例の事態となる】 【このままでは失墜した原子力行政への信頼回復には到底つながらず、国会の信頼も地に落ちるということを自覚すべきだ】とは、本記事を書いた笈田直樹さんです。 ▶原子力規制委人事:衆参両院の採決見送り、首相任命へ 【政府・民主党は4日、国会に提示した原子力規制委員会の委員長ら5人の人事案について、今国会会期中(会期末9月8日)の衆参両院での採決を見送り、閉会後に野田佳彦首相が任命する方針を固めた。来週以降、規制委の発足日を定めた政令を閣議決定し、委員長には田中俊一・高度情報科学技術研究機構顧問を任命する】 動かしながら、安全かどうかを考えるだと? ▶“原発に関わる人材確保を” 【日本商工会議所の岡村会頭は記者会見で、「『原発ゼロ』を言った時点で、日本の原子力発電は人材もゼロになる」と述べ、原子力発電に関わる人材を確保し、安全性の研究を続けるためにも原発を維持する必要があるという考えを示しました】 原発に関する問題があがるとき必ず付いてくるのが「安全性」という一語です。何かを研究する時、「安全性の研究」などというものがあるでしょうか。しかも、「安全性の研究を続けるためにも原発を維持する必要がある」となると、本末転倒、安全が確認されてもいないものを動かしているといっていることと同義です。こんなとんでもないもの走りながら考えればいいというものではありません。たとえば、ジェットコースターでもいいです。ジェットコースター、「安全かどうかわかりませんが、営業運転しながら考えていきましょう」などといったら、どこにそんなもの乗りたいというおめでたい人がいるかということです。 そういえば、“走りながら考えるのはフランス人”とどこかにありました。フランス、そういえば、原発大国です──と、ステレオタイプで物事は見ないほうがいいのですが、妙に当てはまってしまいました。さて、日本人は? ▶大飯原発3、4号機停止を要求 大阪府市が緊急声明 【大阪府と大阪市は4日、エネルギー戦略会議を開き、今夏の節電要請期間が7日に終わるのに先立ち、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の停止を政府と関電に求める緊急声明をまとめた。電力需給には余裕があり、多くの国民は原発ゼロを目指しているとして、節電期間終了後の停止を要請している】 【声明は「明確な長期的方針や十分な安全基準もなく原発を動かすのは、国民の意思をくんだものではない」と、大飯原発の再稼働に踏み切った野田政権を批判している】 ▶青森県、搬入拒否を検討…核燃サイクル撤回なら 【政府・民主党が将来の原子力発電の比率について「原発ゼロ社会を目指す」とする方向で調整に入ったことに絡み、青森県は、核燃料サイクル政策が撤回された場合、海外から返還される高レベル放射性廃棄物の県内搬入を拒否するなどの対応を検討し始めた】 【今年度も10月以降に英国から28本が返還予定……県幹部は、核燃料サイクル政策が中止されれば「核のゴミ」を県内に受け入れる必要はなく、ガラス固化体を運搬する船の接岸拒否のほか、各地の原発から既に運び込まれた使用済み核燃料の返還も検討するとしている。受け入れている使用済み核燃料は約3000トンで貯蔵プールはほぼ満杯に達している】 「やってはいけないこと」に手を付けてしまったそのことを、どうこれから処理していかなければならないのか。一方に「核燃サイクル」の名のもとに湯水のように注ぎ込まれた交付金漬けの実態があり、脱却もできていないという現実があるからこそ、こういうことも出てくるのです。 ▶「ウラン節約」ウソだった 再処理「原発維持のため」 電事連の原子力部長、【「再処理路線でなければ、使用済み核燃料の受け入れ先がなくなり、原発が止まってしまうことになる」と】 【日本の原子力政策の建前は、再処理で出たプルトニウムを使い、混合酸化物燃料(MOX燃料)にしてプルサーマル発電で再利用。それが「資源小国の日本にとってウラン資源の節約につながる」ということだ。その建前で十兆円もの巨費を投じてきたが、再利用の輪は完成しておらず、MOX燃料の利用計画も立てられなくなっている。 政府・与党は近く、将来の原発比率をどうするか結論を出す見通しだが、再処理を含め原発を維持しようとする動きは根強い。政府からは、原発ゼロにした場合、光熱費がアップするなど否定的な側面だけを宣伝する動きも強まっている。 だが、これまでの再処理の建前はうそで、原発を運転し続けるための方便ということがはっきりしたことで、再処理事業の存続意義はますます揺らぐことになりそうだ。 電事連は「(秘密勉強会の)出席者や発言者の確認をしていない」として、検証チームへの資料提出を拒否している】 ▶民主党の「脱原発」に騙されないために 【ある民主党議員の陣営が西武線の駅頭で有権者にチラシを配っていた。『日本は脱原発でいくべきだ!』と勇ましいタイトルが人目を引く。 ところが肝心の中味は逆だ。