原発通信 113号2011/12/02発行
●2002年に経産省と東電、「六ケ所村」から撤退を合意していた 今日の毎日新聞12月2日付のトップ記事です。 同記事によると、トラブルの続発や2兆円超に建設費が膨らんだので、「東電の荒木浩会長、南直哉社長、勝俣恒久副社長と経産省の広瀬勝貞事務次官(いずれも当時)らが撤退の方向で検討することで合意し、再協議することを決めた。しかし3カ月後、東京電力トラブル隠しが発覚し、荒木、南両氏が引責辞任したことから実現しなかったという」ことです。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111202-00000003-mai-bus_all ●「もんじゅ」、推進派からも批判 11月30日に開かれた原子力委員会「新大綱策定会議」で推進派からも批判が出たとのことです(東京新聞12月1日付)。 推進派の山名元(はじめ)京都大教授「(ナトリウム漏えい事故以降)15年余動かないというのは、原子力機構の取り組みに何か足りない部分がある」。もう一人、山口彰大阪大教授「開発の体制や組織の議論は避けられない」 反対派は当然、「本格的に動く前から老朽化しており、撤退を決断すべきだ」とは原子力資料情報室の伴英幸共同代表。 ●今月16日に、野田首相「冷温停止」を表明? 「現在の状態は『注水停止』とでも言うべきだ」とは九州大・工藤和彦特任教授(朝日新聞11月17日) 「本来の”冷温停止”は、圧力容器を開けても放射性物質が放出されない状態を指すもので、第1原発に適用すべきではない」とも工藤和彦特任教授は言っています(毎日新聞10月22日) 下に張り付けてあるYouTubeを見てください。これでも「冷温停止」できたというのでしょうか。 ●今度は、2号機で冷却装置停止、窒素も入らない 本通信109号で、4号炉で冷却装置が緊急停止し、原因がよくわからないが再稼働させたが、また停止したということをお知らせしましたが、今回は2号炉で同じことが起きたといいます。それも4号炉と同じで、なぜ止まったかわからないまま再稼働させたが、また止まってしまったということです(毎日新聞12月2日付)。 もう一つ、2号機に関係します。東京新聞12月1日付によると、水素爆発を抑えるために各炉に窒素を注入していることはご存知かと思いますが、1、3号機は安定して入っているが、2号機は安定していないので中断し、調査に入ったといいます。 ●うごめく原発輸出問題 史上最大、最悪の事故と言われている福島第一原発事故の収束も見えていないなか、原発を輸出しようという動きが、3.11後の「謹慎」期間があけたとでも思うのかうごめいている連中がいます。ベトナムへ、ヨルダンへと。ヨルダンをめぐっては三菱重工が入札に参加予定とか。 そのヨルダン、東京新聞12月1日付に記事があります。それによると、耐震性について(ヨルダンは地震国、そしてテロの脅威も)、山口壮外務副大臣(小沢派)は「日本は経験豊富なので耐震設計が可能と説明受けた」と答弁。冗談でしょうと思わず言いたくなります。 玄葉外相にいたっては何を勘違いしているのか「原子力協定は核不拡散と平和利用を法的に担保することで、政府が責任をもって対応していく」と前置きし、「原発の安全性の確保は一義的には当該国の責任だ」と、次にお知らせする「責任集中」論をかざし、勘違いの極致が「原発事故を踏まえ、教訓を世界と共有できる。原子力安全の向上は、わが国の果たすべき国際貢献だ」と言って、原発を売りに歩く連中を後押しするというんだから、唖然です。 国際貢献と口にするなら、「原発事故の後始末(まだできていませんが)の方法を確立(難しいでしょうけど)しましたから、わが国の事故対処技術で国際貢献します」というのが本当だろうと思うのです。それを、売るだけ売って(かつ政府がお墨付けを付けて)、何かあったら買った者の責任、オレ知らないよというような商売が国際貢献とは恐れ入ります。 ●では原発、なぜ製造物責任が問われないのか? 福島第一原発事故以来、原子炉をつくったGEなり、東芝、日立への追及がなぜ出てこないのかと思っていたら、製造者は免責され、事業者だけがその責を追うという「国際ルール」が確立しているためといいます。 