原発通信 91号2011/10/30発行
NHK「あさイチ」に重大疑惑発覚! 流浪の民にされた福島第一原発立地の住民は 「だからどうなんだ」ということかもしれませんが、事故が起き、原発周辺の住民避難がありました。しばらくしてから思い、気になっていることがあるのです。福島第一原発がある町のことです。 福島第一原発は、大熊町(1~4号機)と双葉町(5、6号機)にまたがってあります。交付金で箱モノばかりつくってはみたものの維持費が賄えなくなり、町長の給料も払えなくなった双葉町。東電に7~8号機をつくってくれと懇願した町として有名になりました。前福島県知事の佐藤栄佐久さんの言葉では「原発の後は原発で」ということです。しかし、3.11の大津波で原発はメルトダウンを起こし、大量の、広島型原爆168発分もの放射性物質がまき散らされました。双葉町の住民はバスに乗って「さいたまスーパーアリーナ」、そして廃校になった旧埼玉県立騎西高校へと避難。大熊町は会津若松市へ、もう半年以上が過ぎました。 大熊町に何が… 大熊町です。大熊町全域はまさに「死の町」(これ、鉢呂経産大臣がこう発言して首になりました。じゃあ、ゴーストタウンとでも言い換えてもいいのですが、同じでしょ)。今回の原発事故で最も被害を受け、「故郷を追われた」方々なのですが、なぜか、マスコミに登場してきません。日テレやフジテレビなどが大好きなお涙ちょうだいものの企画になると思うのですが、なぜか取材されません。出てくるのは双葉町とその町民です。ニュースを聞いていると、福島第一原発、それも事故を起こした1~4号機は双葉町にあるのではないかと錯覚するくらいになってしまうほどです。時々載る地図でも双葉町。大熊町はどこへ行ってしまったのか。 私がたまたま見ていない、知らないということなのでしょうか。それは、大火で焼けだされたのは自分や自分の町なのに、隣町やそのまた隣町の人たち(焼け出されていない)が“同情”されているような構造です。 最近、つれあいがテレビで大熊町から避難している人たちがインタビューされていたよと教えてくれました。それによると、とても豪華なホテルに避難しているとのことでした。たまたま、お金がある方で、そこで避難生活を半年にわたってしているだけの財力がある方だったのでしょうか。 どうされているのか気になり、ネットで検索してみました。Googleでもyahooでも同じ、双葉町は83万4000件、大熊町は45万1000件がヒットします。この倍近くの差はいったいなんなのでしょうか。 ダチョウと原発と… 最近、原発近くの線量がどうのというテレビ番組を見ていたら突然ダチョウが映ったのです。ん~ん、なぜ?と、動物園から逃げ出した?かなと。しかし、ネットの書き込みによると、なんでも、このダチョウ、原発は安全との象徴で大熊町に連れてこられたのだとあたりました。ダチョウは少ない餌でも飼育できるらしいのです。少ない餌? 大きな体?……、そう、少ない燃料(ウラン)で大きなエネルギー=電気を生む原発という連想ゲームみたいな話だというのです。 原発事故で故郷を追われ、これから数十年間は戻れない(いや、もっとか…)といわれています。そんな過酷な状況に置かれた大熊町の人たち、気がかりです。そんな大熊町に何があったのでしょうか。 * と、思っていたところ、今朝(10月30日)のNHK『あさイチ』に会津で避難生活しているという大熊町の家族が映っていたのです(都合で、途中見られなかったのですが)。会津の旅館での避難生活が続いているとのことです。この家族のことはよくわかりません。ただ、岩手や宮城で避難所が先日、閉鎖され、これからの生活を心配されている被災者、また、仮設住宅へ入れたとしても隙間風、結露、断熱不足と苦労されている方々が報道されていました。食事も…。そのような被災者のことが気になります。それに対し、大熊町の原発事故避難者との差はいったいなんなんだろうと思ってしまうのです。避難者の処遇は、各自治体に任されているとのことですが、すると大熊町に何が…。 それともう一つ、汚染土壌などの処分について細野環境相が福島へ出向いて説明を行ったとのこと。そこで大熊町町長のインタビューが出ていましたが、南相馬市の桜井市長の切実さをもっての話と、なにか非常な温度差を感じてしまうのです。ここでも、いったい大熊町に何が…、と考えずにはいられないのです。 ここ1週間ほどの間で気になることのひとつ――“福島応援キャンペーン” テレビ(といってもNHKが多いのですが)での「福島応援キャンペーン」がとみに目につきませんか? 