原発通信 292号2012/09/10発行
首相官邸前だけでなく霞が関一体で繰り広げられる 9月9日に閉幕したAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で、日本政府・野田政権はまさに二枚舌です。内には「原発依存からの脱却」などといっておきながら、外向けには原発推進、原発輸出です。どこまで行っても、いい加減、デタラメがついて回ります。 NHKスペシャルシリーズ東日本大震災「追跡 復興予算 19兆円」、ご覧になりましたか。何でもかんでも「震災」「防災」と付けてしまえとばかり。福島では過激派が浸透しているとかで公安調査庁が予算請求、車数台分+アルファーだそうです。沖縄では以前から行っている防潮堤工事、今は、「復興財源」から出ているとのこと。それを聞いた沖縄の人、「ちゃんと復興の方に使ってほしい」と。そして、被災地では、案の定、カネは回ってこない…。 http://www.nhk.or.jp/special/detail/2012/0909/index.html もう一つ、今月20日に同じくNHKで興味深い番組が放映されるとのことです。放射性物質による汚染状況を取り上げるようです。 さて、9.7行動に仲間とともに参加してきました。相変わらず万余の人々が、思い思いのプラカード、鳴り物を持って抗議行動に集まってきています。首相官邸前の抗議行動ののち、原子力規制委員会(人事)を取り扱っている規制庁準備室前行動(中央合同庁舎4号館前)にも参加してきました。なかなか抗議行動の時は「見て回る」ことができなかったのですが、7日は、ちょっと周辺を回ってみました。規制庁準備室がある中央合同庁舎4号館周辺、安全・保安院がある経産省前と、多くの人々が集まり、抗議の声を挙げていました。いっしょに行った仲間の一人が言っていましたが、毎週金曜は霞が関一帯は抗議行動に集まってきた人々によって、まさにオキュパイド(occupied;占拠された)状態です。これほどまでに国会・霞が関一帯で抗議行動が毎週のように展開されていることはなかったのではないでしょうか。よく60年安保闘争時と比べていわれることがありますが、まったく様相を異にしています。 毎日新聞に連合の古賀会長、記者に毎週金曜日にメーデー参加者より多い人々が抗議に集まってきているが、社会運動のきっかけになるかと問われると、もう思考停止です(下記)。「もう少し研究しないと、何とも言えない」などと、わかったふうな言い方ですが、たぶん、研究などしないでしょう。ナショナル(現パナソニック)出身だそうです。政界も、労働界も「明るいナショナル」にオキュパイされている感があります。しかし、先は決して「明るく」なんかありません。 翌日の同コーナーに加藤典洋さんが出ていました(下記)。 「消費税、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、国境問題……こうした国の『大問題』について、それが日本にとってではなく、自分の暮らしにとってどういう意味を持つかと考える」──そういう人々が登場してきているということをみないでは、現在直下進行している事態を把握できないのではないかと思います。 それにつけても、野田首相のやろうとしている、原子力規制委員会人事、めちゃくちゃというか、デタラメというか、もう少し、アタマ使った人事できないものかと思います。田中にしろ、更田、中村にしろ、原子力ムラの人間そのものです。そういう連中をよりによって据えるというのですから、どうかしているといわざるを得ません。中央合同庁舎4号館前での規制庁準備室前での人事案撤回行動には官邸前、国会正門前での抗議行動を終えた人々のほとんどが参加したのでしょうか、大勢集まり、私たちも抗議のコールをあげてきました。さらに坂を下っての経産省前でも抗議行動が展開されていました。 ▶特集ワイド:民主党を鍛え直す 古賀伸明・連合会長に聞く 「民主党を鍛え直して、また政権を取れるような政党にする」そうです。 人のことをいうのは簡単です。後退期にこそ、そのものの持つ正体が見えるといいますが、労働(組合)運動の退潮が言われて久しいです。民主党を鍛え直すより、労働(組合)運動を鍛え直す方が先だと思うのは私だけではないでしょう。