原発通信 367号2012/12/29発行2012年最後の首相官邸前抗議行動。 ![]() 官邸前抗議行動は年末もつづく 今年最後の首相官邸前抗議行動に行ってきました。冷たい小雨のなかでしたが、想像以上の人々でした。やはり、安倍自民党政権の誕生で脱原発が遠のくのではないか、再稼働するのではないかという危機感が人々を首相官邸前へ呼ぶのだと思います。今度は、まさにこの国に54基もの原発をつくった張本人たちが官邸にいるのです。抗議行動の勢いも一段と違ってくるでしょう。 「脱原発工学」の構築をと吉岡斉さん 毎日新聞と朝日新聞に興味深い記事が続けて掲載されていました。 毎日新聞は政府事故調の委員を務めた吉岡斉さんです(下記)。吉岡斉さんは、「原発は未熟な技術」と喝破し、収益事業としても割が合わないものだといいます。今後、「原子炉の解体、放射性物質の撤去には数十年かかり、福島第1原発事故の被害修復も100年単位で取り組むべき課題」となり、「廃炉に力を注げば新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある」と説きます。これまでの造るばかりではなく、廃炉事業にとりくめば「技術レベルの維持は可能だし、研究者や技術者の力を発揮する場も確保できる」と。まさにその通りだと思います。その方向に舵が切れるかどうかなのですが、斎藤環さんによると、ヤンキー化した政党=自民党安倍政権は、そこが一番苦手としているところだと説きます。 「ヤンキーには、『いま、ここ』を生きるという限界があって、歴史的スパンで物事を考えることが苦手です。だから当座の立て直しには強いけれども、長期的視野に立った発想はなかなか出てこない」というのです。 斎藤さんは、「私がヤンキーと言っているのは、日本社会に広く浸透している『気合とアゲアゲのノリさえあれば、まあなんとかなるべ』という空疎に前向きな感性のこと」だといいます(下記)。 斎藤環さんの本を読んでいても、今ひとつ分かりにくいところがあるのですが(私だけかな)、この朝日新聞のインタビュー記事は、非常にわかりやすい、痛快な記事です。なるほどそういう切り口から見ればその通りだとうなづいてしまいます。 ところで、よさこいソーランについて斉藤さんが言われていること、その通りだと思いました。前々から、このよさこいソーランに何かいかがわしさを感じていたのですが、「薄い毒を予防的に注入して強力な毒になるのを防ぐというワクチン的な効果を発揮し、思春期の子どもの反社会性をうまく吸収」「要するに、不良になりそうな連中がソーラン節や祭りによって保守にロンダリングされるのです。こんな強力な回路は日本以外にはありません。しかもこの回路は治安維持に役立っている面があるので簡単には手放せません」との指摘に思わず同意です。 斎藤さんが言う、「空疎に前向きな感性」に要注意です。「根拠なき前向き」、別の言い方をすれば「根拠なき未来志向」とでもいうのでしょうか、そんな難しいこと考えないで、前向きに、未来志向でという声や言い方に私はなじめないのです。 とてもでないが「佐賀のがばいばあちゃん」のように、「過去にはこだわりません」とはいきません。 ▶「脱」叫びから具体論へ──吉岡斉さん 政府事故調委員を務めた科学史が専門で九大副学長の吉岡斉さんです。 自民党の圧倒的勝利で終わった衆院選。「国民の意思」を、吉岡さんは原発政策のベクトルが元に戻ることになるのに「わからんですね」と言います。そして、主権者としてどれだけ自覚して判断した人がいたかと言います。【「エネルギー政策は国家の根幹に関わる極めて重大な問題。その選択は、目先の関心を重視する『生活者』の観点からではなく、日本の将来像を第一に考える主権者としてなすべきです。もし国民がそこまで切実に悩まなかったのだとしたら……」】と、生活者の視点からではなく、将来像を見据えた視点から見ることが必要と説きます。 原発については、「実力のない技術」だと喝破。【「経産省は原発の利点として安定供給性、環境、経済性の3点を強調してきました。