原発通信 327号2012/10/30発行
![]() 時間:13:00~ 国会・霞が関周辺デモ 「規制される立場にある電力会社からの指摘で誤りが判明」原子力規制委員会 昨夜、TVニュースを見ていると午後8時に急きょ記者会見が行われ、誤りがあったと発表したというのです。その模様を見ていて違和感を感じました。 原子力規制委員会の事務局である原子力規制庁の森本英香次長、「規制される立場にある電力会社からの指摘で誤りが判明したことはとても残念だ。…」とか、下記のNHKのニュースでは出ていないのですが、別の番組では、「(当初放射性物質が拡散するとして対策を迫られた自治体に対して)ご迷惑をおかけしたこと残念に思っている」などと言っているのです。 私の言葉の使い方としては、自分がミス=間違いをして迷惑をかけたとしたら「申し訳ありませんでした」というでしょう。ところが、まるで第三者かのように「……したことは、残念です」。 ミスをされ、“迷惑”を受けたほうが、「…間違って残念です」というのではないかと思いますが、いかがでしょう。 ということはさておいて、でも方向が間違えていただけで、範囲が小さくなったわけでもなんでもありません。新潟など、人口が多い長岡市が範囲内に入ってしまいました。しかも、「規制される立場にある電力会社からの指摘で誤りが判明」などというのですから、いったい何をしているのだと言いたくなります。 3選なったばかりの泉田新潟県知事、「最悪を想定していない」と批判しています。当然です。田中「委員長」は、30キロで十分などといっていますが、彼ら原子力ムラ=マフィアの連中が言っていたことが合っていたことなどない、ということを私たちは知ってしまったのですから。到底信用などできませんし、30キロ以上は大丈夫などと思ってはいけないのです。 ■たがいに「憲政史上初」といっている野田首相の所信表明 参議院で首相の所信表明演説ができないことを、民主党も、自民党も互いに「憲政史上初」などと言い合っています。その所信表明演説ですが、相変わらず「決断する政治」などと言っています。また、「明日への責任」などと、取ってつけたような言葉を吐いていますが、「明日への責任」を本気で思っているのなら、「原発再稼働」ということにはならないはずです。 しかも、「極論の先に真の解決はない。中庸を旨として、意見や利害の対立を乗り越えていくしかない」などと、足して二で割るような「中庸の精神」を説いています。(下記) ■米大統領選で活躍「ファクトチェック」 米大統領選がたたかわれていますが、向こうでは候補者の発言をすぐさまチェックして「本当か」「ウソ(誇張)か」を判断している組織があるとのことです。日本にもほしいものです。与野党のいい加減なやり取りや、原発問題での電力会社や原子力行政などの発言等をチェックしていただきたいものです。しかし、正確なデータが出てないのでは意味はありませんが…。困ったものです。 【発言に間違いや誇張がないか「事実確認」を行う「ファクトチェック」。ワシントン通の元ジャーナリストたちが9年前に設立した非営利団体】 ▶放射性物質拡散:規制委が試算を誤る 【6原発で誤りがあったと発表した。試算のもとになる電力会社からの風速・風向データの入力を誤ったのが原因】 【誤りがあったのは日本原子力発電東海第2(茨城県)、東京電力柏崎刈羽(新潟県)、北陸電力志賀(石川県)、日本原子力発電敦賀(福井県)、九州電力玄海(佐賀県)、同川内(鹿児島県)の6原発】 しかし、これとて、信用できるものなのか怪しいものです。というのも事故当時、放射能がどの程度どう拡散するのかという予測を立てるのに、官邸側が地図を東電に要求すると、縮尺もいい加減な不備だらけの地図をもってきたというのです。そんな連中が、あれから1年半ちょっと経ったからといって、「準備」したとは思えません(あくまで推測ですが)。提供された資料が間違っていたと言います。しかし、電力会社のものが正しいとなぜいえるのか等々、疑い出したらきりがありません。と、考えるのも今の電力会社・規制委員会などへの嫌疑があるからです。 NHKTV(関連報道) ▶福島原発:新潟知事「安全基準策定前に事故検証を」 【泉田知事は、原子力規制委員会による原発事故の放射性物質拡散の試算について、「最悪の場合を想定していない」と批判。