原発通信 310号2012/10/03発行
「10.13さようなら原発集会 in 日比谷」詳細はこちら 山下俊一らが口裏合わせ。原子力委員会の「秘密会議」に続き、今度は福島県健康調査で「秘密会議」 5月に、毎日新聞がすっぱ抜いた近藤原子力委員会委員長ら原発推進派による秘密会議。それによって「原子力大綱」が策定できなくなったことは昨日の本通信で報告しました。 またまた毎日新聞のスクープです。10月3日付朝刊1面トップと社会面トップは「福島健康調査で秘密会 県、見解すり合わせ 本会合シナリオ作る」の見出し。健康調査検討委員会の行状も近藤ら原発推進、原子力ムラ一味とまったく同じです。許しがたいのは、福島の人々の健康=命に直結する問題を裏で操作していたという事実。それも昨日今日始まった話ではなく、事故直後から行なっていたというのですから。 そして、その陰に、やはりいました──山下俊一です。なるほど、山下がやっていることは福島の人たち、なかんずく未来を担う子どもたちを守ることではなく、原子力マフィアのお先棒を担いで「大丈夫、大丈夫」とふれ歩くこと。「放射能でくよくよする人に放射能は来て、ニコニコ笑っている人には来ない」などと、トンデモ発言を繰り返しているのです。しかも「お金もかけずに福島は全世界に有名になった」などと、これまたトンデモ発言で福島の人たちの心を逆なでする。 こういう人の気持ちが理解できない人間が医師免許をもって日々人を診ている、しかも公的立場でと思うと、度し難く許せません。 ▶<福島健康調査>「秘密会」で見解すり合わせ 【東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員会を巡り、県が委員らを事前に集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが分かった。準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止めもしていた】 【また、昨年7月の第3回検討委に伴って開かれた準備会では、県側が委員らに「他言なさらないように」と口止めもしていた。 毎日新聞の取材に、県保健福祉部の担当者は準備会の存在を認めた上で「あらかじめ意見を聞き本会合をスムーズに進めたかった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。(今後は)開催しない」と述べた。 福島県の県民健康管理調査は全県民を対象に原発事故後の健康状態を調べる。30年にわたり継続する方針で、費用は国と東電が出資した基金で賄う】 と、とんだ内容というより、まあ、考えられることではあります。彼ら原子力ムラ、マフィアの連中がもし正直に、正確に、ありのままを出して議論したら、とてもじゃないですが原子力の平和利用だの、原発はコストが安いだのと言う彼らのセールストークがすべてウソだということがばれてしまいます。だからこそそれがばれないようにするのは当たり前。その尻尾を掴まれてしまったということなのです。彼らから見れば「オー、ミステイク」(古い言葉ですね)なのでしょう。 ▶<福島健康調査>「秘密会」出席者に口止め 配布資料も回収 【約30分の秘密会が終わると、県職員は「資料は置いて三々五々(検討委の)会場に向かってください」と要請。事前の「調整」が発覚するのを懸念する様子をうかがわせた。次々と部屋を後にする委員たち。「バラバラの方がいいかな」。談笑しながら1階に向かうエレベーターに乗り込み、検討委の会場である福島市内の公共施設に歩いて向かった】 【県や委員らはこうした秘密会を「準備会」と呼ぶ。】 【県側は委員らに「他言なさらないように」と口止めしていた】 毎日新聞記者の追及、彼らとのやり取りが以下にあります。 ▶「不安全」な部分 暴き出したい──原子力規制委員会初代委員長田中俊一氏インタビュー 毎日新聞2012年10月2日付科学面 昨日の号でお知らせした件の記事です。「不完全性」と書きましたが、「不安全」でした。 「『不安全』な部分を暴き出したい」と、田中俊一は言いますが、いいえ、私たちが望んでいるのは、あなたたちの「不都合」な部分を暴き出すことなのです。 田中は言います。「(原発で起こりうるリスクの確率を計算する)確率論的安全評価(PSA)などを活用し、『不安全』な部分を暴き出したい。科学技術に『リスクゼロ』はありえない」と。 