原発通信 304号2012/09/25発行
「愛国心」はならず者の最後の拠りどころ 本当は、こんなくだらない茶番劇というか、三文小説ならぬ三文劇のことを書きたくもないのですが、そうも言っていられません。ひょっとしたら、来年あたり、日本の舵取りをするかもしれない人の話なのですから。 自民党総裁選、「強い日本」にするのだと、勇ましいです。とりわけエキセントリックに声を挙げているのは、石原都知事閣下の息子、伸晃です。こぶしを挙げ、言葉の頭にアクセントを置き、吠えるように喋る姿、いつかどこかで見たかの感があります。そう、なんとなくヒトラーに似ているのです。そう言ったら、持ち上げすぎか。「私は少林寺拳法をやっていたので、目上の人に対する礼儀は心得ている」などといっていましたが、「謀反」を起こし、「下克上」を起こしたのは、どなたかと。このように自分に都合のいいように言うのは、親譲り、子は親の背中を見て育つと申しますから。マスコミ情報では、あまり人気ないとか。そうでしょうね…。 石破茂は、軍事オタクの異名をもつ、戦争プラモデル収集マニア。ちょっと上目づかいで話すあの感じ、怖いものを感じます。原発などより、今は尖閣諸島、竹島をめぐっての国境問題で頭がいっぱいでしょう。夜な夜な、机のうえでプラモデルを持ち出して妄想の世界で遊ぶのは構いませんが、実社会、実世界でそれを行われてはたまりません。しかし、やりかねない雰囲気を彼らは持っています。危険です。 「愛国心」はならず者の最後の拠りどころ との先人の言葉もあります。 下記は、自民党総裁候補の原発に対するスタンスです。 毎日新聞夕刊コラム『憂楽帳:私たちは変わったか』で「海外に向かう者への共感、ひいては他人に対する想像力がかすかに深まったように感じる。私たちはあの日を境に変わったのではないか」と、藤原章生記者は書いています(下記)。また、同様に「禁」原発、即時廃炉をいう平智之衆院議員(下記)。そうありたいし、そう願いたいです。そう、崎山比早子さんが言うように「希望は持つもの」と(本通信297号)。 ▶自民総裁選:5候補徹底比較…原発・エネルギー 【安倍氏と町村信孝元官房長官、石原伸晃幹事長は、経済安定やエネルギー安全保障などの観点から、安全基準をクリアした原発の再稼働を明言。特に町村氏の前向きな姿勢が目立っている】 【一方、世論の動向を意識してか、石破氏は公約で「規制委の安全性の判断に従いつつ見極める」とするにとどめ】 【ただ5氏とも内容は抽象的で、技術開発などの展望が見えないのは民主党と同様だ。規制委の人事については、石原氏が「民主党内に賛否がある」と批判した程度。自民党には容認論が強く、各候補から田中俊一委員長らの差し替えを求める声は出ていない】 ▶<原子力規制委>ストレステスト「審査しない」…田中委員長 【原子力規制委員会の田中俊一委員長は24日、毎日新聞のインタビューに応じ、政府が原発再稼働の前提としてきた電力会社による安全評価(ストレステスト)について「審査しない」と述べ、判断の根拠としない方針を明らかにした。既に30基の1次評価が提出されているが、手続きは白紙に戻ることになる。】 【田中氏は、来年7月中旬までに新たな安全基準を法制化し、それに基づいて再稼働の可否を判断する意向を強調。ストレステストについては「(地震と津波に限定した)想定がこれでいいのかは議論がある」と疑問を呈した上で「参考資料であって、こだわることはない」と述べた。】 【さらに「防災体制がきちんとしていないと、国民の納得はいただけない」と話し、避難計画などの整備を重視する考えを示した】 【一方、大飯原発など複数の原発敷地内の断層に活断層の可能性が指摘されている問題については、同日の海外メディア向け記者会見で「新たな調査で活断層の影響があると判断されれば、稼働を認めず、廃炉を求める」と踏み込んだ】 ストレステスト、審査しないといいます。また、参考資料とも。何かウルトラCでも考えているのでしょうか。しかし、原発、動かすかどうかは政府、政治の問題だと。野田は野田で、規制委員会だと。要は、「あんたのせいで、こうなったのだ」といわれたくはないということ、これは、福島第一原発を見てしまった後なら、“普通の人”ならそう判断するでしょう。または、……誰も責任取らなくていい、奥の手はないかと考慮中だということなのでしょうか。 ▶「禁」原発:「電力は足りた。即時廃炉を」──平智之衆院議員インタビュー 昨日の本通信303号で原子力マフィアのエージェント澤昭裕の世迷言「経済に打撃 国益を損なう」という一文と、それをパロった一文を掲載しました。その際、事故処理の費用、賠償金等のこと入れませんでしたが、それをもいれたら、とてもとてもの額になり、到底コストが見合うなどといえません。