原発通信 114号2011/12/12発行
●今日からまた再開します! 先週一週間、義父の葬儀で東京を空けていました。東北・秋田へ行っていたのですが、葬儀ということもあり、情報になかなかアクセスすることができませんでした。ただ、福島第一原発は、奥羽山脈の向こうということもあるのか、地元紙=秋田魁新報を見る限りでは、秋田に運び込まれた廃棄物が基準値以上のものは送り主に送り返すということが大きく報じられて、大きな関心事という扱いでした(県民がどうかはわかりませんが)。 12月10日のNHKニュースでは、映像はなかったものの「反原発デモが行われた」と報じていました。また、8日には蓮池透さんが秋田で原発についての講演を行い、脱原発を訴えていたと報じていました。しかし見出しは、首をかしげたくなるものでした(メモするのを忘れてしまいました)。蓮池さんは、核廃棄物の問題があるので、脱原発の道を選択するしかないと言っているのに、原発輸出の件についてしゃべった方の、確か“よく考えて”だったか、そんなニュアンスの見出しがつけられていました。こういうところにも情報操作が感じられます。 秋田は雪景色、雪はすべてのものを覆い銀世界でした。奥羽山脈の下を貫通するトンネルを抜け岩手県へ。しばらく南下すると雪はなくなり太陽の日がまぶしかったです。まさに冬の日本海側と太平洋側の気象という見事なコントラストでした。さらに南下し福島へ。途中寄ったSAでは、「がんばろう東北」のグッズが、そして福島応援産品が積まれていました。それ以外はいつもの風景です。何事もなかったかのように…。いったい福島原発事故はあったのかという感じです。 というわけで、少し前後することがあるかと思いますが、今日から再開いたします。 ●「科学的根拠」 昨晩、NHK Eテレで、【未曾有、想定外と表現される今回の大震災。しかしその想定の歴史の中には、数多くの「かき消された警告の声」があった。津波、活断層の二つの面から歴史の真相に迫る】として、「ETV特集 シリーズ 大震災発掘 第1回『埋もれた警告』」が放映されていました。 以前から、三陸沖から房総沖にかけて巨大地震と大津波の発生を警告する学者たちがいました。彼らの真摯な研究による警告も、原子力マフィアの連中により葬り去られ、3.11を迎えた様子が報じられていました。そこに出てきたのは、「科学的根拠」だの「資料が乏しい」だのという聞き飽きたフレーズです。 断層にしても、私、当然素人ですからよくはわかりませんが、どう見たってそこまで線(断層)が引かれていれば連続しているものだと「普通は考える」だろうと思うのですが、奴らは“分断しているので”「まったく別のものに見える」らしいです。警告があったのにもかかわらず、新潟県中越沖地震による刈羽柏崎原発の火災事故が起き、そして、3.11をまったく無防備ままに迎えることになったと言っていました。 そうしたら、今朝のNHK総合の「あさイチ」です。今日はTPPだったのですが、農水省の元官僚、現在キャノングローバル研究所研究主幹をしているという山下一仁、これ、まったくのアメリカの回し者と言っていいくらいの奴でしたが(つれあいも、奴の発言を聞いて珍しくアメリカの回し者だと怒っていました)、農薬、遺伝子組み替え、まったく問題ない、「科学的根拠があれば」拒否できるとほざいたのです。 そう、ここでも「科学的根拠」です。遺伝子組み換え作物など、科学的根拠を示せと言われても今現在、「ほれ、それを食ったからこうなった」などというものがあるわけではないのです。ということは、「科学的根拠を提示できない」ということになり、拒否できないということになってしまうのです。そういうことが、TPPでも表れ、デマゴギーを振りまいている連中がいるのです(突っ込むこともできず、なるほどとなどうなずいているキャスターも情けないですが)。 ●霞が関官僚の「関心事」と福島原発事故 では、霞が関の高級官僚たちはどう考え、どんなメンタリティをしているのかということです。最近何かと名前が挙がってくる元経産省の官僚だった古賀茂明(1955年生まれ、麻布学園、東大法出身)の『官僚の責任』(PHP新書)という本を読んだのです。まあ、この本だけを読んで、そうか!などと思うのは早計かもしれませんが、まあ当たっているのでしょう。 福島第一原発事故以降、いろいろ言われている東電、経産省・安全保安院などの連中がどうして、警告や疑問、問題が提示されても「安全神話」をでっちあげ、3.11(今もですが)までいってしまったのかということがさまざまに言われています。ここ何回か行なわれている集会で、お会いできた大学の教授をされている方がいるのですが、その方と「どうして彼らが安全だと思い込むことになっていったのかそのへんの考え、思考が分かりませんね」というようなことをお聞きしたことがあるのです。 