登山家の田部井さんによる“応援登山”、福島の温泉、農産物の紹介などいろいろあります。芸能人も福島へ行ってキャンペーンに加わっているようです。今日(10月30日)のNHK『あさイチ』では、わざわざ福島現地からの放送です(福島キャンペーンと銘打っています)。農産物の放射能汚染、汚染地域の除染、さまざまなことがあるのにもかかわらず、3.11以前、原発事故などなかったかのような、“日本の原風景”がここにあるというような扱いです(現に今朝の『あさイチ』ではそう紹介していました)。原発と地震・津波がいっしょくたになっているのです。 日本の原風景、豊かな福島(だった?)、それはそれでいいのでしょうが、情緒的に流されてしまいかねないのです。原発問題については、情緒に訴えるというのは“禁じ手”だと私は思っています。現実・事実を見えなくさせ、そこで思考が停止されてしまうのです。何も悲観主義的に見ているのではありません。でも、これっていいのかと思ってしまうのです。福島キャンペーン、何かそこに意図を感じてしまうのは考えすぎでしょうか。 応援キャンペーンを行なっている方々、「善意から」というところが怖いのです。そのことに対して何か言えない雰囲気づくり、「福島の野菜はちょっと…、コメも…」などということすらためらわれるような勢いです。そう、すると、原発事故ってなんだったのだろうとなってしまうのです。「地獄への道は善意で敷き詰められている」という先人の言葉がありますが、取り越し苦労(?)でないことを…。 『あさイチ』の話題が続きます。 重要! 注意! 10月17日放送のNHK総合、朝の人気番組『あさイチ』 「放射能大丈夫?食卓まるごと調査」データの疑惑! 測定したのは、なんとあの首都大学東京の福士政広教授だった! 何と何と、福士センセイ、問われて「機械が故障していた」だと!! ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。私もちょっとだけ見たのですが、えっ!ホントかい? じゃあ、カラ騒ぎだったとでもいうのかいと思った次第です。立命館大名誉教授の安斉さんが出ていたのですが…。ところがところがです! 【ところが、一方で、「データが変だ」という声も広がりました。当ブログにも、『あさイチ』のデータに関するコメントを頂き、さっそく、NHKのホームページに上がっているデータを見直してみて、ビックリ。】 【測定を担当した首都大学東京の福士政広教授もNHKも、「精度の高いゲルマニウム半導体検出器を用い、通常よりも時間をかけて綿密に調べた」と自信満々でした。しかし、まず不思議なのが、専門家中の専門家であるはずの福士教授が、「セシウム137とセシウム134が一緒に出ない」「カリウム40の値が高すぎる」と疑問に思わなかったのでしょうか?NHKもNHKで、多くのスタッフが関わっているはずなのに、誰一人としてその疑問を持たなかったのでしょうか?】 【あるジャーナリストが、福士研究室に尋ねたところ、「機械の故障等で正確なデータではなく再分析中」という、とんでもない返事が返ってきたようです。故障した機械で取ったデータを全国放送に流すか!それも自信満々で。この記事を見た時、手が震えるような怒りをおぼえました。】 NHKは、ホームページ上で再分析を行っていることを明らかにしています。 ▽あるジャーナリスト 【いい加減なデータで安全をPRしたNHKは質問状に対し返事をせず、NHKのサイト上からデータをこっそり消した。(消された測定データはPDFダウンロード可)】 ▽NHK 【番組で行った『食卓まるごと調査』について、視聴者の皆様から多くの反響をいただきました。その中で、データの精度についてのご指摘もありました。そこで現在、調査を担当した首都大学東京と、外部分析機関の協力を得て、データの再検討を行っています。結果が出次第、改めてホームページで公表いたします。】 http://nucleus.asablo.jp/blog/ * この番組では、野菜など、西日本に単身赴任している夫が東京に帰ってくるとき向こうから買ってきてもらっているご家族が紹介され、この測定結果を見て、「じゃあ、もう頼まなくていいんですね」などと安心していました! これ、犯罪的行為じゃないでしょうか! 工程表―30年で廃炉、そんなこと確約できずと 原子力委員会中長期措置検討専門部会の山名元・京大原子炉実験教授、廃炉に30年以上を要するとの工程表に、「現在は炉心内の核燃料を視認できず、工程達成は確約できない」と述べたそうです。そうすると、先日、大見出しで30年後に廃炉だといったのは、やはり根拠なしです。