原発通信 85号2011/10/21発行
■福島県議会が福島原発のすべてを廃炉にと決議! 昨夜、NHKのBSニュースを見ていたらカダフィーのニュースの次に福島県議会の廃炉決議を報道してました。えっ!と思いその後、報道ステーション、NHKを見たのですが(完全ではないのですが)、報道されていませんでした(もし報道していたら教えてください)。そして、昨日の毎日新聞夕刊にも、今日の朝刊にも1行も載っていません。これってなんでしょうか? ニュースウォッチ9に野田が出ていましたが。NHKの調べによると、4つの自治体が電源3法などの交付金を申請しないことにしたとのことです(下記参照)。確かに、何かが大きく変わるシグナルなのかもしれません。 文部科学省、放射性セシウムの濃度や放射線量の分布が今までより詳細に確認できる地図を公表したとのことです(http://ramap.jaea.go.jp/)。持っていても出さない、見せないという彼らですが、今回は出さざるを得なかったというわけです。 ■『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』(NHK Books)を読んで 今冬電力が足らなくなるとの恫喝がまた、始まりました。この本、電力事情についてもなかなか興味深いことが書かれています。最後に感想を載せました。 福島県議会が福島の全原発を廃炉にとの決議を採択! 【福島県議会は9月定例会最終日の20日、東京電力福島第1原発1~6号機(大熊町、双葉町)、第2原発1~4号機(富岡町、楢葉町)の全10基の廃炉を求める請願を採択した。原発の廃炉を要請する請願採択は全国初とみられる。】(引用ここまで) 5名の退場があったようですが、びっくりです。それにしても、東電、福島第一の5、6号機と、第二原発、動かすつもりでいるとは、そっちの方が驚きます。 http://www.kahoku.co.jp/news/2011/10/20111021t61003.htm ▼寄せられた情報 ▶4自治体 脱原発で交付金申請せず NHKニュース 44分の4ではありますが、確実に原発をめぐる攻防で地殻変動が起きています。少なくとも四つの自治体が、脱原発へと舵を切りました。闘いは前進しています。 原発に関連した交付金の問題点について「交付金でにぎわった町は、そのブームが去っても財政規模を元には戻せない。要するに発電所がないと、ごはんが食べられないような地域経済に変わってしまうところに問題があり、それを本当に『発展』と呼べるのか」と。 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111019/k10013374681000.html ▶園田政務官「福島第一5、6号機の水を飲む」と発言。 ここは「取り寄せ」なんてことではなく、現地へ行ってその場で汲んで、おいしそうに飲んでいただきたい。 http://news.ameba.jp/20111019-395/ (K) 東村山市、調査拡大 東村山市、狭山茶や高線量の小学校とあるので、調査をしなければということでしょう。関東圏が広く汚染されているのですから、どこでこのようなことが起きても不思議ありません。私たちのところはどうなのでしょうか、測っていませんから。(毎日2011.10.20 東村山、調査拡大) 今朝のニュースでやっていましたが、栃木県でキノコ、暫定基準値以上の値が出たキノコですが、もう売ってしまっていたそうです。このようなことも当然、あちらこちらで起きているのでしょう。 これまでの8~10Kmから20Km圏に拡大 これまでの防災対策重点地域(EPZ) から緊急防護措置計画範囲(UPZ)に変更するということです。医療機関など、影響が出るところ多く、大変だとTVニュースでもやっていました。一方、これまで原発に口を出せなかった自治体が出せるようになったと言っている自治体もあり、その意味でも流れは変わらざるをえないでしょう。(毎日2011.10.20e 原発防護20㎞圏に拡大) 恫喝が始まりました 夏が終わったら、冬です。言われていましたが、本格的にやり始めてきています。(毎日2011.10.20 今冬電力不足と) 学校給食、ミキサー検査を 内部被曝の不安もあるので、特に福島は検査した方がいいという意見です。空間線量も高い福島は、外部被曝との和を知ることが必要なので、ということです。(毎日2011.10.20 給食の検査を) 『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』(NHK Books)を読んで ▶つくられた電力不足。東電など電力会社・原子力マフィアの言うことを信じるな! NHK Books『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』(飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎共著)。そのなかに興味深いことが書かれています。