東京新聞12月1日付「本音のコラム」で「原発の製造物責任」と題して法政大学の竹田茂夫教授が書いています。それによると、事故が起きた場合、その賠償責任は事業者=福島第一の場合は東京電力=だけが負い、原子炉メーカーは免責されるという「責任集中」の国際ルールが確立しているからと言います。 このルール、実は、米国が原子力産業に民間資本を呼び込むために用意したアメで、「プライス・アンダーソン法」というそうです。これが米国の覇権とともに国際的に採用され、日本の原子力損害賠償法もこれをベースにしているといいます。 要は、売らんかなの悪徳商法と同じで、しかも売った後は、「買った人の責任」だと知らんふりということを合法化したものです。逆に言えば、メーカーを免責にしなければ売ることができないほど「危なくて、事が起きたらとんでもない、賠償しきれないことになる」ということの証明です。竹田さんは言います。「日米仏のような先進国が開発途上国に原発を輸出する場合、責任集中を強制することは、不平等条約に等しい」と。 しかし、インドは昨年、原子炉メーカーに対し現地事業者が、損害賠償――上限額が設定されているとしても請求できるものとしたルールを公表したといいます。このことは国際的に見て異例ということです。それは、1984年に起きた化学工場から毒ガスが漏れ、2万人以上が死亡した事件――米国のユニオンカーバイト社の子会社が起こしたボパール事故が教訓となっているとのことです。 ●こういうものこそ「欧米では」と言ってまねしてほしい 先月28日に明治大学でドイツのブレーメン大学欧州環境法研究所所長のゲルト・ビンター教授を招いてのシンポジウム「原発と憲法~ドイツの脱原発から学ぶ~」(第二東京弁護士会主催)が行われました。東京新聞11月30日「こちら特報部」の記事によると、ビンター氏「原発によって健康リスクをこうむる恐れがあるものには、健康保護の基本権がある」と指摘。しかし、「原発を止めようとすれば、電力会社は所有権を持ち出して、莫大な補償を求めてくることも考えられる。しかし、連邦憲法裁判所の判例によれば、公共の利益に著しくかかわる場合には補償の必要はなくなる」と、ドイツでの状況を説明。 かたや日本。原発訴訟にかかわってきた海渡雄一弁護士によると、原発差し止め訴訟で日本国憲法25条(生存権)や13条(幸福追求権)、前文などをもとにした「平和的生存権」を根拠にして訴訟を起こしているが、たとえば浜岡原発訴訟では、静岡地裁はなんと言ったかというと「抽象的な可能性の域を出ない巨大地震を、むやみに考慮することは避けなければならない」として原告敗訴としたというのです。 昨日の号で、最高裁の元判事のことを書きましたが、まさに、行政庁の行うことは正しい、庶民より専門家が集まっているのだからという「行政庁の自由裁量」「専門技術裁量」「政治的裁量」オンパレードの判決だったのだということがよくわかります。 普段は「欧米では…、欧米では…」とヨーロッパとアメリカの区別なく言っているくせに、自分に不利益になることだけは絶対にまねしないという見本みたいなものです。 ●いったんリストラ、すぐに再雇用 東電退任顧問 12月1日付毎日新聞によると、総額2億1900万円の報酬で雇っていた21人の顧問のうち11人を“首”にしたが、すぐに「会社に必要な人材」と言って再雇用。現在は13人態勢で報酬総額は9800万円だそうです(清水前社長ら3人は無報酬とのこと、当たり前だ!)。でも、必要な人材なら、なぜ「切った」かです。世間の目くらましでしょう。金のためなら姑息な手段を使う連中です。というより、それしかない。 ●佐藤福島県知事、福島の全原発を廃炉に。復興計画で要求 佐藤知事、年内にまとめる復興計画に、県内の全原発を廃炉に求めると明記することを発表しました。その30日の記者会見で、「原発を立地して財政的に恩恵を受けてきた以上に、事故は自然、社会、教育に大きな影響を及ぼしている」とのことで決断したと。今頃わかったのかなどと言っても始まりません。