その話に根拠を与えるものが、この平智之衆議院議員のインタビュー記事です。平さん、大学で材料工学を学んだそうです。材料工学からも原発の危険性を論じています。 国会版事業仕分けで、核廃棄物の処理について「これは質問ではありません。(この計画は)とても正気の沙汰とは思えない」と意見し、同席していた自民党の河野太郎衆院議員が「全面的に賛成」と言ってくれたそうです。 そして、はっきりといいます。 【政府が選択肢として提示している「原発ゼロ」については気をつけた方がいいでしょう。2030年代に原発の利用を0にするということで、それまでのことは何も言っていません。それまでに政権が変わって、原発が再び容認される可能性は十分あります。そもそも民主党は政権交代直後の2010年夏に原発依存度を50%に倍増するエネルギー基本計画を閣議決定していますし、自民党はもともと1955年の立党宣言で「原子科学の発達とともに、全人類の歴史は日々新しい頁(ページ)を書き加えつつある」として、原子力基本法を制定し原子力推進政策を進めてきました。私は、浜岡原発でさえ廃炉にできないかもしれないと思っています。ですから私は、この際エネルギー獲得手段としての原発をはっきりと法律で禁止し、現在の原発は即時に廃炉にしようと、原子力廃止基本法という私案をつくりました。核廃棄物の再処理もしません。電力会社は原発の部門を切り離し、清算事業団のような形で原発を終息させます】 このくらいの決意で、原発に対して立ち向かわないと、将来に禍根を残すことになります。平さんが、このインタビューで紹介した官邸前で抗議を行っている方の声、多くの人が持っていると思います。 【ある方が「私は、昨年の3月11日を機に悔い改めました」と話してくれたことでした。「それまでは、まあいいかと思っていましたが、やはり未来に向かって言わなくては」と】 「電力需給で『禁原発』はすでに可能」(2012年9月10日 20:45)と題する平さんのブログです。 *平智之 今年6月18日、政府の大飯原発3・4号機再稼働決定に反対し、民主党を離党。1959年生まれ、京都1区 ▶原発再稼働と電力会社の経営 河野太郎ブログ ゴマメの歯ぎしり2012年09月21日 17:51 【「原子力発電施設解体引当金」という制度がある。平成元年に、運転を終了した原発は廃炉にする、ということが決まった。(それまでは決まっていなかった!)それにより、各電力会社は、原発の廃炉に必要な金額を毎年、年度末に一括して引き当てをすることが決められた。ただし、毎年の引当金の金額は、それぞれの原子炉が運転を開始してから運転を終了するまでの間に発電するであろう総発電量に対して、それぞれの年に発電した電力量に応じて積み立てる。 想定総発電電力量=出力x40年x365日x24時間x設備利用率 ただし、計算上設備利用率は76%とされる。(現実の稼働率はもっと低い) 引当額=総見積額x(累積発電電力量/想定総発電電力量)-前年度残高 つまり、稼働率が低い原発は、本来引き当てるべき引当金よりも、年度末に引き当てる金額のほうが少なくなる。だから、問題が大きい原発ほど、40年を超えて稼働させないと、引き当てが過小になり、廃炉にするときに損失を計上しなければならなくなる。 ほとんどの原発は、稼働率76%を下回っているので、40年で廃炉にすると、引き当てが足らなくなり、電力会社は損失を出すことになる。だから40年での廃炉を電力会社はむやみといやがる】 そのほか、各電力会社の引当金、所有している核燃料の簿価などの数字が記載されています。参考になる資料です。 ▶いかがなものか 「原発」争点にならない自民党総裁選 ●福島からあまりに遠い──作家・僧侶、玄侑宗久さん 【ほとんどの候補者は福島に足を運んでこなかった。民主党の閣僚は、少なくとも、福島を何度か訪れることで原発事故がどういう事態を招いたのかを理解し、その実感を福島の人々と共有しようとした。自民党にはそれもない】 【全国54基のうち39基の所在地の郵便番号は「9」か「0」から始まる。つまり「1」で始まるこの国の中心・東京から最も遠い場所に、ほとんどの原発がある。原発を地方に押しつけたこの国の構造そのものに由来する根深い問題です】 【民主党は「2030年代に原発稼働ゼロ」の閣議決定を朝令暮改で見送った。方丈記の「古きは廃れ、新しきは成らず」という言葉のようです。「古き」は民主党、「新しき」は自民党。ゼロを口にはするが言葉があまりに軽い民主党と、そもそも言葉にしない自民党。これでは脱原発は「成らず」です】 【「(事故が)もう一発来ないと、この国は分からないのか」という思いです】 ●「ゼロ」の民意、見ていない──科学史家・吉岡斉さん 【自民党が原発維持から転換できない背景には、経済産業省の巻き返しがあると思う。