原発通信 116号2011/12/14発行
●反格差デモ、ロシアにも波及 不正疑惑のただなかにあるロシア下院選挙ですが、そうしたプーチンの不正工作と格差拡大に怒った市民が10日、首都モスクワでは10万人(警察発表2万5千人)が集まり抗議集会を開いたといいます(毎日新聞12月13日)。「アラブの春」になぞらえ「ロシアの冬」と呼んでいるそうです。次回は12月24日に予定されているそうです。 翻ってわが日本です。頭の上に広島型原爆168発分もの放射性物質をまき散らされても、そのまき散らしたものさえ「無主物」だと開き直る連中や、根拠なく「安全だ」「評価する」だの、くよくよする連中にこそ放射能の害が出るだ、プルトニウムなど飲んでも大丈夫だという東大教授がいても、何を言われているのかさえ理解していないような感じです。怒りを忘れた○○は裏の藪に捨てたいと思うのですが、そうもいかないのです。 そう、昨日の号で12.10集会の写真がアップされていると教えていただきましたが、どういうわけか東京大学の学生さんたちが来ていないのかどうか知りませんが、まったくありません(9.11,9.19でもそうでした)。こんなに世界に迷惑をかけている人間を輩出している大学ですが、そこで「学んでいる」学生諸君はどうしているのでしょうか? それとも一日でも早く「霞が関互助組合」に入村できることを夢見、日々努力し、血眼になっているのでしょうか。 ●「原子炉の中、わからないが問題ない」…?! デタラメ(班目)春樹の妄言 昨日の号で、デタラメ春樹こと班目春樹のことを書きかけました。福島第一原発事故の収束作業の安全確保に向け、東電が出した今後3年間の施設運営計画についてです。経産省原子力安全・保安院は、12日、出されたこの計画について「計画は妥当」とした評価書を原子力安全委員会に報告し、同安全委員会(班目委員長)は「内容は問題ない」と認めたとのことです(毎日新聞12月13日付)。 その安全委の委員長であるデタラメ春樹こと班目春樹、何と言ったかというと、驚いてはいけません、「原子炉の中の状態が分からず、何が起こるかきちんと予想することが難しい。今後、起きそうなことが分かり次第、対策を早急に考え、評価してほしい」と言ったそうです。 えっえ!!??の世界です。私の日本語能力がないのでしょうか? どうしてこういうことが「問題ない」と結論付けられるのかまったく分かりません。ふつう、世間では中身が分からず、今後どうなるかもわからないものについて「問題なし」と「評価」することなど断じてないと思います。たとえば、ある製品があったとします。その製品どういうものか(箱の中に入っていて見えません)まったくわかりません。どういうものかも、動くものかどうか、まして安全かどうかも。そういうものを「売っていい」と言っていることと同じです。で、何か起きたら対策を急いで考えてくれと言っているようなものです。ふつうなら(私たちが暮らしている空間なら)、こんなもの世の中に出したら、呼びつけられてどやされる世界です。それもこれも、結果責任を取ることも、取れと言われることもない結構な“仕事”だから言えるのです。製造物責任法(PL法)などまったく無縁、それどころか、先日書きましたが、原発は、製造者は何かあっても責任を取る必要はなく、買った方(動かしているもの=事業者)が全責任を取るという仕組みがあります。 「総理、原子炉は爆発することなどありません」などと言ったそのすぐ後に原発4基が水素爆発(!!)を起こしても何ら責を感じることなく、時には薄ら笑いを浮かべさえできる神経の持ち主ですから。そう、六ケ所村の件での彼の動画を以前紹介しました。「あんな薄気味悪いところ」「最後はお金でしょ」と言ってはばからない奴なのです。まあ、正直な男と言えば言えるのですが、立場というものがあるでしょうと思うのですが、彼(彼ら)にはそんなこと無意味な遠吠えなのでしょう。 ●根拠いい加減な発電コスト論議 政府のエネルギー・環境会議で検証されているという発電コスト計算ですが、楽観的というか、よくもそうごまかせるものだというか福島第一の事故費用の計算が少なすぎるという指摘がある通り、そんなものですまないだろうというのが識者の意見です。ただ、再計可能エネルギーが大幅に安くなること、これなど今まで推進論者の論ではありえないことでしたから。 除染費など事故費用ですが、前に報告しましたが、放射性物質で汚染されたゴルフ場がその賠償を訴えた裁判で東電が「放射性物質は無主物」とした件です(東京地裁・福島政幸裁判長)。こんなことがまかり通り、「俺のモノじゃない」「俺の責任じゃない」とすれば安くなるというものです。 ●原発事故での問題は、被ばくより避難することのほうが問題?! 中川恵一の毎日新聞の連載です。原爆を落とされた広島県民は長寿だという中川センセイの意見は本通信109号で紹介しました。今回の号では、ロシア政府の報告書を持ち出し、チェルノブイリ原発事故の「社会的、経済的、精神的な影響を何倍も大きくさせてしまったのは、汚染地区を必要以上に厳格に規定した法律によるところが大きい」というものを引用しています。続けて「チェルノブイリ原発の事故の主な教訓の一つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されていなかったことである」。 つまり、中川センセイ、「チェルノブイリではがんの増加はありません。放射能なんて浴びたって大したことないです。それより問題は避難によって今まで住み慣れたところを離れ、人間関係もバラバラになったことが問題」だと言っているのです。