原発通信 338号2012/11/15発行
言っちゃいました、「16日に解散する」と。 政治家になることを夢見て早稲田大学に入り、松下政経塾へ。そして、未曽有の3.11東日本大震災と福島第一原発メルトダウンという最悪の事故を引き起こした東電。その対応をめぐってのドサクサ騒ぎのなかで手に入れた総理大臣という最高権力。震災復興も、原発事故対応も、盛り上がる脱原発社会への希求も一切興味ないとばかりに、税と社会保障の一体改革などと叫ぶ。税と社会保障の一体改革をなした名宰相として歴史に名を残すつもりだったのだと思います。しかし、歴史はそうは動いてはくれないでしょう。 歴史の流れを見極めることも歴史に学ぶことをしないものに、新たな歴史の幕を開けることはできないのです。 昨日(11.14)の野田首相と安倍晋三との党首討論をTVニュースで見ましたが、今、「私たちの目の前にあるリスク」について、「さあ、どうするんだ!」という討論ではなく、「自分たちの目の前のリスク──定数是正」だけに興味関心があることを恥ずかしくもなくさらけ出していました。なんか見たことがある──そう、学級会・ホームルームでの話し合いと似ていると。そんな低レベルの内容でした。 もちろんもう少しで還暦だといういい歳をした連中がやっているから「学級会・ホームルーム」程度と言ったので、子どもたち、生徒たちが真剣に行う学級会・ホームルームを揶揄しているわけではありません。 「安全規制に必要な知識が必要だが、残念ながら今(規制委には)それはない」!!? 冗談は休み休み言ってほしい。専門家を自負していたのではないでしょうか。 この「原子力規制委員会」や原子力規制庁(まあ、原子力規制庁もあの安全・保安院が横滑り、看板架け替えただけですから同様でしょう)、いったいなのができるというのでしょうか。 たい焼き屋が「たい焼き焼けません」といったら、たい焼き屋ではありません。規制するところが、規制するだけの知識や人材がありませんといったら、いったい何屋さんなのか? 冗談抜きに、こんな連中に任せることはできません。野田首相にはそんな連中を専門家として、国会を無視して登用した「任命責任」があるというものです。 今日は、その原子力規制委員会がらみのニュース、5本。 ▶「拡散予測能力規制委にない」 丸投げ問題で委員長 【原子力規制委員会が公表した原発事故時の放射性物質の拡散予測を、孫請けのコンサルタント会社に丸投げしていた問題で、規制委の田中俊一委員長は十四日、「(規制委が独自に予測を行う能力は)正直言って、ない」と】 【「これから安全規制に必要な知識や人材はかなり高レベルのものが必要だが、残念ながら今(規制委には)それはない。だからこれまでのやり方を点検しながらやっていく」と】 ▶規制委:原発集中の弊害指摘…田中委員長 【原子力規制委員会の田中俊一委員長は14日の記者会見で、1カ所に複数の原子炉が集中する原発について、安全対策上、適切ではないとの考えを示した】 【田中氏は「原子炉数や総出力だけでは(いいか悪いか)判断できない」としつつも、「原子炉が並んでいると、一つで大きな事故があれば対応が困難になる」と】 もっともでございます。じゃあ、どうします…。一つだけ動かす? いいえ、そうしたところで、仮に動かさないとした原子炉の隣には、どこへも持っていく場所がない、例の「使用済み核燃料」が何千本とあるのですから、危機が去るわけではありません。それは福島第一原発4号機が証明しています。 ▶複数原子炉“特別な安全対策要請も” 【原子炉が複数ある場合、1つでも大きな事故が起きると、隣の原子炉でも対応が困難になるので、設備面での要求も含めて考えなければならない」と述べ、運転再開の判断に当たっては、特別な安全対策を求める可能性に初めて言及】 ▶大飯原発“関西電力の調査に疑問” 【島崎邦彦委員は、14日の会合で、「電力会社の調査の考え方に疑問が出てきている」と述べ、関西電力の調査方法に疑問を】 【島崎委員は、大飯原発の敷地を走る「F-6破砕帯」という断層について、「関西電力は『破砕帯がこれまでの調査より短く、位置も違っていた』と説明していて不明な点がある」と述べたうえで、「調査の考え方に疑問が出てきている」と述べ、関西電力の調査方法に疑問を呈しました】 ▶原子力規制委:大地震想定し初の初動訓練実施 【原子力規制委員会は15日、早朝に新潟県で大地震が発生したとの想定で、田中俊一委員長や委員4人らが東京都内の対策拠点に駆けつける初動対応の訓練を実施した。地震の訓練は、9月の規制委の発足後初めて】 【連絡を受けた委員と原子力規制庁の幹部ら計約60人が、自宅や待機宿舎から霞が関の規制庁緊急時対応センター(ERC)に集合】 だそうです。でもね、3.11の時のこと、私たちはまだしっかり覚えているのです。