原発通信 305号2012/09/26発行
「強い日本」「日本を取り戻す」──気分先行型政治の危険性 石破か、安倍だろうとは思っていました。石破では選挙の顔にならないだろうから…と思っていたら、案の定。安倍晋三「やり残したことがある」とかで再登板です。 それにしても「強い日本」とは、どんな国なのでしょうか。そして、「日本を取り戻す」とか。誰から、どうやって…。そもそも、いつ、誰に、なぜ、どのように“盗まれた”のですか? そうした意味不明の「気分先行」型政治は、小泉、石原慎太郎、橋下、いやその前には、九州のお笑いタレント、パンパカパーンと大阪でもありました。 のちに、選挙で俺を選んだのだからと、地獄まで道連れにされてはたまりません。 ロシア赤軍にベルリンが包囲されたとき、市民をベルリン市内から脱出させようとの進言に対しヒトラーは「国民の自業自得」だと言い放ったそうです。「(ドイツ)国民が地獄を味わうのは当然の義務。われわれを(選挙で合法的に)選んだのは国民なのだから、最後まで付き合ってもらうさ」(映画「ヒトラー最期の12日間」)。そう、私たちは似たようなことを近年すでに経験しています。「規制緩和」「民活」「自由市場の拡大」「努力したものが報われる社会」「自己決定」など聞こえのいい言葉に酔い、行きついたところは……。 原発問題に関しては、安倍晋三の妻、昭恵さんの存在が影を落としているという情報もあります。彼女は先の山口県知事選に立候補した飯田哲也氏と懇意だそうです。祝島へも飯田氏の案内で、昨年行ったとのこと。この夏、週刊誌に「夫を(脱原発で)説得します」などとも語っていました。彼女のブログには、安倍晋三と飯田氏のツーショットが掲載されています。 ▶<自民総裁選>安倍晋三元首相が新総裁に 【自民党総裁選は26日、投開票され、国会議員によって行われた決選投票で安倍晋三元首相(58)が108票を獲得して89票だった石破茂前政調会長(55)を破り、自民党総裁への就任が決まった】 *こんな「安倍晋三自民党総裁当選祝い」頁がありました。笑えます。 ▶枝野経産相:核燃サイクル「半世紀の事実、動かせぬ」 【同計画で原発ゼロの達成までの具体的な道筋を示すかについて、枝野氏は「過去の基本計画を見ても(原発や火力発電などの)電源別の構成比率を必ずしも示していない」と指摘。30年代までの原発依存率の段階的な引き下げ目標を明記しない可能性を示唆】 【原発ゼロを目指すなら不要なはずの核燃料サイクルを当面継続することに関しては「半世紀にわたり(原発利用で)積み重ねられた事実は動かせない。(六ケ所村を使用済み核燃料の最終処分地にしないという)青森県との約束をたがえてはいけない」と強調】 【原発ゼロ実現に向けて電力会社に原発の新規着工を事実上認めない姿勢を打ち出したことに絡んでは「政府の(原発)政策が変わったため、立地自治体が交付金をまったく受け取れなくなるのは適切ではない」と説明】 【枝野氏は「どこかの国の意向で結論を変えたものではない」】 一問一答 【枝野氏 (これまでの原発の利用で)使用済み核燃料がすでに存在する事実は変えられない。また(再処理工場など核燃料サイクル施設を抱える青森県六ケ所村など)自治体との約束や、(軍事転用が可能なプルトニウムの管理など)国際社会との関係もある。(原発ゼロを目指しても)すぐに変えられないことの中に、矛盾に映る部分があるのはやむを得ない。矛盾を解決できるようにあらゆる政策努力を傾ける。】 【枝野氏 (電力会社を監督する立場として)法的強制力を持つ手段がないわけではないが、まずは電力事業者が政府の新戦略を踏まえて対応をしてもらうことが重要。また、これまで国の電源対策に協力いただいてきた自治体の思いは受け止めなければいけないと考えており、交付金削減(で原発ゼロを推進すること)は適切ではないと考えている。】 