しかし、ひとたび事故が起これば、安定供給はおぼつかないし、二酸化炭素よりもはるかに有害な放射性物質をばらまく。安全面や周辺自治体への対策費を含めるとコストがかさみ、収益事業としてはリスクが大きすぎる。どの面から見ても非常に未熟であることは明らかです」】 損害賠償で東京電力が国に兆単位の資金援助を求めたことでも、企業としての未熟さを自ら証明したと。その未熟な技術になぜ国家はこだわり続けるのかとの問いに、「利権構造の維持と、核武装への道の保持」と吉岡さんは答えます。 今後を見据えて吉岡さんは言います。 【脱原発を叫ぶだけでなく、具体的な方法論を対置させる必要性があるとして「脱原発工学の構築」を】。 【今後は廃炉など後始末の技術開発や人材育成に力を入れる。それによって技術レベルの維持は可能だし、研究者や技術者の力を発揮する場も確保できる】 【「原発を次々に製造する時代はもう終わりました。廃炉に力を注げば新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある。原子炉の解体、放射性物質の撤去には数十年かかり、福島第1原発事故の被害修復も100年単位で取り組むべき課題なのです。脱原発が完了すれば不要になる学問ですが、それはまだ遠い将来のことです」】 本通信でも書いたことがありますが、逆に考えれば、今後数百年間需要がある仕事が続くということです。こんなに長い時間軸が取れる仕事というのは、基本的な衣食住にかかわる仕事以外にあるものではないと思います。 吉岡さんが大学で物理学から科学史へ専攻を変えたのは、当時社会問題化していた水俣病、公害、そしてベトナム戦争での化学兵器使用に疑問を持ったことがきっかけと。 これが原子力マフィアのやり口だ ▶秘密会議:原子力委、報道で発覚後も官邸にウソの報告 毎日新聞 2012年12月29日 02時30分(最終更新 12月29日 02時43分) 毎日新聞のスクープで明らかになった秘密会議、それを確認しろと指示した政府にウソの報告をした担当室職員は日本原子力発電からの出向者、現在は出向元に戻っているとのことです。まさにマフィアの一員がウソ、デタラメ情報を上へあげ、隠ぺいしようとしていたのです。これにだまされた民主党政権。騙されたというのか、奴らに切り込むことができなかったということなのか。 しかし、自分たちの利益のためならウソも平気でつく連中。もう、何をいっても信用してはならないということです。たとえ、いくつかの真実があったとしても。それが地に堕ちたということなのです。 【原発事業者ら推進側だけで「勉強会」と称した秘密会議を開いていた問題で、毎日新聞の報道で問題が発覚した5月24日、内閣府原子力委員会が官邸に虚偽報告していたことが、情報公開で入手した電子メールで分かった。核燃サイクル政策見直しを進める小委員会で使用予定の文書の原案について議論し内容を変えたのに、「議論も書き換えもない」とうそを記載した想定問答を作成・送信していた】 【関係者によると4月24日の秘密会議で原案は政府のエネルギー・環境会議への報告案であるとの説明が担当室側からあり、議論した。青森県六ケ所村の再処理工場を経営する「日本原燃」幹部が使用済み核燃料の一部を再処理し、残りを地中に直接処分する政策に有利になるよう求めたことが毎日新聞の報道で既に明らかになっている】 【入手文書には書き換えを裏付けるメールもあった。担当室職員が5月4日に発信したメールには「電事連(電気事業連合会)から再コメントあり。(コメント反映済)」と記されている。コメントは電事連からの意見で反映は原案の修正を意味する】 ▶秘密会議:原子力委の虚偽発覚、公開文書に口止めメール 【メールは毎日新聞が初めて報道した5月24日午後1時55分、原子力委事務局を務める内閣府原子力政策担当室の上席政策調査員(当時)が送信した】 【「駄目押しですが(報道機関から)問い合わせがあった場合には『(秘密会議で)配布された資料の中に(有識者会議で使用予定の文書の原案が)含まれていたが、説明も議論もしていない』について、関係者に徹底願います。