経産省は福島第1原発事故後も「即時・無条件・全面再稼働」の姿勢を譲らなかった。既得権益を守りたいという両者の思惑が合致し、硬直した対応につながっている】 【民主党政権がトーンダウンして「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すとした「革新的エネルギー・環境戦略」を閣議決定しなかったのも、やはり経産省の影響があるだろう。しかし、この戦略は政府が意見聴取会を開き、パブリックコメントを募るなどして民意を反映させる「デュープロセス」(適正手続き)を経て決めた方針だ。立法化が実現していないとはいえ、民主党から自民党に政権が移っても簡単に変えられるものではないはずだ】 【自民党は次期衆院選の政権公約案で「10年以内に新たなエネルギーの安定供給構造を構築する」とし、総裁選の候補者たちもそう主張しているようだが、国民はもう十分に考えた。なぜまた10年も考えなければならないのか。 浜岡原発を停止させたのは首相官邸の力だった。官僚が自ら体質を変えられないなら政治の力に期待したいのだが】 ●過去の反省ない証拠だ──衆院議員・亀井静香さん 【総裁選でどの候補からも脱原発についての深い言及がないのは、口では謝罪をしても、これまで自民党が進めてきた原発推進政策への反省がない表れだ】 【私自身にも責任はある。自民党時代には政調会長を務め、また派閥を率いてきた。にもかかわらず、地震国の日本に設置されている原発の危険性を直視しようとしなかった。これについては、申し訳ないと思っている】 【自民党は結局、経済至上主義から抜け出せておらず、それは野党になっても何も変わっていない。そのことに全く気付いていないように見える】 玄侑宗久さんは、福島の人です。東京から遠い福島、そこに足を運ばない自民党総裁候補らを喝破し、地方を踏み台にして繁栄を築いたこの国を問題にします。 吉岡斉さんは、経産省など原子力ムラの既得権益を問題にし、新エネルギー戦略は「デュープロセス」(適正手続き)を経て決めた方針であり、立法化が実現していないとはいえ、民主党から自民党に政権が移っても簡単に変えられるものではないといいます。しかし、吉岡さん、人が良すぎます。そう思いたいのですが、そんなものいつでも反故にできるのです。現に自民党、誰がなってもそうするつもりでしょう。 亀井静香さん、警察官僚あがりなので好きではないのですが、死刑廃止論者でもあるのです。自民党を離れたからだといえばそれまでですが、謙虚です。そこに期待したいと思います。先だっての国会包囲行動では亀井さん、私の目の前を通ったので、ぶれないでがんばってくださいと声をかけておきました。 ▶どうか、核廃棄物処理問題に活用できますように?! 素晴らしい! さすが技術の日立です! “Inspire the Next”──そう、次の時代などと小さいことはいわず、10万年後まで射程に入れ、お考えてください。 高濃度放射性物質、使用済み核燃料の処分には10万年などという気の遠くなる時間が必要とのこと。どうか、その処分した年月日、方法、それまでは決して開けてはならぬなど詳しく後世の人に伝わるようデータを残してください。ただし、その時まで、それが「読める」よう、言語を伝える方法も考えておいてください。今、私たちには大昔の壁画やピラミッドがなぜどのようにつくられたのかさえ、定かではないのですから。その点も考慮して「保存」をお願いしたい。 それが、日立製作所、米GE と一緒になって、原発で大儲けし、これからも原発を世界に売っていこうとしている企業としての最低限の責任です。でも、その前に原発を全世界からなくすことの方が先決ですが。まして、これを売り込んでまた儲けようなどという不埒な考えは待たないでください。でも、無理かな? 【日立製作所は24日、半永久的にデジタルデータの保存が可能な技術を開発したと発表した。フラスコなどに使われる石英ガラスにコンパクトディスク(CD)並みのデータを3億年以上保存できる。経年劣化なく保存が可能なため、歴史的に重要な文化遺産や公文書など後世に残したいデータの長期保存用に売り込みたい考えだ】 ▶3・11後のサイエンス:福島ゲノム解析の疑問=青野由利 【低線量被ばくの影響を調べるため福島県で遺伝子解析を行う。そんな計画を細野豪志・環境相が明らかにしたのは先月末のことだ。環境省の概算要求によると、対象は5年間で両親と新生児500組(1500人)。血液やさい帯血を採取して全遺伝情報(ゲノム)を解析し、精子や卵子の被ばくによる新しい変異が子どもで増えていないかを確かめる。来年度の要求額は11億9200万円。