ここは、このフクシマを教訓化し、脱原発の社会を構築していくことに力を注ぐべきです。(東京新聞2011.12.1) ●「給食40ベクレル以下は誤解」と文科相が釈明 【学校給食で使う食材からの内部被ばくを抑える目安として受け止められたことに対し「説明に誤解があった」と釈明。「最終的には厚生労働省の基準(現行は水や牛乳200ベクレル、野菜や肉500ベクレル)に基づいて対応していくことになると思う」と述べた。】 いったい、どうなっているんでしょうか。やけに少ない数値だと思っていましたが、日替わりでいうことが変わる(誤解した?)ようでは、困ったものです。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111202-00000029-mai-pol ●あの荒川区、実はこっそりと「除染」、いや「洗浄」していた 東京23区で唯一測定も除染も必要なしと言っていた荒川区の西川太一郎区長ですが、東京新聞11月28日によると、11月の上旬からようやく測定を始めたところ、高線量が測定され、「応急処置」としてコンクリートの上の土などを取り除いているそうです。区のホームページには、毎時0.22マイクロシーベルトでも「洗浄」、0.17マイクロシーベルトで「土の入れ替え済み」等との表記が出ているといいます。しかし、こうしたことについてなんて言っているかというと、「除染とは考えていない」(山本英一環境課長)とし安全を強調しているというのです。 ●先月、報道陣に公開された福島第一の様子が見られます。 http://cryptome.org/eyeball/daiichi-111211/daiichi-111211.htm ●それに先立って福島第一に入って取材した今西憲之さんの話と映像 http://www.youtube.com/watch?v=NiEX5N6IByQ&feature=player_embedded#! http://www.youtube.com/watch?v=qvfEugb4qNc&feature=player_embedded http://www.youtube.com/watch?v=HSHQdGVVnnE&feature=player_embedded 上から番目の動画で、今西さんは言います。要は原子炉内部なんて誰も見たものはいない。「安定」と言っているが、「小康状態」であるとも。水をかけているのも、「勘でやっている」(!)と現場の人は言っていたといいます。すべてが野ざらしであると。公開されている写真は「無難な」ものが出ているだけであるとも。 11月8日放送の朝日ニュースター「ニュースの深層」 ●今日は本当に“どうでもいい話” 昨日もお伝えした、例の西山元審議官ですがスポーツ報知の報じるところによると福島にはいかず、東京勤務だそうです。作業着はあの時のパフォーマンスとしても、実際に現地でそれを着てスコップもってなんていうのは、やはりできるわきゃないでしょというところでしょ。なんせ、東大法学部卒業、通産省入省。米ハーバード大ロースクール修了ですから。 ▼寄せられた情報 ●原発都民投票のCMができました。ぜひご覧ください。 ★原発都民投票(東京版~long) http://www.youtube.com/watch?v=CD5hNbgZ_AM 「原発」の是非を決めるのは誰? 実現させよう!「原発」都民投票 「受任者」になって、署名を集めましょう! 12月10日開始予定 原発の稼働、廃止は私たちが決める! 都民投票実現へ! 都民投票実現のための署名12月1日からです! ●まずは、やれることはやっていこうと思っていますので、 皆さんに呼び掛けたいと思います。 まず「受任者」になる。それが署名集めの第一歩です ◆詳しくは、下記アドレスをクリックしてください。 「がんばろう!さようなら原発1000万人署名」12・10集会 ●日時 12月10日(土) 13:30開会 (40分程度の集会の後に、パレードを行います。) ●会場 東京・日比谷野外大音楽堂 *一緒に参加していきたいと思いますので、本通信で詳しいことなど載せたいと思います。 | |||