『とはいえ現在54基ある日本の原発再稼働を今後全て禁止するのは現実的ではありません。電力不足が日常茶飯事になれば…』とくる。明らかに原発維持派の論理である。羊頭狗肉も甚だしい。それでも見出しだけ読んだ人は「この政治家は脱原発派だ」と思うだろう】 ▶南相馬の”黒い物質”「測定器自身が死んでしまうというほどの猛烈な放射線を発生する物質」 小出裕章氏 8/28 INsideOUT ジャーナリスト志葉玲さんに聞く(内容書き出し) 福島第一原発周辺だけでなく、東京も含め、各地で10万から20万ベクレルも検出される「黒い物体」があちらこちらで発見されているということです。 小出さんは言われます、【セシウムという放射性物質は1万ベクレル以上あれば、放射線物質として厳重に管理をしなければいけないと法律で定められていますし、その場合も1kgあたり1万ベクレルを超えているという条件がまた付いています。ですから、両方満たした場合にはそれは厳密に放射性物質として、取り扱わなければいけないのです】 そんなものが、あちらこちらに… 【志葉:これがもう、本当にひどいもので、そもそも、政府の、環境省の除染の基準というものが、空間線量に依存しているんですね……結局、環境省の今の除染基準では、「除染しなくていい」という事になってしまっている。重大な欠陥があるわけです】 ▶北海道電力:青函トンネルに送電線敷設検討 【北海道電力が、本州の電力会社と電力を融通し合う送電線を青函トンネル(全長53キロ)に敷設する計画を検討していることが4日、分かった。脱原発依存や新エネルギー導入などエネルギー政策の転換が求められる中、電力不足を補う体制の構築を目指す】 双方が何かあったときのこと(何も原発での発電だけではありません)は考えていなかったということ。「危機管理」ゼロの連中の仕事。恐ろしやです。 ▶台湾:福島事故教訓に原発で訓練…緊急対応の予算増 【台湾行政院(内閣)原子力委員会と台湾電力は4日、北部・新北市石門区にある台湾電力第1原発で、災害による原発事故を想定した緊急対応訓練を行った。東京電力福島第1原発事故を参考にした。台湾では福島の事故を受け、原発事故訓練の規模を拡大し、原発の緊急対応費用は福島事故以前の2.3倍にあたる5400万台湾ドル(約1億4200万円)に増えた】 そして、その北東に、1億2千万人が住む日本列島があるのです。 ▶元スイス大使・村田先生からー4号機問題をめぐる東電の恐るべき不見識 (かごしま反原発連合有志より転載) 去る8月31日の4号機問題を考える議員と市民の院内集会で驚くべきことが判明しましたのでご報告いたします。あきれ果てました。放置できません。 第一部はアーニー・ガンダーセンさんの講演と特別スピーカーとしての私のコメントでした。 第2部は経産省よリエネ庁の課長、東電より課長クラス7名に対するヒヤリングが行われました。東電に対しては飛散防止剤の影響、鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて。そして保安院には事故処理のため企業任せを改め国が前面に出て迅速に対応する必要性、国際技術協力チームの必要性などにつきあらかじめ質問書を提出してありました。 第一部でガンダーセンさんは(1)最悪の事態が発生し燃料棒集合体が大気中で発火することが米国の研究所で確認されている(2)消火に水を使用することは水素爆発を起こす危険があるので許されない(3)水に代わり消火に効果があるとされる化学製品が存在する旨指摘しました。 第2部で同氏より東電は最悪の事態に備えてこのような化学製品の活用を考えているか質問しました。これに対して東電側からは繰り返し4号機は十分補強しているので崩壊はあり得ない、消防体制も強化していると応答し、水の使用が問題外であることを理解していないことをさらけ出しました。これに対し数名から最悪の事態を想定しないのはおかしいのではないか叱声があり、エネ庁課長に持ち帰り検討するようを求めたのに対し回答を避ける対応振りでした。 4号機問題という世界の注目を集めつつある重大問題に対し国と東電の実務責任者の理解の実態がこのように露呈し、ついにあきれ果てた場内は罵声、怒号に満ちて騒然となりました。ガンダーセンさんからは第一部で4号機の未使用の202体の燃料棒集合体及びすでに放射線の低くなっている600体を合わせて1533体の3分の2は今からでも取り出せる旨、そしてその作業が終わる1年半ぐらい後には残りの取り出しが可能となる旨の指摘がありました。私より第2部でこの点東電に質問しましたが、燃料棒取り出しが如何に急を要するものであることについての認識に全く欠ける回答振りでしたので苦情を伝えました。 現状は深刻です。マスコミは必ずこれを全国に伝えることになると思われます。 かねてからの懸案の中立評価チーム及び国際技術協力チームの必要性はこれで完全に明白になりました。この意見が無視されないことを祈るのみです。 村田光平 | ||