電車は止まり、道路は駐車場状態──。本当に来たらではなく、来たのです、それも今回想定したという震度6ではなく、もっと小さい震度5であのありさまだったのです。 訓練では、午前6時半にはみな霞が関にお集まりになられたとか。でもね、早朝は交通量も少ないときで、ましてや事故は都合よく早朝に起きてくれるという保証はないわけです。しないよりはいいのでしょうが。それよりも国民の安全を考えたら、目の前のリスク=原発を廃炉にするということしかありません。 ▶核燃料税:鹿児島県、5%上げ 「原発停止中も課税」発表 【九州電力川内原発(同県薩摩川内市)に課している核燃料税の税率について、来年6月から5%引き上げて17%とし、12%を価格割り、5%を出力割りとする】 【出力割りは、原発が稼働しているかどうかにかかわらず、原発の規模を示す熱出力に応じて課税する方式。原発停止期間中でも一定の税収が得られ、福井県や石川県が先行して導入している。価格割りは、交換された核燃料棒の価格に課税するもので、為替相場などの変動を受ける】 【九電は今回の川内原発への核燃料税の課税と税率引き上げについて「納税者として大変厳しい。しかし、今後も原発の運営を継続していく中で、原発立地地域の安全安心の確保や、地域と発電所の共生は大切であり、鹿児島県の方針は受け入れる」】 原発停止期間中でも一定の税収が得られと、先行事例がある福井県や石川県を手本としてカネととろうということです。姑息なのは九電に言いぐさ。 「納税者として大変厳しい」だと。しかし、「今後も原発の運営を継続していく中で…地域と発電所の共生は大切であり、鹿児島県の方針は受け入れる」だと。 つまり、値上げは構いませんよと(…どうせ、総括原価方式ですから、自分の懐が痛むわけではないし)。その代り再稼働を認めよ、ということです。カネをやるから再稼働といっているのです。 ▶浜岡原発:中電、住民見学会を初公開 津波対策壁など確認/静岡 【中部電力は14日、浜岡原発(御前崎市)で建設中の防波壁(海抜高18メートル、延長1・6キロ)の工事現場で、地元住民を対象に8月から実施している見学会の様子を初めて報道陣に公開】 「どうだ、これで!」というつもりで地元民に見せたのでしょうが、そんなもので大丈夫だなどと思う人いないでしょう。高さも足らないといわれているし、長さだって1.6キロしかありません。そのわきを回り込まれたら…。それにあそこは砂丘だといいます。東日本大震災では、強固につくった防波堤や防潮堤などが乗り越えて流れ込んできた波に海と反対側の根元がえぐられ、崩壊してしまったということも知ってしまったのです。 ☆ 「建設工事再開は、暴挙」と函館市長 ▶これが言いたい:大間原発工事は無期限凍結すべきだ=北海道函館市長・工藤寿樹 【函館市は、大間原発の予定地から最短で23キロ、晴天時には、工事現場が見えるほどの至近距離にある。「青森と北海道」と一般に抱かれているイメージよりも密接している】 【福島原発ではいまだに事故の原因を究明できず、原子炉内の状況さえも把握できず、収束の見込みはまったく立っていない。現在も16万人の人が故郷を奪われ、避難生活を余儀なくされている】 【函館もまた観光をはじめ、さまざまな分野で大きな影響を受けた。大間原発の50キロ圏内の人口は青森側が9万人に対し北海道側は37万人に達し、事故の際はより大きな影響を受けることになる。住民の不安は募るばかりで到底、建設に理解を得られる状況ではない】 【大間原発では使用済み核燃料は20年分しか保管できず、最終処分場の引き受け手などあるはずもなく、その処理方法の見通しもまったく立っていない。しかも再稼働と違い電力需給の問題も生じない】 【大間原発が面する津軽海峡が国際海峡であり、領海が通常の12カイリではなく3カイリしかないことだ。海上からのテロなどが懸念され、安全保障上も大きな問題がある】 まったくその通りです。そうした危惧に対して、函館市がJパワーに質問状を出しても音沙汰なしだそうです。人喰ったこと平気でする連中です。 JA、佐賀は脱原発。福井は原発推進 ▶JA・佐賀、原発依存せず決議へ 玄海原発立地県 【JAグループ佐賀は15日までに、「原発に依存しない社会を目指す」とする今後3年間の活動方針を決議することを決めた。12月4日の県大会で採択する】 ▶原発を含むエネルギー「ベストミックスを」 JA県5連と県経団連が声明/福井 【JA県5連の山田俊臣会長と県経団連の川田達男会長が14日、福井市内で記者会見し、原発を含むエネルギーのベストミックスと、北陸新幹線金沢-敦賀間の早期開業を訴える声明を発表】 【声明文は「原子力の選択肢を失うことは、電気料金の高騰、産業の空洞化を招き、産業、雇用にも大きな打撃となる」と指摘。