原発通信 88号2011/10/26発行
連合会長・古賀、「私、脱原発なんて言っていません! 核は貴重なエネルギーです」 昨日の毎日新聞夕刊に連合会長古賀の『「脱原発」の意味』と題したインタビュー記事が掲載されていました。最初に一言、まとめて要するにと言ってしまうと、「そもそも脱原発なんて言っていません。国が責任持つというのならそれに乗ります。原子力は貴重なエネルギー源、野田ともエネルギーの話など一切していません。どうなるかわかりません」という寝ぼけた爺様のたわごと。そして、何でも人任せ、人のせいにする。 驚くべきは、あの福島第一のレベル7の大事故を前にして、三役が数回議論して、「こうだな」と決めたという話。この現実を前にして酒でも飲んでいるのかという体たらく──緊張感、危機感のなさを表しています。最後の方で、「野田さんとも枝野さんとも、細野さんとも話していません」と堂々と言っているところに、何が起きたのかということを理解していないということがよく表れています。情けないの一言、でもそれで済まないのが連合会長という肩書を持っている人だからです。 記者からなにを聞かれても、「でしょうね」「ですから」「よくわからないですね」「行っていませんね」「今からです」など、主体性のなさが見じみ出ています。見果てぬ夢を売るのが商売ならまだしもですが。 「脱原発」「原発推進」の二項対立で議論すべきではない」とも。原発問題は、生きるか死ぬか、将来に負の遺産を残すのか残さないのか、という問題なのです。足して二で割るような話ではないということです。 迷惑なのは、自尊心からか、もう誰も思ってもいないだろうに「連合は国民の縮図だ」などと見栄をはっていることです。こんな迷惑ありません。連合傘下の組合員なんてどれほどいるのか(烏合の衆ではただいるだけ、何の力にもなりません。役員たちの高給の源泉というくらいの話です)、どれほどの力があると思っているのかです(ちょっと言い過ぎか、でも多く人の感情はそんなところでしょう)。(毎日新聞2011.10.25e 連合古賀インタビュー) 発電コスト試算、相変わらず原発が安い? しかし除染費は考慮せず できもしない再処理も試算! どのように計算したか知りませんが、これとて初めに結論ありきでしょう。そもそも、これからどのようになるかわからない事故処理、補償、賠償問題、何を考えているのかという話です。新設炉での過酷事故発生頻度10万年に1回(IAEAの安全目標)と計算だと! この数字の意味ってあるんでしょうか? しかも、使用済み核燃料を再処理した場合のコストも計算したというのです。なんでそういう計算ができるのか、理解できません。「すべて再処理の場合」、割高の計算になっていますが、そもそも再処理なんてできないというのが明白になっているにもかかわらずです。 事故が起きたら(もう起きてしまっていますが)、地域経済、いや地域どころの騒ぎではなくなる。そのことの重大さを考慮して計算することなんて怖くてできないから、「このへんで」と割り切って、切り捨てているのでしょう。(毎日新聞2011.10.25e 発電コスト計算) 黒塗り手順書、スミ塗らないものを公開 まさにウソの上塗りだったということが分かりました。どうも、全電源喪失ということを考えていなかったから役に立たなかったということを隠すために、その部分をスミで塗っていたということでしょう。要は“次にここのスイッチを押す”や“ランプ確認”というところが塗られていたのです。だって、電源がなく、スイッチを押しても動かないし、ランプもつくはずもありません)。ところが、あの松本純一、テロにあった場合だのということをことさら持ち出してきました。「テロ」だの「テロリスト」などという言葉を使えば納得させることができるとでも思っていたのでしょう。(毎日新聞 2011.10.25スミ塗りなし手順書) スイス総選挙、脱原発を掲げた中道2政党が躍進 【右派から左派まで既成5政党は軒並み、得票率で07年の前回選挙を下回ったのに対し、経済成長と「脱原発」の両立を訴えた新しい中道2政党が躍進した。福島第1原発事故後、「脱原発」への政策転換を主導した社会民主党は、既成政党で唯一議席減を免れた。】(引用) 旗印は鮮明にというところでしょうか。でも、「二兎追うものは…」の感もないわけではありませんが。 http://mainichi.jp/select/world/news/20111024dde007030010000c.html こんな地図つくってくれた人もいます 2011年3月・4月・5月の合計の放射性セシウム137の都道府県別月間降下量の汚染マップ http://savechild.net/wp-content/uploads/2011/10/big.gif トルコ地震で、隣国アルメニアの原発に被害か 「トルコでマグニチュード7.2の大規模な地震、この地震でトルコの国境に接するアルメニアのメツァモール原発が被害を受け、放射能漏れを起こしたとイランラジオ(イラン・イスラム共和国放送はイランの国営放送)が報じている」そうです。 