原発通信 110号2011/11/29発行
吉田昌郎福島第一原発所長入院 ▶08年に、大津波が想定されるとの評価結果に「あり得ぬ」と対策講じず 福島第一原発の吉田所長(56歳)が入院したといいます。11月28日付の毎日新聞によると、2008年に東電社内で福島第一原発にこれまで想定していた津波5.7メートルを大きく終える10.2メートル、浸水高15.7メートルの津波が押し寄せる可能性があるとの評価結果に、そんなの来るはずないと主張し、何の対策も施さなかったことが明らかになったといいます。その理由、東電何と言っているかというと、「学術的な性格が強く、深刻に受け止める必要はないとの判断」だったといいますから恐れいります。そして、このことが明らかになっても、「軽視や放置をしていたわけではない」としています。 しかし、この件については、27日に放映された【NHKスペシャルシリーズ 原発危機「安全神話~当事者が語る事故の深層~」】での東電元幹部の「反省」の言と異なっています。番組では「カネがかかる。そのカネ誰が出すんだと考えるとやらないという選択をする」という意の発言をしていました。で、吉田所長ですが、この責任、大いにありなのです。これ、東電内の原子力設備管理部で行っており、この部の発足当時から昨年2010年6月まで、吉田所長が部長を務めていたというのです。 「学術的性格が強く、深刻に受け止める必要ない」とは、どういうことでしょうか。こんなこと言っていると、そのうち辻褄が合わなくなるということ、わからないくらい「井の中の蛙」なのでしょうか。(毎日2011.11.28東電、08年に大津波想定) NHKスペシャルシリーズ 原発危機「安全神話~当事者が語る事故の深層~」 この番組キャスターの小貫武さん、ここ何回か紹介している『日本海軍400時間の証言』(新潮社)の著者、取材スタッフです。放映された内容は、たいして新しいことはなかったのですが、当事者たちが自分の口でカメラの前で話したという意味はあります。安全神話、これ、三段論法でものを考えるとこうなるという見本みたいな話でした。海軍軍令部連中と全く同じだということわかります。 ついでに、毎日新聞11月27日の書評欄に『「写真週報」に見る戦時下の日本』(保坂正康監修、世界文化社)という本の書評が載っていました。池内紀さんの評です。「見たくもないものは見ず、聞きたくないものには耳をふさいで、どんな空疎であれ、スローガンを受け入れておく。そんな処世術的ズルさ。フクシマの原発事故以後の経過にてらしても、日本人は少しも変わっていないのではあるまいか」と。まったく同感です。 蓮池透さん『私が愛した東京電力』 と、同時に蓮池透さんの『私が愛した東京電力』に書かれてあることを思い出しました。 蓮池さんによると、東電内の原子力関係の部署では移動がほとんどないと言います。原子力部門へ配属されたならばずっとその関係部署だといいます。そして、蓮池さんが配属された原子力開発研究所には「変人」(いわゆる“イッちゃった人”――蓮池)が多いともいうのです。残業で残っていると、夜中に窓を開け遠吠えしている者、所長室の前に行ってテニスラケットを素振りしたり、ストーカーやいきなり会社の机の上で墨と硯をだし書道を始める者などがいたそうです(p68)。 それより、えつ!と驚いたのは、福島第一原発、よく言われていますが、自前で原子炉はつくれなかったのですべてGMのコピー(これもNHKの番組でいっていました。仕事は英語の設計図やマニュアルを日本語にすることだったと)で、変更したりするとそこを書き換え保存するというのですが、あまりに膨大になって、保管義務のないものは捨てる理屈をつけ(これ、はやりの断捨離と同じでは)、たたりがないようにお祓い(焼納祭)までしたということです。そして、すべては「何も起こらない」という「世界」に入り込み、そして考えなくなっていくと言っています。 ところがです。実は、今現在は、かつての原発先進国であった(そう、あった、です)米国、その原子炉メーカーはリストラが進んで今や自前で圧力容器すらつくれず、日立や東芝と共同でなければ原発を受注できないといいます。だから、30年ぶりかで新規に原発を米国がつくることになりましたが、東芝が関わっているのです。東芝がウェスティングハウス社を買収したことは前に紹介しました。また、伊藤光晴さんの話として英国の原子炉メーカーの話も紹介したかと思います。 