『その場で議論していた』とは答えないように願います」】 【さらに上席調査員は午後2時13分、別のメールを官邸に送信した。「総理レク用資料」として「勉強会の概要」と題したA4判1ページの文書を添付。秘密会議の出席者名や開催場所などに続き「(原案は)議論として取り上げず資料配布のみ」とうそを記載していた】 ▶秘密会議:改めて見えた「原子力ムラ」の根深い病巣 【入手した別のメールには「六ケ所再処理(工場)について日本原燃のコメントを受けたもの(議案)を代理(鈴木達治郎・委員長代理)に確認いただき了承いただきました」(4月26日発信)との記載がある。再処理工場を経営し、直接の利害関係を持つ日本原燃が、小委員会で使用予定の議案に口出しし、修正させているのだ】 【6~8月に調査を実施した内閣府の検証チームはこれらのメールの存在を把握していた】 【虚偽報告メールは経済産業省資源エネルギー庁、文部科学省にも送られた。黙認した両省庁も「同罪」だ。原子力委を改組し機能を両省庁などに移管する案があるが、その資格はない。再発防止には、新組織にムラと距離を置く第三者を配置し、内部から監視するシステムが必要】 一蓮托生とはこういうことを言うのでしょう。元から絶たなければダメということです。 ▶自民・民主:原発事故防止策監視、衆院に特別委設置へ 毎日新聞 2012年12月29日 02時30分(最終更新 12月29日 02時42分) 【自民、民主両党は28日、来年の通常国会で、政府や原子力規制委員会の原発事故防止の取り組みを監視するための「原子力問題調査特別委員会」を衆院に設置する方向で大筋合意】 これで、自民・民主ともに共同正犯ということです。お前も同意したのだからと。 ▶大飯原発:再調査初日、活断層の疑い消えず 原子力規制委 毎日新聞 2012年12月28日 21時19分(最終更新 12月28日 21時52分) 【「F-6破砕帯」が活断層かどうかを判断するため、2回目の現地調査をした。敷地北端の台場浜付近の調査溝(トレンチ)で見つかった地層のずれについて、調査団5人のうち4人が関電の主張する地滑り説の根拠に「納得できない」と疑問を呈した】 【調査団は全員が「頭を整理したい」と判断を保留した。その上で、渡辺満久・東洋大教授は「疑問を持った」と指摘し、島崎氏と広内大助・信州大准教授、重松紀生・産業技術総合研究所主任研究員はいずれも「納得していない」と話した。岡田篤正・立命館大教授は「かなり(地滑りの)可能性が高い」と述べた】 【島崎氏は、F-6破砕帯の位置や活動性を詰めるには2号機の南側で調べる必要があるとして、関電に作業の加速を要請】 安倍「原発再稼働準備」内閣、原子力マフィアにどう対抗できるかが問われるでしょう。 ▶大飯原発:“破砕帯”きょうも調査 「慎重に確認すべき」──規制委/福井 【冒頭の会議で同委の島崎邦彦委員長代理は、関電が実施中の追加調査について「たくさん(トレンチを)掘っても無駄だというような声も聞こえるが、私は無駄だとは思わない」と述べ、必要性を強調】 ▶原発再稼働:「福島県民の心傷つける」富岡町長が反対表明 毎日新聞 2012年12月28日 20時16分(最終更新 12月28日 20時42分) 【富岡町の遠藤勝也町長は28日、「政府に再稼働を優先するような姿勢が見えるが、福島県民の心を傷つけるものだ。国民の議論による合意形成がない限り、政府だけで再稼働を決めるのは、福島は絶対大反対だ」】 【「原発行政がスタートしたのは自民党政権。その政権の中で安全基準が脆弱だったから、事故が起きた」と強く批判】 まったくその通りです。27日から「真打ち」登場になったわけですから、追及のし甲斐があるというものです。 ▶根本復興相:原発再稼働問題、現段階では白紙 毎日新聞 2012年12月28日 20時12分(最終更新 12月28日 21時56分) 【根本匠復興相は28日、民主党政権の「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」との方針を茂木敏充経済産業相らが見直す考えを示したことについて、「政府全体の方針としては今の段階で白紙だ。