今回の試算は「福島と同程度の事故」を想定したが、泉田知事は「柏崎刈羽原発全7基が内蔵する放射性物質すべてが放出された」との仮定で試算するよう要請している】 ▶大飯原発:敷地内の断層「活断層ではない」…関電、国に 【関西電力が、国内の原発で唯一運転している関西電力大飯原発(福井県おおい町)の敷地内を走る軟弱な断層(破砕帯)に関する調査で、「活断層ではない」とする中間報告を31日にも国に提出】 「早く再稼働させろ。そうでないと損失が出て大赤字だ」と言い張っている連中の言うことなど信用できるわけがありません。 ▶もんじゅ研究計画で初会合 核ごみの減量に重点 【核燃料サイクル政策の中核として位置付けられた高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の今後の研究計画を議論する作業部会の初会合を開いた。文科省はもんじゅを使って長期間強い放射線を出す核廃棄物を減量する研究に重点を置く考えを明らかにした】 というのが第1報ですが、その後、下記に報じられているように「発電する原子炉としての当初のもんじゅの役割に固執する意見」が多数出たというのですから、目が離せません。しかも、脱原発派の委員はいないと東京新聞は報じています。 ▶もんじゅ文科省部会初会合 「発電技術残す」多数 【委員からは「発電能力はもんじゅの当初の目標であり、それができるかを見極める必要がある」など、発電する原子炉としての研究を維持すべきだとする意見が大勢を占めた】 【作業部会は原子力工学や科学コミュニケーションなどの専門家九人で構成するが、脱原発派の委員はいない。この日の議論は、発電する原子炉としての当初のもんじゅの役割に固執する意見が多く、新戦略が期待している核のごみを減らす燃焼炉への転換からは外れた流れになった】 ▶「最終処分場は福島第一に」 民主議員発言 栃木知事と誤解 前栃木県知事で民主党の福田昭夫衆院議員(栃木2区)は「二十八日、国が最終処分場の候補地とした栃木県矢板市で講演。福島第一の敷地内に貯蔵施設を建て、廃棄物を集約するとの持論を語った」 これに対して、佐藤福島県知事は【「栃木県では多くの避難者がお世話になっているが、感謝の思いが険悪な関係に発展する可能性がある」と不快感を示したという】 では、佐藤福島県知事、大熊町や双葉町が議会で決議まで上げて中間貯蔵施設を「誘致」していることに関してはどうなんでしょうか。 ▶原子力防災訓練:玄海原発事故想定 「電源喪失」3万2500人訓練 佐賀・福岡・長崎、初の連携 【志摩芥屋地区の持田福身行政区長(74)は「これまで危機感が足りなかったのでいい経験になった」】 関西電力:平均年収は3月末時点で805万円! 上場企業平均(596万円)を35%も上回っているそうです! ▶電力:高人件費にメス 政府、厳格査定…値上げ全国拡大 【電力各社は東京電力福島第1原発事故の後、コスト削減を進めてきたが、従業員年収はボーナスカットをした程度で、地域最高水準を維持している。政府は、利用者に理解を求めるためにも、少なくとも他の大企業並みに年収削減を求めるなど厳しく料金原価を査定する方針】 【東電には、平均年収を大企業平均(596万円)以下の590万円に削るよう要求】 形あるものは、いつかは壊れるものです。その廃炉・解体費や、核廃棄物最終処分の問題、その費用を計算・計上していないからいい気なことをしていられたのです。そのウソがばれてしまった3.11後でも、「地域最高水準を維持」しているというのですから、いい気なものです。カネ以外の興味関心がない連中=経営もロードークミアイも、同床異夢ではなく「同床同夢」をむさぼっているのです。まだまだ、目が覚めていません。他に迷惑をかけないで夢のなかでいるのであれば、それは勝手ですが、3.11後、そうではなくなったのです。それ相応の責任を取ってもらう必要があるのです。 ▶関電、値上げ検討表明 人件費削減は必至 【関西電力は二十九日、電気料金値上げの検討を開始したと正式に発表した。原発の停止に伴う火力発電の燃料費など費用負担増を転嫁するためだが、同社社員の平均年収は三月末時点で八百五万円と、国がまとめた従業員一千人以上の上場企業平均(五百九十六万円)を35%も上回っており、国の審査で圧縮を求められるのは必至】 「決断」「明日への責任」「挑戦」…という言葉の薄っぺらさ こういう言葉が乱舞するものほどいい加減なものはありません。それは右も左も同じです。 「明日への責任」などよく言えたものだとその厚顔ぶりに呆れてしまいます。しかも、また原発ゼロへ向けては、オリンピック出場をめざしているアスリートよろしく「果敢に挑戦する」などといっているのですから、上っ面だけです。 ▶野田首相:政権維持に意欲 「経済再生」強調…所信表明 【首相は演説で、これまで訴えてきた「決断する政治」が、将来世代を含む「明日への責任」を果たすためのものだと繰り返し強調】 【「2030年代の原発稼働ゼロ」を目指す政府方針は「果敢に挑戦する」と強調】 【沖縄県で発生した米兵による暴行事件については「決してあってはならない」と非難】 ▶首相所信表明 「中庸」説得力乏しく 【「極論の先に真の解決はない。中庸を旨として、意見や利害の対立を乗り越えていくしかない」と持論を展開】 【首相は集団的自衛権の行使容認を過去に主張した。石原氏に促されたにしろ、尖閣諸島の国有化も決めた。今さら「中庸」を説いても、首相本人の保守色は隠せるはずもなく、説得力には乏しい】 ▶野田首相:所信表明演説(全文) ▼原子力ムラ 今日の「No problem!」 ▶委員の報酬受け取りを未公表 原子力規制委 【原発の新たな安全基準を議論する原子力規制委員会(田中俊一委員長)の検討チームの外部委員1人が、電力会社などから受け取った報酬や寄付金の有無についての自己申告書を規制委に提出せず、規制委もこの委員を含むチームの外部委員6人全員分の申告内容をホームページで公開していないことが30日、分かった】 さあ~て、「No problem!」といくか…。これだけ初めから言われていることです。「知らなかった」「確認しなかった」では済まないでしょう。追及してほしいものです。 ▼編集室から ▶「38%」に働きかける工夫を=湯浅誠 毎日新聞』2012年10月26日(金)付 「くらしの明日 私の社会保障論」 世界47カ国の人を対象に「政府は、自力で生活できない人に対応する責任があるか」と聞いた、海外機関の調査結果があるそうです。 その調査結果。「自己責任」の国アメリカでは、政府の責任について「全く思わない」「ほとんど思わない」と答えた人の合計が28%あるというのです。ドイツでは7%だそうです。 ではわが日本ではどのくらいのパーセンテージを示しているのかと言うと、驚くなかれ、あの自己責任の国アメリカの28%を10ポイントも多い38%もの人々が政府には責任がないと答えているのです。 それに関して湯浅さんは【「まずは家族で何とかするべきだ」という価値観がいかに根強いか】といいます。そして、【この国で「自力で生活できない人の支援」を政策化・制度化するのがいかに難しいかは、容易に想像できるだろう。ただちに「そんなことをして何の意味があるのか」「資金は限られているのだからもっと他に使うべきだ」という批判にさらされるし、実際にさらされてきた】と。続けて言います。 【従来「自力で生活できない人」を支えてきた血縁(家族)・地縁(地域)・社縁(会社)などのコミュニティーが弱まり、「支える力」が低下している現実がある。「家族や会社が何とかしてくれる」という想定は、徐々に効かなくなってきているのだ。にもかかわらず、政府がこうした人たちに対応する責任があると「思わない」人が、38%もいる。これでは、周囲に困難を抱えた人たちがいても、現状は放置され、状態は深刻化し、気分は沈み、社会は弱体化するだけだろう。その38%に働きかけ、理解を広げていく知恵と工夫が、私たちに求められている】 これが現実です。3.11後、「絆」ということがTVやマスコミをはじめさまざまなシーンで盛んに言われています。自民党のスローガンにもなっています。身の回りの事象をすべて「家族」に還元して、事無きものにしようとしていると感じるのです。「絆」「絆」と連呼されるたび、何か違うんじゃないのと違和感を覚えるのは私だけでしょうか。以前にも本通信で、「絆」──手あかにまみれないうちにと書いたことがあります。 3.11から1年半以上が過ぎ、もう少しで、野田首相が「福島第一原発事故収束宣言」──「冷温停止状態」宣言から1年になろうとしています。あれから何が変わったのでしょうか。とりわけ原発事故に関していえば、何ら変わっていません。相変わらず、毎時何トンもの水をぶっかけていなければ「冷温停止状態」を維持できません。住み慣れた地域を追われた人たちへの対応、近いところでは東電の「結婚したからもう補償はしない」などということをみると、まさに、この「絆」を逆手に取っているといえるのです。 「東大話法」の安冨歩さんが、「絆」について次のように書いています。 「私は助け合いの精神を否定するものではまったくありません。それどころか、助け合いこそが、人間社会の基礎だと考えています。しかし、「絆」という言葉がもつ本当の意味を思うと、到底「大切だ」とは言えないのです。 | ||