【枝野氏 経産相の下の原子力安全・保安院が再稼働の是非を判断していた時から、私は「電力安定供給は大事だが、安全が優先」と言ってきた。規制委による原発再稼働の判断を前提に、それに対応して電力供給を確保するのが経産相の責務だ。】 ▶枝野経産相:未着工原発「自主撤回を」電力会社に促す考え 【枝野幸男経済産業相は25日、毎日新聞のインタビューに応じ、未着工の原子力発電所の新設計画について、電力会社に計画の自主的な撤回を促す考えを明らかにした。枝野経産相は「(2030年代に原発稼働ゼロを目指す)政府の革新的エネルギー・環境戦略の方針は原子力やエネルギー業界に一定の拘束力がある」と強調。「政府の戦略を踏まえて電力会社に自主的な対応をしてもらうか、法制度上の措置が必要かを今後検討する」と】 ▶これが原子力規制委員会です。 上にあげたのが、今度発足した「原子力規制委員会」のホームページです。 委員プロフィールのページ、各委員の「全身写真」が掲載されています。一度ご覧になるといいです。ギョッ…です。「なんであんたなんかの全身写真を見なきゃいけないんだ」と言いたくなるほど違和感です。──私だけかな? しかし、いずれにしても、どこのどなたがデザインされたか存じませんが、センスないね!のひと言です。 そして、各原発の状況がわかるというページがあるのですが、福島第一原発をクリックしてみたのですが、いつの写真だ!と突っ込みたくなる事故前の「きれいな」写真を載せています。そして、なぜかの理由説明なく、「廃止」「停止中」(他の原発は「定期検査中」とあります)とあり、電話、FAXは「現時不通」と。 要は、福島第一原発、事故を起こしているというふうには表現したくないということなのでしょう。これって? ▶原子力センター構想:東海村懇談会、四つの方向性了承 年内に推進組織/茨城 東海村は25日、原子力の人材育成や平和・安全規制基盤研究の推進と地域社会の調和を目指す「原子力センター構想」の懇談会を開催。 【村は10月初旬に正式決定、年内に推進組織を発足させる。構想は国策による「原発マネー」頼みを脱し、村主体でまちづくりを進めようとの試みで、懇談会後、村上達也村長は「日本の将来のためにも『原子力イコール金』ではない価値観にチャレンジしたい」と訴えた】 【構想では▽大強度陽子加速器施設(J-PARC)など最先端の原子力科学や原子力基礎・基盤研究と産業・医療利用▽東京電力福島第1原子力発電所事故の収束など原子力の課題解決を先導▽原子力の社会・政策科学分野での研究▽原子力人材の育成──の四つの方向性を柱に国際的なまちづくりを進めていくもの。再稼働問題を抱える日本原子力発電東海第2原発は構想から除外。「原発の運転に起因する即効的な経済効果は求めない」とし、構想は「原発の現存を前提としたものではない」と明記】 【「大幅な修正が必要」とした意見は具体的な問題点を「理念はいいが実現性があるのか」「一般村民との関わりが不明」「経済性が軽視されている」などと指摘】 ▶東日本大震災:福島第1原発事故 アサザ基金、県と国に再要望書 放射性物質の霞ケ浦流入阻止/茨城 【東京電力福島第1原子力発電所事故の影響による霞ケ浦・北浦流入河川の汚染状況調査に取り組み、湖に放射性物質が集積する危険性を訴え続ける牛久市のNPO法人「アサザ基金」(飯島博代表理事)は25日、県と環境省に対し、霞ケ浦への放射性物質流入阻止に向けて、早急な取り組みを求める再度の要望書を送付した。10月25日までに文書での回答を求めている】 ▶函館市議会:大間原発無期限凍結を求め決議/青森 【北海道函館市議会は25日、大間原発(大間町)の無期限凍結を求める決議案を全会一致で可決した】 ▶原発ゼロの衝撃:岐路に立つ青森/6止 内憂外患 大間原発、対岸から反対/青森 【6月17日、大間原発隣の民有地から大間町役場まで約2キロの道のりを、垂れ幕やのぼりを掲げた約200人のデモ隊が練り歩いた。