確かに正論です。しかしことは原子力・原発です。本通信304号で紹介したインタビュー記事で、民主党の平智之衆議院議員は言います。 【その技術開発は、原発においては困難です。飛行機を例にとりましょう。飛行機は推進し続けないと落ちてしまいますね。だから、推進力を失わないように技術革新を繰り返し、今のように安全性の高い乗り物になりました。その間、もちろん事故はありました。しかし試行錯誤のたまもの、「失敗は成功のもと」で技術が向上してきたのです。つまり社会はそういう失敗について悲劇ではあるけれども、許容範囲内として認めてきたのでした。墜落して多くの人が亡くなったから、飛行機という技術の開発をやめようということになりませんでした。原発も、もしかするとこれから数々の失敗を経験し試行錯誤を重ねたら、もっと安全な装置になるかもしれません。問題は、原発はそんなふうに試行錯誤ができる装置ではないことです。これまでに造られた原発は世界的にも400基ほど。試行錯誤の数としては全く足りません。もっと多くの原発を造り、もっと多くの失敗を重ねないと技術的には高まりません。しかしそんなことができないのは言うまでもありません。技術が完成するより前に、地球が放射能に汚染され人が住めなくなってしまいます。原発はまだ、そのレベルの技術なのです。なのに絶対安全と言ってきた】と。 そう、「技術が完成するより前に、地球が放射能に汚染され人が住めなくなってしまう」のです。しかもその技術さえ、無理だろうと物理学専攻の山本義隆氏は『福島の原発事故をめぐって』のなかで書いています。 それ以外の内容は、「特記すべき事項なし」です。 ▶今夏、大飯再稼働なくても 電力需要「乗り切れた」 広域連合検証 【関西広域連合は1日、今夏の電力需給実績の検証結果を発表した。一般家庭や事業所による節電効果が大きく、福井県の関西電力大飯原発3、4号機が再稼働しなくても乗り切れたとしている】 【電力使用率が95%以上になった日はなく、需給は安定していた。企業や家庭などの節電効果は2010年夏比11%減(減少量300万キロワット)で、昨年の同5%減(同130万キロワット)から倍増した】 まさに関電、原発マフィアにとって不都合な事実です。 ▶福島第1原発:「特定原子力施設」に指定へ 規制委 【原子力規制委員会は2日、事故を起こした東京電力福島第1原発を「特定原子力施設」に指定する方針を固めた。指定で同原発は特別に管理されることになり、規制委が東電に廃炉までの作業の実施計画を提出するよう義務づけ、不十分であれば変更を命令できる。3日の会合で方針を決め、必要な課題を議論したうえで年内にも指定する見通し】 【電力事業者に対し、廃炉までの工程や安全対策をまとめた実施計画を提出させる。規制委が妥当性を判断。廃炉までの作業が安全に行われるよう規制委が監視】 これまでは、そもそもこうした事態を想定していなかったので法的な整備がされていなかった。 ▶原発工事再開は「自然体」=20年間は重要電源―枝野経産相 【枝野幸男経済産業相は2日の閣議後記者会見で、2030年代に原発ゼロが可能になる場合でも「今後20年ぐらいは原発を重要電源として活用しなければ経済社会は成り立たない」との考えを示した。その上で、建設の許可を既に出した原発については、工事再開を容認することが「自然体だ」と述べた】 こうして枝野は工事再開は当然だと認めたわけですが、「自然体」などという、わかったような、わからないような言い方せずに、はっきりと言えばいい。言えないところに、いかがわしさがあるのです。 ▶<原子力の図書館>廃止 安全委→規制庁に引き継がれず 【「原子力の図書館」として、原子力資料を一般市民に公開していた「原子力公開資料センター」(東京・霞が関)が、運営元の旧内閣府原子力安全委員会から新しく発足した原子力規制庁に引き継がれず、廃止されていたことが分かった。再開のめどは立っておらず、資料4万ファイルは公開されないまま宙に浮いている】 【97年に開設された。インターネットでは見られない紙資料も多数保管されており、全国の原子力施設の資料を閲覧・コピーできる利点があった】 これは意図的なものでしょう。不都合な事実があり、これまではマスコミも関心を示さず、見られることもなかったが、今後は違うと。規制庁の発足のゴタゴタのなかで隠してしまえと企んだことだと思います。