連合の会長って、誰だっけというほど、どうでもいい存在になってしまっています。 【もうパイは大きくならず、経済的に厳しい時代になり、みんなが自分たちだけのことを考えて、わが企業、わが組織に閉じこもっていく。一つの目標でまとまることは難しい。これは労働運動の課題だ。そこでここ数年、労働運動の社会化を訴えている。メンバーシップだけに閉じこもって運動しても、もはや自分たちの利益さえ守れない。広がりをもった社会運動の中軸にしていかなければならない】 【非正規労働者が増えると、無年金の人が増え、社会保障の基盤を支える力が弱くなる。技術の伝承も困難になる。その意味では、単なる労働問題ではなく、社会問題だ】 なるほど、言うことだけは一人前です。しかし、「パイは大きくならず」、カネ、カネといってきたがもう駄目だと自覚したのでしょう。だから、たんまり持っている「電力総連」が様さまというわけですか…。 今、首相官邸、霞が関で抗議行動を行っている人々の動き、これこそ「広がりをもった社会運動」では? これを中軸に? しかし、連合が主導権を取れることはもうないでしょうし、待っていても来ることはないでしょう。 非正規労働者の増大? 労働問題ではなく、社会問題だ? そうかもしれません。しかし、この間、あなたたちは何をやってきたのかを自問自答し、答えを出さない限り、「信用」されることはないでしょう。 また、記者に、メーデー参加者を越える人々が首相官邸前に集まっている。「広がりをもった社会運動のきっかけになると考えるか」と問われ、古賀、【もう少し研究しないと、何とも言えない。組織された集団が政治勢力になるところから、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であるツイッターやフェイスブックなどを利用する人が増え、組織化されない個人の集まりという新しい回路ができたことは確かだ】と。 「新しい回路ができた」だけの問題ではないだろう。わかったようなこと言うなです。IT技術がもたらした現象などと捉えているようでは、もう、何も考えていないということです。ただ、去るのみです。いや、その前にきっちり「清算」していただきたいのですが。 ▶特集ワイド:原発の呪縛・日本よ! 文芸評論家・加藤典洋さん 古賀に比べ、加藤典洋さんの指摘のほうが「正しい」でしょう。 【脱原発を求める金曜日の首相官邸デモは続き、政府が募ったパブリックコメント(意見公募)では9割近くが「30年に原発ゼロ」を支持した。「大きく、静かに、何かが変わってきた」と加藤さん。何か、とは? 「例えば、もう誰も火星への人類到達など夢見ていません。いつの間にか有限性の感覚が生まれているのです。また、考え方や暮らし方のシンプルな人が増えてきました。消費税、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)、国境問題……こうした国の『大問題』について、それが日本にとってではなく、自分の暮らしにとってどういう意味を持つかと考える。新種のデモが良い例でしょう。日本人、市民としてではなく友人、家族で動いている。そしてまた、そう考える方が、日本だけでなく広く地球と世界へとつながっている。成長は成長なのですが、我々はより賢く『経済成長』から抜け出る方向に成長していると思います」 首相官邸デモに集まる人たちは、シンプルに考えるからこそ軽々と「政治行動」ができるのかもしれない】 そう、確かに【日本人、市民としてではなく友人、家族で動いている。そしてまた、そう考える方が、日本だけでなく広く地球と世界へとつながり】、【シンプルに考えるからこそ軽々と「政治行動」ができるのかもしれない】 ▶原子力委の「全量再処理」放棄案 経産省抵抗で断念 【政府の原子力委員会の首脳部が6月半ば、使用済み核燃料の「全量再処理」路線を放棄する案を作成したが、経済産業省や電力業界関係者の抵抗で断念したことが8日、分かった。使用済み燃料の扱いとして全量再処理の選択肢は残ったが、原子力政策を担う専門家組織内で全量再処理を排除する案が作られた事実は今後の議論に影響を与えそうだ】 【開示された電子メールによると、鈴木達治郎委員長代理は6月13~14日、近藤駿介委員長の意向を踏まえ、原子力委の決定の素案を作成。