町内では初の本格的な反原発デモ】 【「避難道路の整備にめどがつかなければ、建設再開は認めない」。大間町に隣接する風間浦村議会議長の蛸島敏春さん(78)は強調】 【大間原発建設に伴い11年度までに受け取った電源3法交付金は、大間町の117億円に対し風間浦村は22億円】 ▶泊原発:再稼働求め知事に緊急要望書──経済4団体/北海道 【道内で今冬、電力不足が予想されていることを受け、北海道経済連合会の近藤龍夫会長ら経済4団体のトップが25日、電力の安定供給のために北海道電力泊原子力発電所(泊村)の早期再稼働を求める緊急要望書を高橋はるみ知事に提出した。近く経済産業省などにも提出する】 今夏を乗り切ったら、今冬、冬が過ぎたら次の夏と、再稼働まで言い続けるのでしょう。何かあったら…、国が助けろってか? 自分たちで動かして、自分たちが被害受けたら、それこそ彼ら経済人が好きな「自己責任」とやらで自力復興すれば、おいら知らんよ、と言いたいのですが、被害は北海道だけではなくなってしまうのが原発なのです。 ▶記者の目:矛盾噴出の新エネルギー戦略=久田宏 【古川元久国家戦略担当相は「過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」と取りまとめた】 【原発ゼロの時の電気料金が、現在の最大2倍になることも明らかにした上でも「原発ゼロ」の支持が多かったことから、DPの実行委員長を務めた曽根泰教慶応大教授は「(原発ゼロを求める国民が)コスト負担を引き受ける用意があることを示唆する」と総括】 【「原発ゼロ」の理想と、行き場を失う「核のごみ」という現実の整合性を取ろうとした結果、戦略の表現や決定後の政府の対応は矛盾だらけになった】 ところで、この記事を書いた久田宏記者、違和感を覚えるといいます。 【現実を踏まえずに「原発ゼロ」のワンフレーズを求める政治家の多さだった。私も原発の依存度を下げられればと考えている。だが、そのためには再生可能エネルギーの技術革新や、「核のごみ」の処分方法を粘り強く追求しなくてはならない】 原発ゼロをいうことが現実を踏まえないことなのでしょうか。原発がないと立ち行かなくなるなどということ自体が推進派の論理にからめ取られているといえます。 ▶経団連前でも「原発ゼロ」稼働推進へ圧力 財界に抗議 本通信303号でお知らせした経団連前抗議行動、1300人も集まったそうです。 次は、連合(総評会館・お茶の水というのはどうでしょう)。 【経団連会館前で市民1300人が25日、「原発ゼロ」を求める世論を無視して原発推進への圧力を強める経済界に対して抗議の声を上げました。毎週金曜日に首相官邸前で全原発の即時停止を求める行動を続けている首都圏反原発連合が呼びかけたものです】 ▶原発推進の本丸・経団連に突き刺さる 「米倉やめろ!」大合唱 ▶災害から未来へ 第2回 チェルノブイリ~低線量汚染地帯からの報告~ 本通信303号で紹介したNHKEテレ特集、YouTubeにアップされています。見逃された方は、消されないうちにどうぞ。 ▶原発の呪縛・日本よ! 作家・白石一文さん 読んだことはないのですが、白石一文さん、直木賞作家とのこと。1958年生まれ。 白石作品には、「弱者に寄り添おうとする姿が度々描かれる」とのことです。 「破局的な事態を迎えたときには、それを抑えるための『決死隊』が必要になる。人の犠牲によって何らかの利益をあがなうというのは、戦時の発想ですよ。原発とは、そういう性質を持っている技術なんだ、とあの時にはっきりわかった」と白石さん言います。 