そして、このような記事(こっちがよほど大事)は小さくです。(毎日新聞2011.10.29 工程表達成確約できずと) また、例の手順書ですが、2、3号機も手順書通りにはいかなかったということを東電は認め、保安院へ報告とのことです(毎日新聞2011.10.29東電、手順どおりは一部)。もう、何を言っても信用できないということ、あらためて確認できます。 エネルギー白書から原発=基幹電源の記述削除 政府は、2010年度のエネルギー白書を閣議決定したとのことです。そして、「これまでの政策を反省し、聖域を見直す」と明記し、原発=基幹電源や核燃料サイクルの早期確立、高速増殖炉の早期実現などの文言が削除されたとのことです。これ、ほとぼりがさめるまでとならないように願いたいものです。(毎日新聞2011.10.29 エネルギー白書方針転換) 「蒸し返す必要などない」「寝た子を起こすな」、早く原発は安全とハンコを押せ 毎日新聞で「この国と原発」の第3部の連載が始まりました。なぜ、安全基準が過小に評価されていったのかを追う記事です。事故後、後悔しているとのことですが、大竹政和・東北大名誉教授は言います。「(国や電力会社は)原子力は安全だと言ってきたのに、リスクがあるということになるとやりにくい。リスクに光を当てることは『禁忌』だった」。すべてがここから始まるということです。この人、神戸大の石橋さんや、中田高広島工大のグループが島根原発で断層を指摘した際、「周知の事実、検討した。蒸し返す必要はない」などとした本人です。ちょっと長い記事ですが、読んでいただければと思います。(毎日新聞2011.10.28 この国と原発第3部①~③、同10.29③) セシウムの流出は東電発表の30倍!と、フランス研究機関 89号でネイチャー電子版の記事を紹介しましたが、フランス放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)は、10月28日までに福島第一原発事故で海洋に流出したセシウム137の総量を約2.7京ベクレル(2万7000テラベクレル)と推計したとのことです。その数値は東電発表の30倍にもなります。その82%が4月8日までに海洋に流れたといいます。 読売新聞が報じた27日の記事と数値が違います。こちらは「太平洋上空に」となっていますが、IRSNは「海洋に」といっています。その違いなのでしょうか。(毎日2011.10.29 仏、Cs流出は30倍) 以下は、時事通信の記事 【パリ時事 フランス政府系の放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は27日、東京電力福島第1原発事故後の3月21日から7月半ばまでに海に流出した放射性セシウム137の総量は2.71京ベクレル(1京は1兆の1万倍)で、東京電力が6月に発表した推計値の20倍に達すると推定した調査報告書を公表した。単独の事故によるものとしては過去最大規模という。このうち82%は、事故が起きた原子炉を冷やすための放水によって4月8日までに流れ出たとされる】(2011/10/28-06:36) 第5回 「Spiegel」37/2011 「被爆者労働者ムラ」 週刊誌「Spiegel」37/2011に被爆労働者の記事が出ていました。少し前になりますが、原発で働く労働者の現状が詳しく書かれています。4ページの長い記事になります。要点をかいつまんで報告します。 タイトルは、「被爆者労働者ムラ」。小見出しで「グラウンド・ゼロの入口」と書かれています。記者はここに入り、取材しています。 【要 約】 1. J-ヴィレッジが、現在では立ち入り禁止地域になり、福島原発の修理作業に従事する人たちの「被爆労働者ムラ」になっていると言います。毎日、ローテーションで1000人以上の人たちがここから原発修理に向かい、作業後には帰ってきます。放射線を浴びないように装備して、帰ってきたら線量を測定し、着衣を全部まとめて廃棄します。それは莫大な量になり、元のサッカー練習場に山と詰まれて置き去りにされてあります。 2. 作業員へインタビューしています。そのうちの一人は、J-ヴィレッジで何が起こっているかを知る権利が市民にはあるので、インタビューに答えてくれたといいます。しかし名前は匿名にしてほしいといいます。緊急を要する日には、3000人以上の人たちがこの線量測定ステーションを通過します。日本の原発で仕事をする人たちの最大限の放射線量は、通常、50ミリシーベルトと決められています。しかし、Tepco(=東電)はその上限を250ミリシーベルトまで上げました。