ETV特集「海のホットスポットを追う」 http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2011-11-27&ch=31&eid=29463 上記のNHKスペシャル番組を見た後で、すぐに切り替え見たのですが、最後の方少ししか見られませんでしたが、黒潮より陸側に、沿岸流という海流が北から南に向かって流れているという話と、河川が海に流れ込んでいるが、地球の自転の関係で時計回りに渦を巻いている。その流れにセシウムなどが乗って南下していると言っていました。それを見ると福島から、銚子までは、ほとんど汚染地帯という感じでした。あの事故後、自前で測定器をつくり自動車で福島県内を走り回り線量を測定した岡野眞治さん(放射能測定研究者)が出ていました。岡野さんいわく、海底にいる魚は要注意ということです。 そして、福島県内の各漁協は、放射性物質の検出が依然続いているとして年内の操業再開を断念することを決めたといいます。 細野事故相、大丈夫か? 11月28日付の毎日新聞風知草(山田孝男)によると、もんじゅの存廃をめぐる攻防で、「マスコミの表面でこそ廃炉派が優勢だが、政策の決定権は推進派が握っている。推進派は騒がない。その沈黙には『言うだけ言わせておけ』という含みがある」と言います。だから、細野は明言を避けたと。そして、「抜本的に見直す」という宣言は、「後はよろしくお願いします」という仕分け人の希望表明だとも。 では、なぜ。山田は言います。「仕分けを所管する行政刷新会議に原子力委員会の上部組織エネルギー・環境会議(議長・古川元久)がくぎを刺したのだろうと。「原発の賛否に踏み込むな」「来夏の真原子力政策大綱がまとまるまで騒ぐな」と。そして、今、「無駄を省いて開発を」という論者が巻き返しを図っているとも。 最後に、自民党河野太郎のデータ、いずれにしてもこのまま推移すれば「後6年弱で使用済み燃料プールは満杯になる」と。このことは蓮見透さんも指摘し、黙っていても原発は立ち行かなくなるといい、彼の持論、「フェイドアウト」しかないと言っています。しかし、同様に、止まったからと言って、この高レベル核廃棄物は消えてなくならない、このことが大問題であると。 スリーマイルの専門家、収束までに訓練された10万の作業員が必要と NHKの今朝のニュースによると、32年前の1979年3月28日に深刻なメルトダウン事故を起こしたスリーマイル島原発事故の収束作業に当たった専門家が、東京で開かれたシンポジウムで講演し、福島第一原発の収束作業には「信じられないような努力と、訓練された10万人規模の作業員が必要になる」などと指摘したといいます。このなかで、日本人の質問が、収束までどのくらいかかるかとの時間(期日)を問題にしたのに対して、彼らから「期日の問題ではない、急ぐべきではない。その間、ロボットの開発などをして、人が近づけないところでの作業を行うことを考えたほうがいい」とか言っていました。要は、「焦ったってできないんだから、落ちついてやれ。いつまでにというよりしっかりやることの方が大事」ということです。どうしてこういうことになると腰を落ちつけてできないんでしょうか。画面で見ると、東大の岡本孝司、御用学者の北大の奈良林直が映っていました。 「健康都市ヒロシマ」と中川―小佐古らのライン 昨日お伝えした中川の件「健康都市ヒロシマ」についての続きです。 朝日新聞11月29日付の連載「プロメテウスの罠」に内部被曝のことについて書かれています。広島の原爆症をめぐっての裁判で被ばく者側に立って大きな役割を果たしたという肥田舜太郎さんの話が出ています。「国の内部被曝は無視し得る」という主張に反論し、大阪地裁で被ばく者側が勝利、国の控訴は棄却。その時、国側に立ち、証言した男が、福島の事故後、泣きながら会見したあの小佐古敏荘です。その男が大人も子供も同じ年間20ミリシーベルトと被ばく線量基準を国が決めたことに対して、泣きながら「私のヒューマニズムから受け入れがたい」と語ったのは記憶に新しいでしょう(彼のヒューマニズムについてはおいとくとして)。 肥田さんは言います。「66年前の原爆の話が今もこじれているんだ。福島でも、また同じことが繰り返されるかもしれない」と。そう、このヒロシマの問題、放影研の継続調査打ち切りが絡んできます。中川―小佐古らのラインが見えるのです。 下水汚泥処理にあたっての留意点、国交省が公開 国交省の有識者検討会は汚泥を保管、焼却処理する際の留意点をまとめ公開したとのことです。以下、アドレス http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000165.html ▼寄せられた情報 基準値超えセシウム米、遂に消費者へ 朝日(電子版)より。