第4回 ドイツの脱原発論議──賛成・反対論 本稿は、この春に、別のところに寄稿したものを改めて収録したものです。ドイツも日本も賛成派・推進派の言っていることはそう変わりはしません。廃棄物処理の問題については触れないというのは同じです。(A) ドイツの脱原発論議──「HNA」紙(2011年5月7日付)による整理 現在ドイツで稼動している原発は17基の内6基にしか過ぎません。議論の経過を見ていると、脱原発に向けて時期が早まるような傾向になってきています。勿論、賛否両論がありますが、「HNA」紙2011年5月7日付に、分かりやすく議論を整理した記事が出ていますから紹介します。参考にしてください。 ポイントは、日本もドイツもあまり大きな違いはないと思うのですが、そこから別の結論が導き出されてくると言うところに、政治、社会風土の違いがあるように思います。この点をオープンにして、市民参加、取り分け原発事故被災者を加えた国際的に丁寧な議論を行なえば、大きな成果が引き出されるように思われます。福島原発事故は、企業、政治家、官僚による住民無視の強引な利権政治に終止符が打たれたことを証明しています。 電力会社の脅しは、原発がなくなれば「外国から電力を輸入しなければならず、料金が高くつく」と言うものですが、それを例えば「緑の党」は、「恐怖を煽るシナリオ」と批判しています。現状では、6基に減った原発でもエネルギー供給に支障は出ていないわけですから、電気料金値上げは、自然を利用したエコ電気にあるのではなく、市民から料金をかっさらっている電力会社にこそ原因がある、と。 ドイツ市民の60%が、料金が高くなっても速やかな脱原発の必要性を訴えていると言う、アンケート調査結果(Forsa-Umfrage)も出ています。 以下、「HNA」紙2011年5月7日付からの要約。 1.原発の安全性 賛成論: 原発の所轄機関である「ドイツ原発フォーラム」(Das Deutsche Atomforum – www.Kernenergie.de)によれば、ドイツの原発は国際的に定められた安全基準を充分に満たし、17基のドイツ原発は、国際原子力エネルギー機関の何重もの厳しい検査結果で高い安全水準を保っていると言う。仮に一つの安全メカニズムが壊れても、残りの部分で安全性を補足するシステムになっている。同時に、毎年、作業員の研修に高額な資金が投資されている。チェルノブイリのような事故が起きることはありえない。強度の地震に対しても安全性は確保されている。テロに関してもリスクはない。ただ、飛行機の墜落事故に関しては、補強対策が急がれる。 反対論: 原発反対派のDie Initiative Ausgestrahlt(www.ausgestrahlt.de)によれば、年間100-200近くの報告義務のある事故が起きており、惨事に至る可能性が充分にある。日本の事態が示しているのは、原発が稼動している限り、毎日リスクが大きくなり、30年間も経てば配線、配管等に傷みが生じ、その危険性は計り知れなくなる。飛行機墜落、テロ、ロケット攻撃に耐えられる安全性を、ドイツの原発は充分には備えていない。もし、重大な事故が起これば、住居地の過密なドイツではチェノブイリ以上の惨事を招くだろう。原発事故がなくても、近くに住む人間生活に与える影響は大きく、特に子供達にガンが多く検出されている。もっとも、これまでまだ、相互の因果関係について確かな調査結果は出されていないのだが。(www.bfs.de) 2.原発の経済性 賛成論: これまで建設されてきた原発で、大量の電力を生産してきた。他の石炭、風力、水力による電力生産に比べて、安上がりである。最新のドイツ工業同盟が依頼した学術調査(www.bdi.de)では、2018年初めまでに原発から撤退すれば電気料金が、一挙に跳ね上がる。「原発フォーラム」によれば、原子力電気が安上がりにつくのは、国家からの高額補助によるのではない。1956年来、原子力エネルギーの研究と開発に資金が投入されてきた。廃棄物処理と事故のときの損害賠償の費用を電力会社が負担している。 反対論: 社会が引き受ける補助金と長期のコストは、電気料金に全く算入されていない、とはグリンピースが依頼した学術調査(www.greenpeace-energy.de)である。彼らの計算では、原子力電気は12.8セント(キロワット/時)、風力電気は7.6セント(同)。