「場当たり的なエネルギー戦略は、日本の活力を失う」とし、政府の2030年代の原発ゼロ方針を批判】 福井のJAは処置なしです。どこまでも原発を抱き続けるのでしょう。まだ、原発は安いなどとたわごとをいっています。「場当たり的なエネルギー戦略は、日本の活力を失う」ですって。冗談ではありません。「金欲しさに原発を動かし、事故でも起せば、日本が滅んでしまいます」と言い返したい。 ▶<福島第1原発事故>双葉の41人、東電提訴へ 【東京電力福島第1原発事故で古里を追われ住居や仕事、健康、地域コミュニティーなど全てを奪われたとして、福島県双葉郡の原発30キロ圏内に暮らしていた20世帯41人が12月3日、計約10億7500万円の賠償を東電に求め福島地裁いわき支部に集団提訴する。避難先の同県いわき市で原告団を結成し14日、弁護団が明らかにした】 ▶福島第1原発事故 県、東電に3000万円請求 下水道事業では初 /岩手 【県ではこれまで放射性物質の測定機器購入や原発事故対応の人件費など2回にわたり計約4億7600万円を損害賠償請求しているが、下水道関連の請求は初めて。内訳は、汚染汚泥・焼却灰などの保管・処分費用2816万5282円と放射線測定費用281万9845円で計3098万5127円を請求】 ▶3号機にカバー設置へ=重さ1500トン、福島第1―東電 【使用済み燃料プールから核燃料を取り出すためで、クレーンなどを併設する。重さは約1500トンだが、東電は建屋の耐震性などに問題はないとしている。東電によると、カバーは東西約57メートル、南北約19メートル、高さ約24メートルで、建屋5階の燃料プールにかぶせる。現場は放射線量が高いため、作業員による固定作業は行わず、建屋の凹凸を利用して設置する。大気中に放出される放射性物質を減らすため換気設備も備える】 だそうです。 お解りのことと思いますが、この3号機から今も放射性物質が出続けています。だからこそ、「現場は放射線量が高いため、作業員による固定作業は行わず」であり、「大気中に放出される放射性物質を減らすため換気設備も備える」なのです。 衆院解散、総選挙 ▶野田首相:通知表の「ばか正直」褒められた 【小学生時代、通知表を自宅に持ち帰った際の自身の思い出を披露。「成績が下がっておやじに怒られると思ったが、生活態度を書いた講評に『野田君は正直の上にばかが付く』と書いてあるのを見ておやじは喜んでくれた」と振り返ると、「だから、元々うそをつくつもりはありません」】 そんな小さなウソは、どうでもいいのです。野田佳彦は、現在内閣総理大臣という最高権力者です。ウソは大きければ大きいほど信用されやすいといいますが、「原発事故が終息した」だの「原子炉は冷温停止状態」だのと嘘八百を並べたことはどうなんでしょう。 きっと、地獄で閻魔様に舌を抜かれることでしょう。 ▶衆院16日解散:「泥仕合」に失望感…「投票どこに」 どうも私たちが日常使う言葉と、彼らの言葉の用法、意味は相当違うようです。 「また、ボクちゃん、総理大臣になれる」とはしゃいでいる安倍晋三の家庭教師を務めていたという平沢勝栄が16日に解散すると言った野田首相のことを「野田さんは勇気あるな。リーダーとしてたいしたものだ」といったとのこと。この記事を読んで、「勇気」「たいしたもの」という意味と使い方、私とだいぶ乖離しているなあと思いました。 さすが、警察官僚出身の平沢サンです。「犯人はお前だと証拠は上がっているんだ! 早く吐いて楽になれ!」という刑事ドラマに出てくるシーンを思い浮かべました。 「野田、ようやく吐いたな。よく吐いた」と言っているように聞こえたのです。それを「勇気」というのでしょうか…。皆さんはどうでしょうか。 同じ日本語を使っていると思っていましたが「悲しいこと」です。 そして、さあ、就活だと、会社めぐり、いや地元めぐりに──。 【自民党の平沢勝栄氏(東京17区)は「(党首討論での解散表明は)普通ならあり得ない。野田さんは勇気あるな。リーダーとしてたいしたものだ。今から地元に戻らないと」と】 ▶社民・阿部政審会長が離党の意向 「社民党にとどまっていては、脱原発など大きな政策課題が実現できないので、新党を立ち上げたい」と。 ▶民主離党者続出、解散へ動揺=「0増5減」午後に衆院通過 「沈みゆく船からわれ先に逃げ出す」──自分の命さえ助かればいい──そういうことだと思われても仕方がないでしょう。その前にきちんとやってほしかったのです。 ▶「一票の格差」放置なら一斉無効訴訟も 弁護士ら検討 【1960年代から訴訟を続けてきた一つの弁護士グループは、抜本是正が行われない中での総選挙の実施を防ごうと、「差し止め訴訟」が起こせないかも検討している。ただ、「被告をどこにするのか」など訴訟上の難しさがあると】 専門職の出番です。 | ||