原発依存度の低下が見込まれることを考慮し、0%は全て直接処分、15%ないし20~25%は併存が「適当と判断する」として、全量再処理の選択肢を排除した。 原子力委は14日「打ち合わせ会」と呼ばれる非公開協議で素案を議論した。その後、鈴木氏は素案に「『全量再処理』を原則とする核燃料サイクル政策を変更することが望ましい」と記入した。 しかし18日、経産省資源エネルギー庁の森本英雄原子力立地・核燃料サイクル産業課長(当時)が、原子力委事務局に「懸念」を伝え「(20~25%の)選択肢に全量再処理を追記」するよう求め、再処理工場を抱える青森県の立場にも配慮すべきだと強調した。 また、電力会社から出向していた原子力委事務局職員は「ことさら政策を変更したと宣言する必要はないのでは」と素案の表現に反対した】 ▶福島1号機、水素濃度が時折上昇 核分裂時発生の希ガスも 【東京電力福島第1原発1号機の原子炉格納容器内で今年4月以降、窒素封入量やガス管理設備の排気流量を変更していないのに、核分裂反応で発生する希ガス「放射性クリプトン」と水素の濃度が時折、上昇する状態が続いている。東電は再臨界や爆発の恐れはないとしているが、原因を突き止めるための作業を始めた。 昨年3月に起きた原子炉建屋の水素爆発は、燃料集合体を覆う被覆管が水と反応して発生した水素が原因になった。クリプトンは再臨界を判断する指標の一つだ。格納容器内のこれまでの水素濃度は最高で0・5%程度で、可燃限界の4%には達していない】 気になる現象です。再臨界が起きているのでは? 注視しておく必要があります。 ▶再稼働なしでも3%超余裕 関電認める 【関西電力は七日、夏の電力供給力について、大飯原発(福井県おおい町)を再稼働しなかった場合でも、政府が「最低限必要」とした3%を超える余裕があったとの試算を明らかにした。同社は電力不足を訴えて再稼働を強行したが、夏の節電目標の最終日に、必要なかったことを自ら認める形になった。 大飯原発3、4号機を七月に稼働したことで、関電は電力消費が増える同月下旬から八月にかけて、一部の火力発電所を休ませていた。大飯原発がなくても、こうした待機火力を活用すれば供給力の余裕は最低でも3・2%確保でき、電力不足にはならなかったとの試算を示した。さらに関電が電気予報で「厳しい」と位置付ける5%以下になる日は、試算によると三日間だけだった】 ▶概算要求 もんじゅに依然78億円 【文部科学省は七日に発表した二〇一三年度予算の概算要求で、停止中で存廃に議論が続く高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の試験運転再開をにらみ、予算を確保するため使途を定めない「政策対応費」の名目で七十八億円を計上した。平野博文文科相は「もんじゅの研究成果を生かしていきたい」と研究継続に意欲をみせた。 国は原子力政策を見直しており、もんじゅの存廃は未定。政府が存続を決めれば、文科省は政策対応費のうち五十九億円を試験運転費用に充て、残りを高速増殖炉の実用化研究などにまわす。 一方、廃止の場合は、廃炉計画の作成や核燃料の抜き取りの準備に使うとした。ほかに維持管理費として前年並みの百七十四億円を計上した。 会見で平野氏は、使用済み核燃料対策にもんじゅの技術が生かせると指摘した】 ▶東電、汚染水タンクを増設へ 70万トンに積み増し 【東京電力は7日、福島第1原発で増え続ける汚染水対策として、タンクの容量を現在の約22万トンから、約70万トンに増やす計画を国に報告した。これまで約39万トンに増やす予定だったが、汚染水の増加に対応できないため変更する。 計画では第1原発敷地内の南側にある森林を伐採。必要があれば地盤強化工事をした上で、14年夏ごろまでに約70万トンまで容量を増やす】 3.11当初の福島第一原発周辺の写真と、現在の写真を見比べてみてください。周囲の森がどんどん伐採され、タンクが林立しているのがわかります。写真はネット上で、結構拾えます。しかし、この汚染水、どうすればいいのでしょうか? そのうち、低レベルなので問題ないなどといって太平洋に「放流」しかねません。 