その方曰く、「僕は、そう考えていくのがよくわかる。疑いもなくそう思っているのですよ、彼らは」と言われ、その時はそれで終わったのですが(その先生も東京大学の出身者でした)、この本を読んで、ああ、そうか、私が勘違いしていたのだということが分かりました。それは、私が、霞が関の官僚(キャリア組)は「仕事をしている」と思い込んでいたからなのです。「仕事をしているんだから、問題や疑問に思うこともあるだろうに」と思ったところが間違いだったのです。 この本の著者古賀茂明によると、「霞が関は互助組織」だというのです。お互い、いい給料をもらい、退職後はいいところに天下り、高額な報酬を得ることが最大の関心事だというのです。そして、「官庁では上司や先輩の意見は絶対という不文律が出来上がっている」と言います。仕事(国のためになる仕事)をしているのだと思う方が間違っているのだという点に立てば、すべては氷解します。 中身などどうでもいいのです(結果に責任をもたない――だから頻繁に異動すると彼は言います)。今の地位と「今後」が今と変わりなくあればそれだけでいいのだという彼らのメンタリティが理解できれば、3.11以降明らかになったことなど疑問に思う方がおかしいということに気付くのです。 しかし、この古賀という人、性善説にお立ちのお人かどうか知りませんが、この本を読むかぎりでは、ノーテンキというしかありません。「こういう前提に立てば」と論を立てる(TPP賛成論)のですが、その前提そのものが怪しいというのが人間の性なのだ(と私は思うのですか…)ということに思いがいかないようです。でも、そう思うから公務員改革をするのだと立ち上がり、はしごを外される目にあったのでしょう。きっと今、霞が関にいる連中よりは「いい人」に違いないのでしょうが。 ●東京・城南信金、東電と契約解除 東京新聞12月3日付によると、脱原発に取り組む城南信用金庫ですが、東京電力から電力を買う契約を年内に打ち切り、来年1月からはガス、自然エネルギーで発電した電力をエネットから買うことにしたといいます。「原発を使わない安心できる地域社会を実現」「多くの方に営業活動のなかで呼びかけ一種の国民運動の展開」をと言います。 ●原発都民投票の街頭呼びかけをしている鳥羽晴美さん朝日新聞に載る 12月9日付の朝日新聞12面、「原発への思い 今言わなきゃ 住民投票署名集めに挑戦」の記事に新宿駅西口で情宣活動をしている写真が、インタビュー記事とともに掲載されていました。 ●米紙、除染への悲観論紹介 「最大の浪費事業になるかも」(引用) 2011/12/07 19:34 【共同通信】 【米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6日、東京電力福島第1原発事故後取り組まれている除染とそれに対する日本での論議を紹介し、「日本再生を示す」との積極論の一方で「最大の浪費事業になるかもしれない」との悲観論もあることを指摘した。 同紙は除染を「巨大な規模」とし、専門家は「数千の建物を洗浄し、コネティカット州並みの広さの地域で多くの表土を交換して初めて住民は戻れる」とみていると説明した。 さらに児玉龍彦東大教授の見方を紹介。除染自体は支持するものの、避難している人は除染が生きているうちには終わらないということを受け入れなければならないとしている。】(引用ここまで) 「双葉は現代のゴーストタウン」だって言ってますよ。 ●除染した水はバケツなどに保管? 昨日、車中で聞いたNHKラジオのニュースで(秋田から車での帰路聞いたので、正確さに欠けるかもしれませんが)、高圧放水などで除染する際のガイドラインが公表されたと報じていました。むやみに高圧の水をかけると放射性物質が飛び散る可能性がある。コケなどはあらかじめ取り除いておく。…ここまではいい、次が???です。洗浄した水(=はつまりは放射性物質で汚染されているので。当たり前か)をバケツなどに保管(つまり垂れ流すなということでしょう)するのが望ましいというのです。 だいたいそんなこと可能なのか。屋根や塀、庭を「除染する」と言って、数万円出して買った高圧放水器でザバザバとやって、その水を貯めておけ? そういう発想ができる神経が分かりません。ガイドラインを書いた本人(官僚)も承知しているからでしょう。「やれ」とは言えず、「望ましい」などとわけのわからないことを言ってごまかしています。 中川センセイなどに「まったく問題ない」と言わせれば、こんな苦労はしないものを! ●チェルノブイリから学ぶこと』菅谷昭 松本市長 講演会 in 福島 | ||