でも、ちょっとだけ本当のことを言っています。「チェルノブイリでは、牛乳などの食品の規制が遅れ」小児甲状腺がんが増えたと。その原因は規制の遅れだと。じゃあ、日本はどうなんだ!と言いたい。検査も規制も的確に素早く行われているとでもいうのか!です。 このセンセイのを読んでいて頭が混乱するのは私だけでしょうか。避難地域を大きくし、大勢の人を住み慣れた土地から引きはがしたことが問題だと言っている口で、なんと、「被ばくも避難も、いずれも原発事故が原因です。東京電力と政府の責任は重大です」とのたまうのです。何の責任が重大だというのでしょうか、事故というのですが事故の何が問題重大なのでしょうか。放射能をまき散らしたから? それは害を与えるから? いやいや避難地域を20キロ圏だなんだと迷走したから? それによって、あっちへ逃げろ、こっちへ逃げろと振り回したから? もしそうだと胸を張って言うなら、首相官邸へ乗り込んでいって「避難だ、除染だなんて無駄なことをするな、住民たちを故郷に戻した方が影響が少ない」と。 結局、何が問題なのでしょうか。ただ「事故」を起こしたということだけなのか(放射性物質まき散らしなど問題なさそうですから)。理解できません。(毎日2011.12.11連載中川) ●労働組合にとって原発事故とは 仕事で私鉄総連の2012春闘読本の校正ゲラをみて、……です。東電福島第一原子力発電所の爆発事故とそれに伴う放射性物質による環境汚染など「関係ない」「考えてもいない」という中身なのです。地元の福島交通の青年労働者の言葉です。「放射能漏えい事故により」「原発事故の風評被害の影響」等と言うのです。そして、最後になんと言っているかというと、「2011年は私たち福島交通にとって、自然災害に悩まされた年でした」と。何回の書いてしまっていますが、日本人は戦争も台風のようなものとの認識と言われますが、まさに同じことがここにもあります。まして「放射能漏えい事故」「自然災害」です。なんか放射能というものが漏れてしまったぐらいのイメージです。 恒久平和だ、反戦・平和だ、ゆとりある生活を、将来、自分の子どもたちが健やかに元気に育てられる国にとかの声は多いのですが、そもそもその基本―生存の問題がいま問われているのだということその前提が問題にされているということに無自覚、その生活、存在そのものが脅かされていることなのだということには、まだまだ思いが至らないようです。しかし、「今年の漢字」にもなったそうですが、読んでいて、何と「絆」の語が多いことか、その絆と原発の問題ヘはなかなかリンクしないようです。大震災=津波とは言いますが。 そもそも原発問題については、議論さえされていないのではないかと思われます。「親の背中を見て子は育つ」という言葉がありますが、たぶん親組織での議論がされていないか届いていないということなのでしょう。原発問題について触れていた青年労働者はわずか4、5名でした。女性が少ない産別ということもあるのでしょうか、女性の声ではひとつもありませんでした。蛇足ながら誤解のないように付け加えておきますが、取り上げた個々人を問題にしているのではないということです。組織としてどこまで取り組んでいるかということを言いたいのです。 最後に、鉄道会社の組合であるにもかかわらず、電力問題についての言及は一つもありませんでした。というより、よくわかりませんが、バス会社の組合員の声がほとんどなのです。 2012春闘だそうです、原発がテーマになることはないのでしょう。 ●自民党はとうの昔から「子ども手当」を出している。ただし原発立地自治体に 12月4日の秋田さきがけの連載記事です(たぶん共同通信配信でしょう)。それによると、敦賀原発が立地する福井県敦賀市では子どもが生まれるとベビーカーにチャイルドシート、おもちゃのカタログが配られ、第1子は1万円、第2子以降は3万円相当が送られているそうです。その2006~10年度までに事業費計約5800万円の半分が「電源立地地域対策交付金」だそうです。そして市児童家庭課の職員はどうだとばかりに胸を張って言ったそうです。そして、それは「子ども手当」だけにとどまりません。介護も何もまさに交付金づけの世界です。そのもとは電気料金、そして税金からです。 記事では、原発に批判的な敦賀市議の今大地晴美さんの言葉が引用されています。「市民の大半は、自分が受けたサービスの財源が交付金だとは知らない。知らずに交付金漬けになるとますますモノが言えなくなる」と。 東北電力が計画する浪江・小高原発をめぐっては、南相馬市と浪江町は【「脱原発」の姿勢を鮮明にし、計画段階の初期対策交付金の11年度分の受け取りを辞退した。12年度以降も受け取らず、決別していく方針だ】といいます。隣の大熊町は、【特例として交付金を人件費に活用する事態に追い込まれた】と書いています。 ●中国の原発 毎日新聞12月13日付「連載どうする人類、核のゴミ」によると、10年後には米国に次ぐ「原発大国」となることが確実視されているといいます。日本原子力委員会の尾本彰委員のことばとして、「中国とロシアがこれからの世界の原発市場を席巻する可能性」があると指摘。今は、東芝の傘下にあるウェスチングハウスは2006年に中国と原発輸出契約獲得の見返りに最新型炉「AP1000」の技術移転を飲まされたそうです。それをもとに「国産原発」(!)として輸出する計画だといいます。新幹線問題と同じです。 という問題もさることながら、中国(韓国も)は日本の西に位置しています。その上空には偏西風が吹き日本の上空を通過していきます。事故が起きたら……。 | ||