これに騙されてはいけません。実際はもっととんでもない事態が進んでいます。 http://www.asahi.com/national/update/1128/TKY201111280600.html ソースは、11月28日食品中の放射性物質の検査結果について(第258報) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001wbeo-att/2r9852000001wfu4.pdf 実際は最高1270ベクレル (福島市 旧小国村) マスコミは意図的に汚染被害を隠し、「安全」を強調していますが、これはかえってこの国の農業全体を殺すことになると私は考えます。すでに、ネット上では汚染米の行き先について、「汚染ベイ」に変わるから…、飼料になって全国に拡散!等、笑えない書き込みが数多く見られます。 政府は「風評被害」を言う前に、風評の出ない体制作りを迅速に進めるべきでした。大体、500ベクレル以下と言う新基準値がそもそも常軌を逸してます。 「放射線防護基準は年間1ミリシーベルトを基本とする。水、牛乳の規制値は10ベクレル/リットル、野菜は100ベクレル/キログラムとする」 これは政府が事故後示した「基準値」(非常時)でした。それが何故500ベクレルに!? 500ベクレルにしたら福島で農業を続けさせられると小賢しい農水官僚が考えたから?。 この場当たり的な姿勢、賠償問題を回避しようとする「見せかけ」の安全宣言がこの国の一次産業全体を死に至らしめることになるのです。チェルノブイリを想起すれば、政府は早急に相当地域を「立ち入り禁止区域」に設定する以外になく、農業など未来永劫無理だということをはっきりと言うべきなのです。 悲しい現実ですが、それ以外に風評被害を最小限にとどめ、この国の一次産業を守る手立てはありません。(K) (ここまで) ▼関連記事 ▶<放射性セシウム>福島市のコメから規制値超630ベクレル (毎日新聞 11月16日(水)21時58分配信、以下引用) 政府が出荷停止検討 福島県は16日、福島市大波地区産のコシヒカリ(玄米)から国の暫定規制値(1キロキロ当たり500ベクレル)を超える放射性セシウム630ベクレルを検出したと発表した。コメの暫定規制値超過は全国で初めて。政府は同地区のコメを出荷停止にする検討を始めた。【清水勝、佐々木洋】 県は同日、大波地区の稲作農家154戸に出荷自粛を要請。厚生労働省は県に対し、同地区や周辺で収穫したコメのサンプル検査の強化と、既に流通したコメの追跡調査を要請した。 県や市によると、今月14日、地区内の一農家が自宅で消費するために保管していたコメの安全性を確かめようとJAに持ち込み、簡易測定器で測定。高い数値が出たためJAが福島市に連絡し、県で詳しく検査した結果、玄米で630ベクレル、白米で300ベクレルを検出した。農家はこのコメの出荷も予定していたが、まだ市場には出回っていないという。 大波地区は東京電力福島第1原発から約60キロ離れた中山間地で、154戸の稲作農家がある。原発事故による放射線量が比較的高く、福島市は10月18日から地区の全世帯を対象に、本格的な除染作業を進めている。この農家の水田はくぼ地にあり、沢水を使っているといい、周囲の放射性物質が蓄積された可能性があるとみられる。コメは収穫後に天日干ししていたが、市は「セシウムの濃度が高かったこととは関係がない」としている。 原発事故を受け、政府は17都県を対象に収獲前の予備検査と収獲期の本検査を実施。大波地区では9~10月に予備検査を1地点、本検査を2地点で行い、検出値は28~136ベクレルだった。県内すべての検査が終了し、佐藤雄平知事は10月12日、県産米の「安全宣言」をしていた。 厚労省監視安全課は「予備検査と本検査で何カ所も調べ、すべて規制値以下だったのに、なぜ今ごろ規制値を超えるコメが出るのか。消費者の信頼を得るには、いったん出荷停止とし原因を究明する必要がある」と話している。(ここまで) * コメの話だけに終わりません。肉牛についてもとんでもない状況であったということが報じられています。(明日お知らせします) 都民投票の実施が延びます。 都選管、「請求代表者証明書」の交付、いつになるか確約できないと! 毎日新聞には、「都民投票」に関する記事ありません! 東京新聞は当然としても、朝日も社説、そして本日(29日)も取り上げていますね。 | ||