目的は「福島県で安心して子どもを産み育てることができる環境を実現すること」だ。 これを聞いて、まず頭に浮かんだのは、この方法で被ばく影響の有無が明らかにできるのかという疑問だ。誰でも新しい変異を持って生まれるので、被ばくの影響を見るには被ばくを受けていない「基準集団」と変異率の違いを比べる必要がある。この基準データをどう集めるか。デコード社が明らかにしたように父親の年齢の影響も考慮しなくてはならないから、かなりの人数がいる。環境省は、被ばく線量に応じた違いを見るというが、あいまいな推定値しかないのに、微妙な差を検出できるのか。「変異より解析装置の読み間違いの方が大きく、検出は無理」と見る専門家もいる】 山下俊一ら、アンゼン教信者がうごめいています。 ▶Cafe:確率で語れない技術 杉万(すぎまん)俊夫・京都大教授(61)、【被爆国にもかかわらず、国が原発を「核の平和利用」として推進できたことに、杉万さんは「人々の科学技術に対する素朴な夢と信頼が背景にあった」と分析する。事故で信頼が打ち砕かれた今、原発の存続をどう考えるべきか。「発生確率が非常に小さくても、社会が許容できないリスクがある。そういう技術を、確率の高低では論じられない」】と。 ▶原発ゼロ」の撤回要請=枝野経産相に吉田福井県議会議長 【福井県の吉田伊三郎県議会議長は24日、経済産業省を訪れ、2030年代の「原発稼働ゼロ」を掲げた新たなエネルギー戦略の撤回を枝野幸男経産相に要請】 もう、どうかしています福井県。今度は県議会議長ですか…。 ▶脱原発に寄せる各地の人々の思いを、伝え続けさせて下さい 【官邸前に集う人々の数は、夏休みの頃に比べると減っています。政府関係者がそれを見て、ほくそ笑んだとしたら大間違いです。官邸前が減った分、全国各地の脱原発デモ集会が盛んになっているのです。バスを仕立てて官邸前に駆けつけていたグループ、飛行機で遠路はるばる来ていた夫婦……、彼らは今、地元で「再稼働反対、原発廃炉」のシュプレヒコールをあげているのです。その数は確認できるだけでも全国70ヵ所余りにのぼります。 ところがマスコミはそれを報道しようとしません。「孫子の将来まで危うくする原発を動かしてはならない」という国民の叫びは、ないものとされています】 ▶憂楽帳:私たちは変わったか 【この春4年ぶりに日本に戻り、以前とは何かが違うと直感した。主観に過ぎないとも疑い、いまは変化の兆しを探っている。官邸デモに加え、限界思想や脱成長を語る論者が増えたのもあるが、ジャーナリスト、山本美香さんの死への反応も一つの兆しだと思う。 2003年から04年にかけ、イラクで誘拐、殺された日本人に対し、当時の首相を筆頭に世間は「自己責任」という言葉を浴びせた。他国では考えられない厳しさだった。報道とボランティアという違いもあるだろうが、海外に向かう者への共感、ひいては他人に対する想像力がかすかに深まったように感じる。私たちはあの日を境に変わったのではないか】と藤原章生記者。 あの市場原理主義者どもが跋扈した2000年代前半、何でもかんでも「自己責任」といわれ萎縮していきました。人に思いを寄せていたら、自分の立つ瀬がないとばかりに。他人の頭の上のハエを追う前に自分だとばかりに。共感するということ自体が、敗北者のたわごとかのような空気が確かにあり、重く淀んでいました。「他人に対する想像力がかすかに深まったように感じる。私たちはあの日を境に変わったのではないか」と、記者のように希望を繋げたいです。 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶落下の鉄骨、プールの底か=燃料に損傷見当たらず―福島第1原発3号機・東電 【東電は24日、水中カメラでプール内を調査し、底部に鉄骨が落ちているのを発見した。落下した鉄骨と断定できないため、25日も調査を続ける。東電によると、落下したのは「H鋼」と呼ばれる棒状の鉄骨で、長さ約7メートル、重さ約470キロ】 「落下した鉄骨と断定できないため」──、そう、3号機は火柱が上がるほどの水素爆発を起こしました。 ▶福島第一原子力発電所3号機 使用済燃料プール瓦礫撤去作業 東電が公開している写真です。 ▶淡水化装置で水漏れ 下請け 健康診断費用天引き 【十五~二十一日の一週間、東京電力福島第一原発では、高濃度汚染水を処理した後の水を淡水化する装置の配管接続部分から、処理水二百五十リットルが漏れた。十五日朝、パトロール中の東電社員が発見し、装置を止めて約一時間半後に漏えいが止まった。建屋外への漏えいはなかったという】 【また、下請け会社が作業員の賃金から、会社が負担すべき健康診断の費用を天引きしていたことが発覚。東電と元請け企業の東京エネシスがいわき労働基準監督署から指導を受けた】 | ||