「極端に言えば、大事故が起きた時、たとえたった1人でも生還できない任務を覚悟しなくてはいけないような技術は許されない、というのが僕の考えなんです」とも。 「収入格差どころか、そういう仕事を選ばざるをえない人は死んでもいい、という考え方。正当化できますか?」と、原発で、福島第一原発事故現場で働く人々に心を寄せます。 【われわれの社会では、政治体制や信仰の維持という『利益』のために反対派を殺すことは許されない。人命と何かの価値を交換することは悪だ、という根本的な考えがある。原子力という技術は、その考えにそぐわないということです」】 ▼トンデモナイ話 ▶国会記者クラブを提訴 「理由なき居候は不法占拠」 【国有財産でありながら記者クラブが独占する国会記者会館の屋上使用を求めて、仮処分の申請をしていたフリージャーナリストがきょう、国と国会記者会(記者クラブ)を相手どって、本裁判を起こした】 それに対して、国会記者会(国会記者クラブ幹事社(朝日新聞、共同通信、西日本新聞、テレビ東京)は、エリート意識丸出しで、 【「(会館は)記者室ではない。崇高な目的に基づいて使用している」と、のたまわっているそうだ】 【井桁弁護士は根底的な問題を提起する― 「国会記者会館を衆議院が記者クラブに貸すという行為は、法律上根拠がよく分からない。普通建物を貸す時は賃貸契約を結ぶが、それがない。行政財産は有償で貸さないと、無償で貸している者を優遇することになる。無償で理由なく借りていれば不法占拠となる」】 抗議行動参加者がトイレを貸してくれといっても貸さないといいます。 ▶<下水道>80施設が使われず…国の補助金250億円投入 これぞ、「使う」「使わない」はどうでもいい、「工事すること自体」が目的という最たるものでしょう。公共事業で下水道関連というのは“おいしい仕事”らしいということは、その関係の本などを読めばすぐにわかります。上水道は、手抜きをすれば「水が出ない」「濁った水が出る」など直ぐに発覚します。それに比べ、下水道は、なかなかわかりません。皆さん、上水道には関心がいっても、使った水、流してしまった水には関心をなかなか払いません。 「流域下水道整備」という言葉お聞きになったことあるでしょうか。簡単に言ってしまえば、大きな河川に沿って、その流域面全体をカバーし下水道を張り巡らすというものです。処理面積が広域になり、処理施設のその分大きくなります。しかし、いくつかの市町村にまたがることが多いので、下水本管等がなかなか整備されません。繋がらないと意味をなさないわけです。処理施設は処理施設で工事が進んでいたのでしょう。またはつくってしまったのでしょう。今回判明した「使われない下水処理施設」というのは、たぶんそのようなものだと思います。下水道問題、処理も、「流域下水道整備」=大型化すればコストが下がるなどといわれて始まったのですが、近年では、処理面積を小さくしたほうが、早期に下水道整備ができ、処理も簡単、コストも下がるという研究結果が出ているのですが、既得権益のこともあり、簡単に切り替えられません。 まだ、本下水道が整備されていない地域をご覧になるとわかりますが、あるエリアでは、下水道が完成しているのですが下水道が使えません。なぜか。繋がっていないのは各家庭と、そう「流域下水道本管」となのです。そんな土建業界と、下水道行政の癒着が発覚した一例です。無駄遣いといえば無駄遣いです。 【自治体が国の補助を受けて整備した下水道施設のうち、約360自治体が管理する約600施設を会計検査院が調べたところ、約80施設(建設費約450億円)が98~10年の間、ほとんど使われていないことが分かった。うち56施設は一度も稼働していなかった。これらの施設には国の補助金約250億円が投入されており、今後も使用されなければ多額の税金が無駄になる可能性が高い】 | ||