ここに補助金が流れ、電力会社が廃棄物処理を引き受けなければならないので税金が免除される。更に、原発事故の可能性とその結果を前もって予測することはできないために、原子力エネルギー費用を正確に計算することは難しい。 3.原子力エネルギーと自然環境 賛成論: 石炭のような化石物燃料とは異なり、原子力エネルギーは気象にやさしい電力源である。原発の温室ガスCO2の排気量を全耐用年数を通して計算してみても、風力、水力発電と同様に気象にやさしい、と言うのはスイスの研究機関(Das Schweizer Paul-Scherrer-Institut und das Öko-Institut. Www.oeko.de)が行った学術調査結果である。計算では、原子力エネルギー1キロワット/時に含まれる5―33グラムのCO2には、原発建設、ウラン採掘、燃料素材製造に際しての排出ガスが含まれている。「原発フォーラム」によれば、原子力エネルギーは気象保護を実現する。原発なしに、ドイツは2020年の温室ガス排気量は8%高くなっているはずだ。その時は、石炭による電力生産を必要とするからである。ここが一番のポイントになる。電力は24時間供給される必要があるからだ。 風力、太陽エネルギー等の代替エネルギーは、まだそれをカバーできるまでには達していない。電力をプールする面での可能性が欠けている。 反対論: ウラン採掘は人間と自然に被害を与えると言うのは、ミュンヘンの自然環境研究所。鉱石に含まれるウランの割合は、単に10分の1(?U235は1%弱、阿部)にしか過ぎないが、大量に採掘され加工されなければならない。その際に、毒性で放射能を浴びた副産物が産出される。肺ガンの危険性が、それによって鉱山労働者に顕著に高くなることを、放射線保護ドイツ連邦局が、旧東ドイツの労働者を検査することによって証明している(www.bfs.de)。原発から出る高度な放射線廃棄物が、どれだけ長期間にわたって埋蔵される(Gorlebenの例)ことが出来るのかは、今のところまだ説明されていない。原発廃棄物の危険性は、10万年以上にわたる。 現在まで6000トンの放射線廃棄物がドイツにあるが、原発の稼動期限が切れるまでに、この量が2倍になる。 4.エネルギー政策の将来 原発賛成論: 「原発フォーラム」によれば、原子力エネルギーは代替エネルギーにとってのまたとないパートナーだと言う。全電力が風、水、太陽から供給される時点まで、原発はそれまでの「中継ぎテクノロジー」として適している。(www.kernenergie.de) 代替エネルギーの問題は、しかし、気象状況の悪い時など、例えば北海が凪になった時には、必要な電力を確保するために別の発電力を短時期に始動させなければならなくなる。反対論者は、原発はそれに適さないと言う。なぜなら原発は、状況に対応できずただ恒常的な電力供給が出来るだけ。 それに反論する学術調査が、原子力に関するインターナショナル誌に掲載され、ドイツの17基ある原発は、技術的にはもう既に、短時間の間に電力量を調整できるように設備されている。 原子力エネルギーは、全ドイツに送電網が確立されているが、風力エネルギーとなると、海岸で電力が生産され、それが全土に送・配電されなければならない。その計画案は、まだ充分でないことを原発批判者自身も認めているところである。(www.umweltrat.de) 風力、水力、ソーラ電気の拡大には、また送・配電のネットワークが確保・拡張されなければならない。 反原発・代替エネルギー論: 「中継ぎテクノジー」としての原発は必要がない。((www.umweltrat.de) 2050年には、全電力が代替エネルギーで賄えるようになる。原発稼動の延長も、新たな石炭発電所の建設も必要がない。代替エネルギーへの転換の最大の課題は、ドイツ内のみならずEU内の送・配電ネットワークの拡張と電力の貯蓄にある。新しい電力生産と古い発電所(原発)の組み合わせは、効果的でなく、高くつく。現在稼動しているドイツの原発は17基の内ただの6基。しかしこれまで、外国から電力を輸入する必要性は出ていない、と批判するのはÖko-Institut(www.oeko.de)。 それとは対照的に、少量の電力が輸出され、多量の電力が石炭発電所で生産されている。原子力電力は、稼動期間が長くなれば安くはならないことを、ドイツ自然環境省の学術調査で述べている。 電力取引所の価格は、丁度需要される電力量を生産するために必要とされる発電所に規定されて決められていくわけだから、原発がより安い電力を生産すれば、収益はそこに流れ、消費者には利益がなく、ただ電力コンツェルンが得をするだけ。 (注:原発が「中継ぎテクノロジー」にはならず、代替エネルギー開発がそれによって阻害される) | ||