私は原発に依存しない社会を作りたいと言ってきた」と述べ、慎重な考えを示した】 【根本氏は、衆院福島2区選出。「『30年代ゼロ』にしても、事実上白紙で、何か含みがあるわけでもない。政府全体のエネルギー政策をどうするかという中で考える話だ」と強調】 復興相に福島選出の議員を当てるということに、安倍自民党政権が一番力を入れようとしていることは原発再稼働だということなのでしょう。岩手や宮城の海岸地域、津波で甚大な被害をこうむった地域ではなく、原発がメルクマールだということを表していると思います。安倍「原発再稼働準備」内閣たるゆえんです。 ▶ふたたび安倍政権 ヤンキー社会の拡大映す 斎藤環さん(精神科医) 朝日新聞2012年12月27日付オピニオン欄 「自民党は右傾化しているというより、ヤンキー化しているのではないでしょうか。自民党はもはや保守政党ではなくヤンキー政党だと考えた方が、いろいろなことがクリアに見えてきます」 「私がヤンキーと言っているのは、日本社会に広く浸透している『気合とアゲアゲのノリさえあれば、まあなんとかなるべ』という空疎に前向きな感性のことで、非行や暴力とは関係ありません」 「『新しい国』と言いながら古い国に戻そうとしているのではないか。何しろ安倍さんは、伝統的な子育てを推奨する『親学』を推進する議員連盟の会長でしたから。伝統的子育てには虐待などの問題も指摘され、それがすべて良かったなんて完全なフェイクです。ヤンキーは伝統を大事にするというイメージがありますが、それはフェイクとしての伝統で、さかのぼってもせいぜい3代前。本当の伝統だと勉強しなくちゃ理解できませんから」 (記者に、要はお勉強が好きではないということでしょうかと聞かれ) 「ヤンキーには、『いま、ここ』を生きるという限界があって、歴史的スパンで物事を考えることが苦手です。だから当座の立て直しには強いけれども、長期的視野に立った発想はなかなか出てこない。自民党が脱原発に消極的なのは、実は放射能が長期的に人体に及ぼす影響なんて考えたくないからじゃないか。(略)原発は廃炉にするにしても100年スパンで臨まなければいけないので、もっともヤンキーにはなじまない課題です」 「保守は知性に支えられた思想ですが、ヤンキーは反知性主義です。言い方を変えれば、徹底した営利思考で『理屈こねている暇があったら行動しろ』というのが基本的なスタンス。主張の内容の是非よりも、どれだけきっぱり言ったか、言ったことを実行できたかが評価のポイントで、『決められない政治』というのが必要以上に注目されたのもそのせいです。世論に押されて実はヤンキー化しているマスコミがその傾向を後押しし、結果日本の政治が無意味な決断主義に陥っています」 「100年やそこらでは変わらないでしょうね。いま全国の中学校で何が流行しているかご存じですか? 北海道の中学校で不良を立ち直らせたという伝説の『南中ソーラン』です。ソーラン節をアップテンポにした踊りで、多くの中学校が取り入れています。衣装は『竹の子族』風、踊りは『一世風靡セピア』風と極めてヤンキー度が高く、薄い毒を予防的に注入して強力な毒になるのを防ぐというワクチン的な効果を発揮し、思春期の子どもの反社会性をうまく吸収しています」 「そうやって成長した著者たちは地元に残り、地元の祭りの担い手となり、『絆』を重んじるヤンキー的な保守として成熟し、うまくすれば地域の顔役になったり地方議員になったりする。要するに、不良になりそうな連中がソーラン節や祭りによって保守にロンダリングされるのです。こんな強力な回路は日本以外にはありません。しかもこの回路は治安維持に役立っている面があるので簡単には手放せません」 「ニヒリスティックに棄権する知性派なんて選挙では何の役にも立ちません」 「民主党議員を見ても、選挙に強い人はヤンキー度が高い。(略)ある種の諦観をもってヤンキーの中の知性派を『ほめて伸ばす』というスタンスで臨むしかないというのが私の結論です」 この斉藤環さんと一緒に登場しているのは小林よしのりです。見出しは「ネット右翼ともたれ合う」です。ネット右翼に癒される安倍、情けないと結ばれています。 | ||