しかし、こんなことやれば、より…と思うのですが、そうは思わない──大衆蔑視というか──知らせる必要があるというカテゴリーそのものが欠如しているという証明です。 ▶福島第1原発:3キロ圏内の放射線量、無人ヘリで測定 【同圏内では、地上での車や人による「点や線的」な測定は行われていたが、上空からの「面的」測定は初めて。放射線量を詳細に把握し、線量分布図を作製する】 対策、対応を決めるには実態を調べる必要があるわけですが、そんなこともできないくらい高線量=汚染地帯だということ。ならば、大丈夫と言っている東大の田中知、大橋忠弘らを「調査隊」にして現地調査させればいいだけです。率先していけば大したもんですが、しないでしょうね…。 ▶特集ワイド:今こそ読み返したい、小林秀雄 科学に負けてはいけない 【<だんだん嫌な感じが強くなった><どうも現代の科学魂というものには、邪悪を誘う何かがあるように思えます><人間は自分の発明した技術に対して復讐(ふくしゅう)されない自信があるかどうか。それほど強いでしょうか、人間という奴は>】と、小林秀雄は1948年に湯川秀樹との対談で言ったそうです。 「小林秀雄の昭和」を著した文芸評論家、神山睦美さんによると、【「当時、これを語る日本人は小林ぐらいだった。ハンナ・アレントやヤスパースらドイツ出身の哲学者、フランスのサルトルたちは『人類にとっての大問題』ととらえたが、日本の知識人は平和論や戦争責任を語るだけだった」】とも。 【湯川が、太陽熱も原子力だと力説し「そうひどいことでもない」と反論すると、こう応じる。<高度に発達する技術に(略)何億年と変わらない人間が対立する、何かおかしなことが起るような気がするのです(略)目的を定めるのはぼくらの精神だ。精神とは要するに道義心だ。それ以外に、ぼくらが発明した技術に対抗する力がない>】 神山さんは吉本隆明についても言います。 【「科学はどこまでも進み、文学はまったく逆の方角に向かうと考え、深くは詰めなかった」】と。 橋下徹大阪市長について、本記事を書いた藤原章生記者は小林の『考えるヒント』の「ヒットラーと悪魔」という文章を引きます。 【<大衆はみんな嘘つきだ。が、小さな嘘しかつけないから、お互いに小さな嘘には警戒心が強いだけだ(略)彼等に恥かしくて、とてもつく勇気のないような大嘘を、彼等が真に受けるのは、極く自然な道理である。大政治家の狙いは其処にある><嘘だとばれたとしても、それは人々の心に必ず強い印象を残す。(略)大衆が、信じられぬほどの健忘症である事も忘れてはならない。プロパガンダというものは、何度も何度も繰り返さねばならぬ。それも、紋切型の文句で……但(ただ)し、大衆の眼を、特定の敵に集中させて置いての上でだ>】と、ナチ宣伝相だったゲッペルスを引いて書いています。 細谷博南山大教授は、言います。 【「我々こそが邪悪だという見方は今も通じる」と言う。メディアは独裁批判に向かうが、「01年の小泉旋風も我々が生み出したもので、橋下旋風もその繰り返しだと思う。彼がすぐにかーっとなるところに人が引きつけられるのが怖いですね」】 最後に、先の神山さんです。 【「東京都による購入を打ち出して尖閣問題に火をつけた石原慎太郎知事の姿勢は、小林の思想とは程遠い。石原氏は小林を尊敬しているはずなんですが」と】 ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶福島第1原発:換気用モーターから白煙 【東電によると、煙が上がったのは、汚染水の処理で出た高濃度放射性廃棄物から生じる水素ガスを施設から排気するためのポンプ。2日午前9時40分ごろ、作業現場に向かう作業員が煙を発見、モーターの電源を切ると煙は止まった。東電は消防に通報し、けが人はなかった。敷地内の放射線量にも影響はなかった】 ▼どうでも“よくはなくはない”話 ▶経団連、自民との会談を優先 重要法案成立や日中関係改善を要請へ 【経団連と自民党が9日に政策対話をすることが3日までに明らかになった。自民側の申し入れに応じ、米倉弘昌会長ら幹部が安倍晋三総裁ら新執行部と日中関係やエネルギー政策など直面する課題をめぐり意見を交わす。民主党の新執行部や新閣僚との対話は10月下旬以降になる見通し。与野党が新体制となる中、野党幹部との会談を経団連が優先するのは異例】 次期政権は自民党と「確信」したということなのでしょう。どっちでもいいのです。金儲けができれば。それを「現実主義」「現実的」などと称しているだけですから。 | ||