「自然災害では不確実な予測でも対策に生かすのに、原子力災害で完璧な情報を求めるのは理解できない」 ▶SPEEDI開発者が苦言 放射線影響学会、仙台で開幕 【緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の開発に携わった日本原子力研究開発機構の茅野政道氏は「文部科学省や原子力安全・保安院が、受け取った予測計算を有効に使えなかった」と振り返った。……原子炉などのデータが得られず精度が低かったとする政府の主張には「自然災害では不確実な予測でも対策に生かすのに、原子力災害で完璧な情報を求めるのは理解できない」と苦言を呈した。 福島県立医大の大津留晶教授は「原発事故に関連した疾患が発症するまでには4、5年はかかるとみられる。その前に健康に関するデータを集めることが重要だ」と指摘。「低線量被ばくは安全だとの考えを押し付けてはいけないし、いたずらに危険をあおってもいけない。心身両面で県民への多角的な支援が求められている」と述べた】 ▶米兵用に線量確認システム 毎日新聞2012年9月6日夕刊総合面(共同) 【米国防総省は5日、東日本大震災での米軍による救援活動「トモダチ作戦」に参加した兵士やその家族らを対象に、東京電力福島第1原発事故の影響で浴びたとみられる放射線量を確認できる登録システムを構築すると発表した。対象は、震災発生翌日の11年3月12日から同作戦を終えた時期に当たる5月11日までの約60日間に在日米軍墓地などにいた兵士や家族、関係者ら約7万人。同作戦に参加した兵士らの不安解消に役立てる狙いとみられる。ただ同省は当時の線量は健康への影響が懸念されるレベルではなかったと結論付けている】 こういうところは、米軍素早いです。 ▶脱原発基本法案を提出 全国ネットが作成 【中小野党による超党派の議員グループは七日、将来の原発ゼロを目指す「脱原発基本法案」を衆議院に共同提出した。今国会は八日に会期末を迎え、継続審議となる見通し。 ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが代表世話人を務める市民グループ「脱原発法制定全国ネットワーク」が原案を作成。議員グループが微修正を加え、提出した。基本法案は「二〇二五年三月十一日までのできるだけ早い時期に実現させる」とした】 ▶独脱原発「住民が政策転換を迫った」〈限界にっぽん〉 朝日新聞2012年9月3日付 ドイツではどのようにして脱原発を成し遂げ、自然再生エネルギーへ転換していったのかをレポート。 ドイツでも電力会社による妨害は執拗だったといいます。政府が買い取り制度で電力を買い取ることを電力会社に義務付けてもなお、送電線網への接続をなんやかんや理屈をつけてさせないなど、露骨な妨害があったといいます。 そんななか、こんな会社には任せられないと自分たちで自然エネルギー会社を立ち上げ経営を軌道に乗せていったといいます。ドイツの自然エネ発電は、住民グループや集落単位の事業所が多いのが特徴といいます。こうした地道な運動が既得権に守られている電力会社、族議員、関係省庁の壁を切り崩していったといいます。「集落単位の事業所が多い」とのこと、これは、日本だけから見ているとわかりにくいかもしれませんが、一度でもドイツ、ヨーロッパに行かれた方はおわかりかと思うのですが、町、村自体がひとまとまりとしてあるような感じで、日本のように、どこからどこまでが一つの集落なのかわからないという社会構成とは違うということがあるのではないかと思います。 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶全面マスク着け作業 停電で測定器使えず 【一~七日の一週間、東京電力福島第一原発では五日に厚生棟など一部の施設で停電があり、空気中の放射性物質の濃度を測る測定器が使えなくなった。 この影響で、作業員は一時、放射性物質を防ぐ全面マスクを着けて作業した。停電の原因は分電盤の故障とみられる。原子炉への注水や汚染水の処理に影響はなかった】 ▶福島第1原発事故 指定廃棄物最終処分場、福田知事が矢板選定に理解示す 地元の反対にも配慮/栃木 知事は「理解」を示したという話です。 | ||