癌になる危険性は、明らかに高まることになります。 3. 3月11日以降、1万8000人の作業員が原発事故を食い止めるために動員されたことになります。そのほとんどはTepcoの従業員ではなく、「パートタイマー斡旋所」の仲介による下請け会社からのものです。彼らの大半は、すでに原発で汚い、危険な仕事を経験した人たちです。彼らは日本を救うためにこの危険な仕事を選んだわけではなく、家族を養っていくためです。 4. 特に高熱の中でマスクをつけた作業は息苦しくなるといいます。禁止されているのに仕方なくマスクを外し、タバコを吸う人が出てきます。線量の高い場所では、一日1時間、最高で90分と決められた仕事もあります。そこで働く人へのインタビューです。彼は家族には、福島原発で仕事をしていることを話していないと言います。家族が心配するからです。彼はお金が必要です。一日で100ユーロ弱を稼ぐことができるからです。何週間かすれば、線量の上限に達しますから、その後どうなるのかは、彼にはわかりません。 5. 別の作業員へのインタビュー。仕事に就ける二つの可能性があります。J-ヴィレッジで数時間、低線量のところで働くか、福島第一で短時間、しかし10倍100倍の支払いの良い仕事をするか。彼は高校を卒業してすぐから、30年間原発関係の仕事をしてきたといいます。原発に近い彼の生まれ故郷には、それ以外の仕事がなかったからです。家族は避難しています。事故以降、ここに仕事に来たのは、気に入る、気に入らないではなく、原発がこの地域にたくさんの職場をつくってくれたことへの責任感からです。 6. 作業員は、ほとんど限界状態にいます。仕事と同時にメンタルな面でも。ほとんどの仕事は、汚く危険なものばかりです。多くの同僚は、下請け会社の作業員だから、他の選択肢がないのです。もし、「いやだ」と言えば、どこで別の仕事をもらえるのか。誰も日本のために働いている人などいない。すべてはお金のためにです。 7. 原子力安全・保安院(NISA)の内部資料によれば、来年以降、1000人から1200人の専門作業員が足りなくなる恐れがあると言います。これまでの多くの作業員の線量が上限に達しているからです。この解決は、しかし、従来の線量の上限を上げることです。 8. 8月中旬までに、保健省は1万7561人の作業員の線量検査をしたといいます。そのうちの6人は250ミリシーベルト、400人以上は、許容されている50ミリシーベルトを上回っていたといいます。その作業員を、Tepcoは把握していません。結果は、3月から7月まで原発で仕事をした88名の居所がつかめていません。Tepcoが、個人的な面接をしないで,下請け会社に作業員リクルートを一任したからです。作業員には、正式な雇用契約もありません。日本原子力産業フォーラムのToshiro Kitamura氏(富岡町在住の原子力産業協会参事の北村俊郎さんのことか―A))は、すでに2008年、こうした不透明な、下請けを使った原発作業を批判しています。安全性のリスクが高い。 9. いわき市の市会議員Hiroyuki Watanabe氏(注:渡辺博之さん・共産党のことか―A)へのインタビュー。Tepcoは、一日1000ユーロまでの賃金を予定しています。しかし単純作業は、せいぜい100ユーロにしかなりません。貧しい、年配の男性には固定した仕事がありません。また別のオプションもありません。線量の上限に達したものは仕事を失い、「パート斡旋所」はその代わりを見つけるので、状況に変わりはありません。そこで彼は、すべての作業員がキチンと支払われることを要求します。また、最下層の作業員には組合がつくられるべきで、何か問題があればすぐに相談できるようにすべきだといいます。 10. Iwaki-Yumoto(いわき湯本)にあるレストランに、7人の作業員と同行した(記者の)一人は、その様子を次のように伝えています。「ビール、酒を飲んでタバコをたくさん吸った。はじめは原発について誰も話さなかったが、その内に口にするようになった。そして、家族のこと、放射線を浴びる心配について、またその結果について話をした」。 11. この町は温泉で賑わっていたが、今では、観光客は来なくなっています。しかし温泉は、作業員で一杯になっています。ここに1000-2000人の作業員が寝泊まりしています。(以上) * パーレン内、補足したところあります。事実と若干違うようなところがありますが、日本、福島第一原発事故がどのように見られているのかを、知る・理解するうえで参考になるかと思います(A) | ||