原発関係の本が多く出ていますが、この本は電力問題に切り込んでおり、とても参考になります。一読を! 以下、本書から。今回は、電力不足デマゴギーに絞って、この本を紹介します。 * ▶「SPEEDはどうした」の問いに、「情報はスピーディーにお出しするようにしています」と? SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)があるにもかかわらず、これを使っての情報をすぐに流さなかったことが問題になっていますが、それ以前に、このシステムそのものが認知されていなかったといいます。事故直後に、河野太郎自民党衆議院議員が文科省に問い合わせると、何と「原発の情報はスピーディーにお出しするようにしています」と勘違い応対や、どこに回したらいいかわからず、どこの部署だとのやり取りが電話口から聞こえたといいます(『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』p69)。この程度だったのか、と情けなくなります。 ▶大口顧客契約の「秘密」 電力供給が足らなくなったら、即カットできる契約 計画停電が一時実施されましたが、これとて、根拠のない、いわば東電の「原発を止めたら停電になるぞ」という恫喝だったということがうかがわれるのです。 需給調節契約という大口契約者との契約(=相当な割引で)があるそうです。詳しいことは公表されていないのですが(なんでも民間の契約という逃げ口上で)、大口顧客には相当安い料金で契約しているようです(同書p70~、p216)。以下の3つの大口契約、覚えておいてください。 • 通告後すぐに使用制限する「瞬時契約(神戸製鋼所など23件) • 使用制限1時間前までに通告する契約(約500件) • 使用制限3時間前までに通告する契約(約700件) 多くの大企業はこれらで契約しているそうです。 これを見ていくと、変なことに気づきます。事故後、原発を止めると電気がなくなる──停電だ! 経済活動が停滞する、操業中に停電になったら経済がめちゃくちゃになる等の反応がありました。でも、これを読むと、電気が足りなくなりそうなどの事態が生じたときは、通告後、待ったなしから、通告後「1~3時間の後に止めますよ」と言えばいいものまであり、そうしたリスクの代わりに大幅の割引料金で買っている企業があるということです。もし、「そんなことないから」ということで契約をとっているのなら、まさに割引=大安売りするための口実づくりと言ってもいいと思います。 つまり、ピーク時にこれら大口顧客のところを止めれば何ら問題はないわけです。そうなったときのこと「想定外」などといったら、それこそ、今はやりのリスクマネージメントができていないといわれ笑われるどころか、会社の格付けが格下げになってしまうでしょう。そうしたことは一切隠して、足らない、足らない、節電だ、停電だと脅しまくっていたのが、事故後からの東電はじめ電力会社、経産官僚たちです。 ▶需給調節の利かない原発 電気、発電のシステム・構造を理解しないと彼らの思うつぼにはまってしまいます。電気は、車のガソリンを「節約」するのとわけが違うのです。今、節約(乗らないで)して、そのぶん後に回そうなどといかないのが電気なのです(同書p94)。とりわけ原発がそうです。需給の調整が効かないのです。動かしたら回しっぱなししかないのです。火力等は調整が可能と言います。 揚水発電、これは原発とセットで設置されているものです。原発で発電された電気が需要が下がったときの「電気の捨て場」として揚水発電所があると小出裕章氏(『原発はいらない』)は言っています。深夜の電気料金を低く設定し、オール電化の生活を宣伝したのもそのため。そして、この揚水発電所の建設費等も本来ならば、原発の発電コストに組み込まなければフェアではないのですが、これも勘定に入れず、安い安いと言っているのです。 ▶東西の周波数の違い等があるから…はウソ! また、各電力会社間の電力のやり取り、東西の周波数の違いが大きなネックになっていると喧伝されていますが、どうもこの本を読む限り怪しいです。私のところにたまたま大学の同窓誌が送られてきたので、そのなかの震災関係の記事を読んでいると、この周波数の違いに言及している個所があっありました。座談会での発言なのですが、この違いはなんら障害にならないと言っているのです。しかも、発言主は原発は必要という論の持ち主なのですが。 このように、契約条件、価格、システムなど、どれをとっても「いかがわしさ」がぬぐえないのが電力問題=原発問題です。そしてそこには、必ず「原子力マフィア」(原子力ムラ)が暗躍しています。本書では、知られたくない電力会社、原子力マフィア(原子力ムラ)の連中の実態と捏造された数値、賠償問題のからくりなどにも触れられており、これからのエネルギー問題を考えるうえで参考になります。 * それにしてもTVで見る飯田氏、おとなしすぎるのではと感じます。対して、児玉龍彦教授(東京大学先端科学技術研究センター)、笑顔がかわいいのですが、話していること、笑える話ではないのですが…。いえ、悪いと言っているのではないのです…。 | ||